第二話 冒険者組合へ
扉を開けて、一階に降りる。さっそく宿の女将に声をかけられた。
「随分と遅く起きたね」
「ここのベッドが気持ちよくてついつい、長く寝てしまった」
「ははっ。そりゃ、どうも。代金は昨日の払ったからそのまま出ていいよ。あ、鍵は返してね」
そうか、とだけ言って鍵を返す。笑いながら毎度あり、と言って鍵を戻しに行った。
「もう、ミカ。そんなにぶっきらぼうになっちゃだめ!」
「はいはい」
ヤヅキの注意を受け流して大通りに出た。
大通りに出て、自分の影を見る。太陽が高く上り影が短い。完全にもう昼時である。その事実に少しショックを受けながらも大通りを歩いていく。
色々な店があった。よく分からない物しか置いていない露店商に、果物や野菜を売る八百屋。昼時なのもあって賑わっていた。色々な楽しそうな話し声が聞こえる。
そして、ミカは一つの屋台に近づいていった。売られているのはクェイという菓子である。
菓子といっても、砂糖や生クリーム等の高級品は入っていない。薄く焼いた小麦の生地に、その地の名産のフルーツを干したものや稀に砂糖浸けや酒浸けにしたフルーツを挟んだ物である。蜂蜜をかける所もある。
しかし、このクェイにはいくつかの伝承がある。
それは、この大陸のどこに行ってもクェイはあるのだ。しかも、言語がどんなに違っていても、クェイだけはクェイと呼ばれている。
神の作った食べ物だ、という噂まであるぐらいだ。
そして、このクェイがミカはたまらなく好きなのだ。
「クェイを二つ」
「はいよ。二つで300Loだ」
ここでの通貨は、Loである。これは、大陸内のどこでも使える通貨である。大陸で統一されているのは通貨とクェイだけである。
ちなみに、4,000Loで宿をとれる。ので、150Loのクェイはそこそこ安い。
近くの路地に入り込み、ミカは一つをヤヅキに渡し、もう一つにかぶりつく。
果物はかなり熟していたのか特有の甘さが口にひろがった。しかし、サッパリともしていて何個でも食べられそうだった。
またヤヅキも器用に小さな前足でクェイを掴んで食べていた。
半分食べてひと段落したのか感想を言い始めるヤヅキ。口の周りにはクェイの中に入っていた果物がべったりとくっついていた。
「確かに、一つ前の町でも食べたけどあれはクェイじゃない。私はクェイだと認めない。後、ヤヅキ。口元洗って」
「はぁーい」
ミカはクェイがかなりお気に入りである。色々な町のクェイを食べて周りながら旅をしている。
まあ、これだけの為に旅をしている訳では無いのだが。確かに色々な町で独特なクェイがその土地にあったりする。
そして、ようやく冒険者組合に向かった。
今日の目的地はここであったのだ。
ギルドは町の防衛、情報の伝達なども兼ねていたりするので必ずと言っていいほど中心にある。知識さえあれば誰に聞かなくてもギルドには行けるのだ。
他の町にあるものよりも冒険者組合はかなり大きな建物だった。
木でできたその扉を開けると、酒場があり酒場には男達が酒を飲んでいたり、昼食をとっていた。濃いアルコールの匂いが鼻につく。
昼前なので空いているギルドのカウンターにミカは歩いて行く。
「討伐部位等の換金を頼みたい」
ザワリと周りの空気が動いた気がした。
実はミカはかなり背が低い。傍目から見れば子供と大人の中間と言えなくもないが、それでもまだ子供にしか見えない程の身長である。
また、ミカの見た目ぐらいで町の外に出られる見習い冒険者はいるだろう。しかし、魔物の討伐部位を持ってくる見習い冒険者など居ない。
「わかりました。ではここに出して下さい」
そう言ってテーブルと同じ位のトレーを前に出す。
「わかった。だが、この大きさのトレーだと入りきらないと思う」
そう言った直後だった。
「おいおい、餓鬼。自惚れているのか?Cランクの俺等でもそんなに持ってくることは無いのに。やっぱり、自分が採った物は大きく見えるもんなぁ。おいおい、それにどこに討伐部位があるんだ?」
そんな茶々に、ゲラゲラ笑っている。酔っているのだろう。
Cランク、それは上から三番目ぐらいの実力を持つことを意味している。
冒険者組合では見習い冒険者であるFランク、初心者であるEランクとDランク、ベテランと言えるCランクとBランク、一握りしかなれないAランクと六個のランクがある。
このような、余り主要とは言い難い町にはCランク以上はいないのだ。
「では、ここに数回に分けて出して貰えますか?」
「あー、うん。わかった」
淡く青い光が走る。すると、トレーの上には大量の魔物の討伐部位が山になって積まれた。見えるのは、豚頭族、大鬼族等のCランク以上が中心であった。
「はっ?あ、はい。わかりました。量が多いので少しお待ち下さい」
驚いたような顔をした受付嬢は、大量の素材の乗ったトレーを持って奥に消えていった。




