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第一話 ミカ、という旅人

 久しぶりにこの夢を見た。


 何度も見た。毎回、同じ場所から始まり、同じ場所で終わる夢。


 ファブライズ(獣人族)と思われる幼子(おさなご)を囲むエンシェント(人間族)の子供達。周りには子供達以外おらずむき出しの地面に、たくさんの大木がところ狭しと生えているだけである場所。



 私はそれを、空の上から眺めることしか出来ない。目を瞑ることも耳を塞ぐことも出来ない。出来るのは、ただこの光景を見ることだけである。


 目が覚めるまで、永遠と続く悪夢。誰の事なのか分からないが何度もこの夢を見た。


 一人の持つ無骨な大きな解体用のナイフが子供の小ささを強調している。両手で持つのがやっとな、重いナイフ。幾重もの動物の血を吸ったソレは子供の持つものではない。


 幼子が逃げられないようにするためか、囲むように子供達が立っていた。


「人間の皮を被ったただの獣め!俺達の食糧庫から食い物を奪ったのはお前だろっ」


 責め立てるようにナイフを持っている子供と、そうだそうだと囃し立てる周りの子供達。


 この後、どんなことが起きるかも考えずに。



「この───村の次期村長である、──────が、食糧庫から食糧を盗んだ罪を断罪する!」


 言いたいことを言えて、ドヤ顔である。だが、断罪。子供が使う言葉ではないだろう。



 ゆっくりと幼子に近づいている。幼子は動けないのか地面に座り込んでいる。周りの子供達もただ見ているだけである。


 ナイフを持った子供が幼子を蹴飛ばす。顔を蹴られ、耐えきれずに地面に倒れこんでしまう。子供が馬乗りになって逃げられなくする。



「昔からこの村では、食糧庫から食糧を盗んだ罪は耳を切り取るんだ。多少は、人間らしくなるんじゃないか?」


 子供のそんな声に、同意して笑う。そうだそうだと。


「やめろっ!」

 私はそう叫んだ。一歩動こうとするが、ピクリとも動かない。先程の叫びも子供達には届かないのだろう。



 ザクッ、と耳が切られる。赤色の血が地面へと落ちていく。無骨なナイフは動物ではなく、とうとう人間の血を吸った。


「あぁが、ぎゃぁぁぁぁいがぁぁぁ」

 曇り空に激しい絶叫が木霊した。しかし、それも直ぐに止んだ。気絶したのだろう。



 ゆっくりと端から暗くなっていく。夢が終わる印である。やがて、全てが暗くなった。やっと、目が覚めると喜べる。




※※※





「ーカ、ミー、ミカ!起きて。起ーきーろ!」

 そんな声を聞きながらゆっくりと目を覚ます。目を開けるとそこには真っ黒な鱗に囲まれた体に金の瞳をした幼竜(ドラゴン)がいた。相棒のヤヅキである。


 ミカが寝ていたのは、いつもの野宿用の所々擦りきれた毛布ではなく、柔らかい毛布だった。それを触りながら、どうしてここに居るのか思い返した。


 久しぶりに宿をとったのを思い返した。



「おはよう。ヤヅキ」

「おはよっ。ミカ。魘されてたよ?大丈夫」

 はっきり言えば、最悪である。悪夢を見て精神が疲労しているような感じがする。

 だが、まあまあ。とだけ答えて身支度を始める。


 ようやく身支度が終わりそうになった頃に、水の入った桶をヤヅキが持ってきてくれた。


「はい、水!桶は下から借りてきた!」

 桶には水が波々と入っていた。ヤヅキは、水、火、風、土、光、闇の基本属性である六属性に適性がある。そのため、桶の中に水を入れる事など造作もないのだ。


「ありがと、ヤヅキ」

 桶を覗くと水面には自分の顔が写っていた。

 ファブライズ、それも狼人と呼ばれている種族である。特徴的な、量の多い髪と紫紺の髪。

 だが、それと同時にドラゴニュート(竜人族)の特徴ももっている。細長い耳に金の瞳は竜系統の特徴である。


 そのためか、狼人と竜人の二局面を持っている。狼人の高い五感能力と動体視力と、竜人の強靭な皮膚と細身ながらも高い筋力。その二つを持っている。


 しかし、欠点が無いわけではない。純粋な竜人には皮膚の強靭さでは負けるし、狼人よりも五感は劣る。結局、中途半端である。しかも、食べる量と寝る量が常人よりも多く、長い。


 そんな事を思い返しながら、顔を洗う。冷たい水が眠気を払ってくれる。



 気を効かせてくれたヤヅキ(相棒)の頭を撫でる。だが、子供扱いしないで!と頬を膨らませて嬉しそうに言った。


 あらかた片付いた部屋を最後に見回りして扉の前に立つ。


「行こうか。ヤヅキ」

「うん。出発!」

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