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「ご主人様!時間ですぞ!」
爺やが呼びに来た。
寮内の服は自由でいいと聞いていたので、神父さまから餞別に貰ったシンプルなワンピースを着る。
私が部屋を出ようとすると、爺やがドヤ顔で話しかけてきた。
「ご主人様!鍵の事ですがこの爺やがおる限り、持ち歩く必要はありませんぞ!」
「え?」
どうやら爺やが言うには入ってきた時と同じようにこれからは私が近づけば自動でドアが開くどのことだ。
持ち歩かないのも変なので、ポケットに入れたが。
親睦会は、2階の談話室で行われる。
本来、談話室は、食事をするためのスペースではないそうだが、毎年新入生のためのこの催しだけに特別許可を出しているようで、この日だけはみんなでワイワイパーティのようになるそうだ。
ちなみにこの親睦会には、1階に部屋のある侍女さん達は参加しない。
談話室に着くと扉は開けっ放しになっており、たくさんの人がいた。
所々に明るい茶髪がいるが基本的に黒っぽい髪ばかりだ。
またしてもここで私は目立った。
ヒソヒソと〝第2王子〟〝Aクラス〟という言葉が聞こえる。
もう既に王子に話しかけられて貴族に目をつけられたことは広まっているようだ。
「みんな席に着け〜!」
談話室の前方の方、ステージのようになったところに黒髪の女の人が立つ。
その人は声を大きく伝える魔道具を通して自己紹介を始めた。
「はじめまして!今代、女子学院特別寮の寮長を任されている第5学年のユーリアだ。第1学年の皆さん、入学おめでとう!!
これから学院生活における平民の為の平民による注意事項をお教えする!心して聞くように!!」
ハキハキとした女性にしては低い声が響く。
「今日の入学式で感じたと思う。
我々平民は平等と謳われているが、この学院では明らかに貴族より下だ!なので我々平民は目をつけられないように常に気をはらねばならない!
まず、一!」
「「「自ら話しかけない!!!」」」
「えぇ…」
寮長はなかなか勢いがある、寮長のことばに追随して他の先輩と見られる生徒たちが声を上げる。
「貴族にもよるが基本的に話しかけて好意的に受け止めて貰えないと思え!次!二!」
テンポよく掛け声は続く。
「「「思い上がらない!!!」」」
「逆に話しかけてくる貴族に対しても同じだ!貴様を好いてなどいない!恥をかくぞ!三!!」
「「「近付かない!」」」
「これが最も重要だ!そもそも近づかねば声をかけられる事もないし厄介事に巻き込まれずに済む。
だがしかし、不幸にも初日から目をつけられてしまった新入生がいるようだ…」
これはもしかしなくても自分なのでは?
ザワザワと気遣うように声が広がり、何人かこちらに視線を寄こす人がいる。
「クラリエ・ベルメール…出てきなさい」
え?吊し上げされるの??し、シスター!めちゃくちゃ目立ってたみたいだ私!
寮長は顔を険しくして私を見ている。
しぶしぶ呼ばれた壇上に上がった。
「クラリエ・ベルメール!」
寮長の目がクワッと開く。
怒られる!?と思ったその時、
「可゛哀想にな゛ぁぁああ゛あ゛」
寮長は大粒の涙を流しながら、私の方をポンポンと叩いた。
壇上近くの比較的高学年だと思われる上級生達も数人ハンカチで目元を抑えてる姿が目に入る。
「…グズッ……、これから君は逃れない理不尽に見舞われることだろう」
「え゛っ、はい」
「今泣いている女子達は今までに思い当たる節があるものたちだ…、私は君の味方だ!!」
お説教ではなくて慰めだったらしい。
「だが、すまない!!私達は力になれない…」
先輩方の言うことには、女子学院特別寮では味方になり相談にも乗れるが、巻き込みを恐れるため、学院内で貴族たちによる揉め事があった場合、見て見ぬふりをするのが慣例だそうだ。
そっと貴族の目に映らぬように先生を呼びに行くことくらいしか出来ないそう。
「いいか!先生に頼るにしても、頼っていい先生と話しかけるのすら遠慮した方がいい先生がいる!今から言う先生には授業の事以外で近づくな!」
教養学のバゼット先生
やはり平民は所作が汚いと、無闇矢鱈にイチャモンをつけてきて居残りをさせられるのと、報告をしたが最後伝わってしまい、コソッと報告するはずがチクったことがバレて被害者が増えてしまう。
騎士学のダーエルト先生
加害者も被害者も両方悪い点があると騒ぎ、校舎を10週走れ!と走らされるので余計恨まれて酷いことになる。
薬学のマーダイ先生
基本的に何もしてくれないおじいちゃん先生、話すだけ無駄。なにやら評判の良くない第一王子と親しくしていると噂が…第2王子派閥に目をつけられると面倒なので危険。
「私達は、味方だ!仲間だ!君にはこんなにも味方がいる!頑張って卒業しよう!!!!!!」
苦汁を舐めさせられている平民生徒たち…
女子学院特別寮は、貴族達からは平民寮と呼ばれてます。




