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世界で1人?―MAMA美のショートショート―

作者: 猫井MAMA美

私が消えたのか?世界が消えたのか?私はどこへ行けば良いんだろうか?

カーテンの隙間から朝陽が差し込み、遠くから何の声かわからないが鳥の囀ずりが聞こえている。また、朝が来た。


「生きてるかぁ。」


今日で何日目だろう、なんて考えるのは性に合わない。テーブルの上に正という字を書いていく、棚から乾いたパンの残骸を取り出し噛る。元々食が細く沢山は食べられなかった、今は丈夫に生んでくれた母親に感謝します。

鉈とナイフを持って外出の準備をする、とりあえず食料の確保をしなければ。とっ、その前に…図書館で本を探そう「サバイバル」「保存食の作り方」当たりがあれば良いな。後は自分の理性と戦うのみ(笑)、もう理性も倫理も無いけどね。

何が起きたか分からない、調べる方法も無い。私だけがパラレルワールドに来たのか私だけ残してパラレルワールドに行ったのか…私だけ。

朝起きると、1人だった。TVもスマホも使え無い、時計も時を刻まない電気も水道も何もかもが動かない。近所を訪ねても猫も居ない、空を見上げても鳥さえ飛んで居ない。かと言って全ての動物が居なくなった訳ではないらしい、今の所見かけないのは「犬・猫・猿・兎・雀・鴨・鵜・亀・蛇・虫一般」そんなところかな?鹿は居た、熊は見てないどーだろう。

ちょっとづつ範囲を広げて周囲を調べても、肝心の人間には出会わない。正直、このまま1人の可能性が大きいけど…もう少し希望を持っても良いだろうか。

町の図書館へ来たけれど良く考えたらパソコンは使えないんだから自力で探さないといけない、頑張れ私!後々の事を考えて図書館はそのまま維持したいので時々様子を見に来なければと思ったりした。「保存食」の本があったので借りていきます。

少しづつ遠くまで歩いた、疲れたら休みあちこちを観察しながら。それでも誰にも出会わない、自分が何処に向かっているのか一向にわからない。田舎だから目印になるような物も少なく元の住所で当てを付ける、コレ冬になったら死ぬかも(笑)暖かいうちに食糧調達しないとマジでヤバイよね。

隣町との境まで来たけれど…結果順当。

「やっぱり誰もいないのな。」

期待はしていなかったけど…やっぱり悲しいね。とりあえず、大型獣が居ない事を確認して帰途に付いた、家の前に鹿がいる!…なんかこの鹿、おかしい。

形、サイズ?何だ何かが、おかしい。ん?んん?

「おい!お前人間か?」

しゃべった?しゃべった‼️えー、スゴい冷や汗が滝の様に流れている。

「おい!言葉が通じないのか?」

驚き過ぎて金縛り状態だった、えっ?見間違い?

「いや…鹿だよね?…何?…」

「ハハハ、何だ話せるじゃないか。」

問題はそこに無い、それとも鹿じゃ無いのか?

「あんた誰?てか、何?」

「お前1人か?ん!1人?番はどうした?」

言ってる意味が全然わからない、「つがい」って何だ?

「何?何の事を言ってるの、ツガイって何?」

鹿も不振な顔をして首を捻っている、どーなってるの?

「なんだ、全然分からないのか?そーか、番が居ないから理解が間に合わないのだな?この辺りには人間はお前だけか?」

番?理解?あっ!分かった、この鹿「爺臭い」!

「…お前、今の何だか失礼な事を思ったな。とりあえず謝れ。」

えっ?心が読めるの?ヤバイよね、とりあえず謝っとこう。

「すいません。でも、何が何だか…」

説明を求めるとスンナリ話をしてくれた。

要約すると、地球を治める神様が居てその神様が怒ったらしい?んで、地球上に住む生き物で要らない種族を廃棄するらしい?でも、一組の番を残し一応チャンスは残すらしい?完全に理解不能だ、私遊ばれてるの?その「つがい」って探さなきゃいけないの?謎だらけなんですけど…スゴく面倒臭いけど…。

