鏡よ鏡、117
誠はビールの缶をあけると
「ひとみ、いいかげんにしろよ。おれ帰るわ」
「なに怒ってんのよ…」 「自分勝手が悪いとは言わない。おれも勝手に生きてるからな。おれはおれで好きにやる。帰るわ」
「わかった。じゃあ、もうこないで」
「…お前は、おれが好きにやるって言ってんだから、おれの勝手を認めてもいいんじゃないのか?なんで、もうこないで、になるんだ?」
「誠も、帰んなくてもいいじゃない?どうして帰るのよ?」
「…男が帰ったら、おれを呼ぶのか?」
「もうすぐ子どもが産まれるの。どうして喜んでくれないわけ?あんたの子じゃなくても、もうすぐ母親になる私を祝福してくれてもいいんじゃないの」
「…」 「彼は責任を感じて、喜ぶことも悲しむこともできないみたいなのね。でもね、誠は喜んでくれてもいいじゃん。子どもじゃなくて、妊娠している私を喜んでくれてもいいじゃん」