そのガードルは誰のもの?
今日、私は久々に彼氏の部屋に来ていた。
今日は、彼氏と付き合い始めて丁度一周年。鍋料理とケーキでお祝いの予定だった。
イケメンとまではいかないかもしれないが、見苦しくはなく、ファッションセンスはまずまず。
職場も、これから時流に乗りそうな企業で、結構将来が期待できそうなポジションについている。
友人に紹介すると、
「どこで、あんないい人見つけてきたの?」
と羨ましがられる事が大半なので、自分の中の自己満足的マウント率は向上中だ。
今日用意した、ややピリ辛風の鍋。
仕事で不規則な生活になりやすい彼の身体を心配して、野菜をもっと食べて欲しいなと思って、野菜多めの鍋にした。でも、もうちょっとお肉が多くても良かったかな?
まあ、今から買いに行くのも何だし、今日はヘルシー鍋ということで。
ある程度、鍋を堪能した後は、今日のために用意した、小さめのケーキを取り出す。
ケーキを切る秘訣は、包丁をあらかじめ温めておくこと。クリームがベタベタまとわりつかず、切れやすくなるのだ。
あらかじめ良く研いでおいた包丁を、熱湯で温めて、ケーキを切り分けていく。
ケーキを食べて、ワインも飲んだ私達は、段々良い雰囲気になっていった。
「私、ケン君のことが大好きよ」
「俺もミコちゃんの事が、世界一大事だし」
ここから私達は、徐々に甘い雰囲気を増して行き、
R18モザイクR18モザイクR18モザイク
R18モザイクR18モザイクR18モザイク
そして、私達は彼のベッドにもつれこんだ。
愛されているという喜びと快感に身を委ねた私は、つい、ベッドの端を握りしめていた。
『ん? 何か手に持っているんだけど……』
ふと、我に返った私は握りしめていた物をまじまじと見つめていた。
それは紛れもない、女性物のガードルだった。
ガードル、それは、体型の補正や下腹部の保温のために、一部の女性に愛好されているものだ。
そもそも、私は時々ジムやヨガにも通っているし、多少体型が崩れようが崩れまいが、窮屈なガードルは嫌いで、ほぼはいた事がない。
『何で、こんな物がこんな所に……』
私が急に冷静になった事に気づいた彼氏は、私が手にしている物に気が付いて、顔色が変わった。
「あ、あ、それは、その。
こないだお袋が来てさあ。その時忘れていったんじゃないかなー。」
「貴方のお母様、先日お会いした時、かなりのポッチャリ体型でしたよね。
これ、サイズ表示ではSサイズなんですけど…」
「い、妹が、この前遊びにきていて……」
「ご兄弟は、お兄様だけだと聞いていましたけど?」
付き合う上で、兄弟の確認は必須事項だ。
「最近流行りの、異世界転生って知ってる?
内緒にしないといけないと思っていたけれど、君にだけは打ち明けるよ。
実は先日、異世界から美少女が助けを求めて、僕の所に現れてその時に……」
数時間後、私は肉多めのピリ辛鍋を1人でつついていた。
『ちょっとクセがあるけど、この肉質や食感も悪くないな。もう食べる機会は無いかもしれないけれど』