「それって私、『つがい』?を探さなきゃいけないの?探すにしたってどーやってよ。」

「ウム、そうだな。今まで見てきたモノ達は全て、『つがい』の状態であったがお前のはどこにいるのだ?目覚めた時に側に誰か居なかったのか、大概近距離に居てすぐに出会うのだが…。」

「いいえ、誰も居なかったし何日かこの辺りをぐるぐる探し回っているけど…誰にも会わないわ。」

そう、良く考えたら久しぶりに話をしてる。ふと、大切な事に気付いた(笑)

「ねぇ。いまさらだけど…あなたの名前は?」

「アハハハハハ、今か!まあ良い。私の名前はアメノカクノ、もしかしたらお前が核になるかも知れん。しばらく一緒に過ごそう。して、お前の名は。」

改めて名乗りあった。

「私の名前は霧島モリノ宜しく。」

とりあえずしばらくは飽きないだろう、鹿様と一緒(笑)

「んで、どーすりゃいいの?」

とーぜんの質問だと思ったんだが、鹿様的には違ったらしい。

「私の話を聞いてかいなかったのか?はぁ、全力で『つがい』を探せ!」

「あっ、はいっ!」

怒られちゃったよ、とりあえずアメノ(と呼んでも良いと言われた)と一緒に人の居そうな所中心に探すことになった。今まで通り食料を調達しつつ町をアメノと歩いた、アメノは耳が良いので小さな物音も聞こえるらしい。

2日経ち3日経ちとうとう5日目になった、自宅からもかなり遠く離れてしまった。ちょっと心細い。

「一体どうなってる、なぜ人間が居ない?」

私に聞かれても…。結局アメノは神通力?を使って探すことにしたようだ、本当は使っちゃダメだって言ってたから本気でヤバイのかな?

だいぶ時間がたってからアメノが戻ってきた。

「居ない。」

えっ?答えに窮していると、アメノは続けた。

「今現在、地球上に人類はお前だけだ。『つがい』は無い。」

ポカンとする私をよそに、アメノは更に話を続けた。

「数多要る私と同じような神獣同士で連絡を取り、確認した結果人間はお前だけだ。世界中でただ1人お前だけだ。」

衝撃の事実…なーんて、実は薄々気付いてた。何となく他に誰も居ないんじゃ無いかと思ってた、理由は分からない只何となく…。

「そう、じゃもう『つがい』を探さなくても良いのね?」

言ってしまってから、何かがフワッと失くなっていくのがわかった。

気が付くと泣いていた、止めどなく涙が溢れた。自分ではどうすることも出来ない、ただただ涙が出てきた。

アメノは何も言わずじっと私が泣き止むのを待っていてくれた、目が痛い小1時間もグズグズしていただろうか。アメノが話しかけてきた。

「大丈夫か?これからどうする?」

「お家に帰りたい、自分の家に戻りたい。」

もう何も考えたくなかった、だって私1人ならもう難しい事考えなくてもいいでしょ?只家に帰りたいそれだけだった。

ゆっくり帰途に付いた、必要なこと以外話す事もなく只黙々と歩き進めた。やっと見知った風景が出て来た、もうすぐ家に帰れる…もうすぐ。自然と足が早くなる、あの角を曲がると懐かしい我が家だ!

?我が家?

のはずだった、外壁を蔦が絡まり覆い尽くしている。中が全く見えない、たった10日ほどで何があったの?アメノもちょっと驚いている。

「なにこれ?ここ私ん家ダヨネ、何でこんな風になってるの!」

「いや、私に言われても…なんだこれは?」

しばらく眺めていたが埒が明かない、とりあえず玄関の蔦を払い中に入ろうとした。が、蔦はまるで生き物の様に払っても払っても絡まり付いてきた。

「駄目だ、ナンダコレ全然払えない。アメノ、何とかして!」

「…」

「アメノ、どーしたの?」

焦った。振り替えるとアメノが微動だにせずダラダラと脂汗を流し、今まで見たこと無い顔をしていた。何が起きている?

