連携
連携
天使のもつ蝋燭の灯火が火炎のごとく燃え上がった。
炎が右手の剣に移る。
炎の剣というべきか……。
「さてこの状況、どうしましょうか」
「まあなんだ。いつもどおりだろ?」
「いつもどおりですね」
記憶の中から連携技を呼び起こす。
天使が一斉にかかってくる。
「小都音、対空防御!」
「はい」
蠍の護符が真上に浮かび上がり結界が広がる。
天使が振るう剣から炎が伸びる。
結界が炎を遮断。
続く斬撃も防ぐ。
「一刀流、正統、表――」
突きの構え。
刀の切っ先に銀色の魔力を集中させる。
6体目の天使の一撃が結界に亀裂を入れる。
7体目が結界を粉砕する。
8体目が粉砕した結界を抜け、剣を振りかざして向かってくる。
「おらあ」
鉄のガントレットで天使の障壁を掴んでひきはがす。
「――繊!」
ざしゅっ
タイミングを合わせた高速の突きが天使の胴を貫いた。
亀裂が走り石の胴体がばらばらに砕ける。
すぐに背中をあずけあう体勢に戻る。
「ナイス、相棒!」
「ふふ、近距離戦で私たちに敵う敵なんていませんね」
小都音の剣技の中で繊の月は奥義級の技だ、
溜めに時間はかかるし、突きによる点の攻撃であるため使いどころは難しいがその反面、高速の一撃を防ぐ術はない。
天使は残り7体。こいつらに学習能力があるとすれば、今のカウンターにはもうノってこないだろう。
実際、宙をぐるぐると周りこちらの様子をうかがっている。
「降りてこないなら、こっちから引きずりおろしてやるか」
「了解、吊るされた男」
小都音はカードを取り出し、左手でスナップを利かせて床に放る。
足元に落ちたカードから、じゃらじゃらと音をたてて鎖が飛び出し天使を襲う。
1体の天使の足を捕らえた。
「来なさい、雲心月性」
小都音の凛とした声が響いた。
虚空から抜き身の刀を取り出す。
右手には小都音が愛用する清風明月、左手には取り出した雲心月性。
「二刀流、正統、裏――」
二刀の鍔を合わせて交差させる。
2つの刃に一気に魔力が収束する。
銀色の刃が暗黒色に染まる。
俺はその術式をみて鎖を思いっきりひっぱった。
天使をたぐり寄せる。
「――上弦、下弦の月」
2刀の平らな部分同士を滑らせて外へ振り切る。
金属の滑る甲高い音が響いた。
黒い2つの斬撃が部屋一杯に伸びてハサミのように閉じる。
鎖と氷結のルーンで捕らえられた天使が体を真っ二つに斬られて落下した。
伸びた斬撃は後ろにいたもう2体の天使も斬っていた。
落下した体を床に打ち付け、石塊のように粉々になった。
「あいかわらず恐ろしい技だ」
笑っていってやった。
「えー、そうですか?」
楽しげに笑う。
小都音の使う奥義のうち、表は聖なる魔力を、裏は邪悪な魔力を用いる。
特に裏は反則なほど強力だ。
残る天使は4体だ。
「さあ、次はどうするかな? お前ら、そうやって高いところを飛んでるだけじゃないよな?」
挑発にノったのかは分からない。
ただ天使の1体が、滑空し向かって来たかと思うと、炎の剣を投げナイフのように投げ付けてきた。
そいつはハズレだ。
「伝承、再現!」
鉄のガントレットで炎の剣を受け止める。
続けて、即座に投げ返す。
どす、と天使の身体に突き刺さった。
伝承では北欧のトール神は手にはめたヤールングレイプルで投げ付けられた熱い鉄の球を受け止め、そのままそれを投げ返して敵を倒したとある。
残る天使は3体、騎士が2体。
天使と騎士の5体が一斉に動いた。
天使が剣を前に突き出し、高速で落下してくる。
騎士甲冑も剣を構えて突っ込んでくる。
上空からきた天使と前から来る騎士の剣を左右の刀で受け止め弾く。
「この!」
小都音に迫る別の天使を右手でぶん殴る。
思い切り地面に叩きつけた。
ついでに障壁は奪い去る。
小都音の蠍の護符が展開され3体目の天使の一撃を防ぐ。
魔除のルーンを刻んだ石を取り出し放り、もう一人の騎士の攻撃を防いだ。
その隙に2刀による突きの構え。
左右の刀の切っ先に銀色の魔力が集中する。
小都音が退けた騎士に手を伸ばし、障壁を剥ぐ。
「理靖!」
「おう」
左手に握った刀を右手で受け取る。
魔力が通ったものをそのまま受け取ることのできるガントレットの能力を活かす。
先ほど右手で殴って障壁をはぎ取った天使に繊の月の術式が刻まれた刀の突きを喰らわせる。
もう1体、障壁をはぎ取った騎士に小都音の突きがはいる。
残った天使と騎士がまた、距離をとるように離れた。
「ふう、あと3体ですね」
記憶を取り戻してからまだ1日。
なかなか上手く連携できている。