「おい、お前逃げろ…全力で逃げろ。」

「意味がわかんないよ!何で?」

言い終わらないうちに外壁を絡めていた蔦がシュルっと伸び私を絡め取った、そして玄関方向へ引き寄せた。

「ウワアアアァァァ‼️何、何なのおおぉ。」

ビックリした…けど、あんがい優し目に着地した。

『やっと見つけた、おれの嫁。』

誰だ!これ誰だ、また知らないヤツが出て来た。んで、嫁?さらに分からない?誰か説明してー!

「モリノ!その方は神だ、私たちとは違う。抵抗してはいけない、抗うな話を聞け。」

えー?無理ムリ無理、マジ止めて。

『さあ、行くぞ。』

「ちょ、ちょっと待って頼むから待って。とりあえず説明して!」

『なぜだ?説明とはなんだ?お前は俺の嫁だ、それ以外になんの説明がいるのだ?』

わあーお、傲慢。ビックリした、もう理解の他とりあえず考えるの止めたい。

「アメノー、私もう無理ぃ。」

メソメソ泣き出した私を見て、その神は何を思ったのか抱き締めキスをした。『さあ、行くぞ。』

たった一言だった、アメノが小さくなっていく。家が町が国が海がドンドン遠くなり視界から消えた、意識が遠くなっていった。あぁ、アメノにサヨナラくらい言いたかったなぁ…。


残されたアメノカクノは暫し考えていた、一体何が起きたのか。まさかとは思うがアノ神が嫁をとるためだけに世界を変えたのか?無いとは言い切れない、神とは何時だって理不尽なモノだった。今も昔も…考えても一向に分からない、しかし地球から人間が居なくなってしまったのは分かる。さて、どうしたものか。それも、私の考えるべき事ではない…後は神に任せるだけだ。

また、会えるだろうか?いや、考えるだけ無駄か…サヨナラだ。


気が付くと柔らかな寝所に寝かされていた、ここどこだっけ?あぁ、そうだ神様に拐われたんだ。でも、ここはどこだろうかほぼ白一色の部屋(?)の中に居るが落ち着かない。すると何の音もなくさっきの神様が入って来た、ナゼか始終笑顔だ。

『目が覚めたか、体調は良さそうだな。まあ、いますこし休んでいろ

じきに婚姻の義が始まる。』

さらっと何か言ったよね?こんいん?私の意思とは無関係に、やっぱり結婚するって事なのね。何で私なの、さっぱり分かんない?

『それから、婚姻の義が終わったら直ちに社に移る。そこで直ぐに私の子を生んでもらう。』

ビックリし過ぎて声も出ない、はぁ?子を生む?直ぐに?子供って直ぐに生まれるんだっけ?

「イヤイヤ、ちょっと待って?全然分かんない、お願いだから説明してー。」

ほぼ絶叫。神様も驚いてる、呆れたように溜め息を付くと横へ座った。

『良いか、お前は俺の嫁だそれは分かるな?今現存する人間はお前だけだ、それも分かるな?これからお前は俺とかつての神々が行ったように、新たな生き物を産み出す大切な儀式を行う。分かったか?』

途中までは大丈夫ギリギリ理解出来た、最後が壊滅的に理解出来ない。

「なんで私?新しい生き物って何?わかんない。」

泣きそうだ、逃げられないようにしっかりと服を掴み聞き返した。

『なぜ?それはお前だからだ。それ意外に何の意味がいる?』

泣きそうな私を抱き締めて、言い含める様にこう言った。

『そして、新しい生き物たちを育て新しい地球が出来上がる。お前は母神になるのだ。』

アハハ、ダメだ確定あきらめた。私、人間じゃなくなるのな(笑)

世界初!私、神様になりまーす?

つーか絶対間違ってる‼️どーやって選んだかもう一回言ってみろー‼️

って聞いちゃいない、アメノ助けてー。


まあ、神様が理不尽なのは私も知ってた。だから本当にあきらめた、そもそも人間が私一人なんだから助けも来ないわな(笑)なので…諸君!

皆さんのお母さんデスヨー♥️宜しくね!

案外、楽しいかも知れない(笑)

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