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練6

わたしたちは結局あの後、9時頃まで時間をつぶしてから交番に行ったが、枝裁はおろか女の子までいなかったのであきらめて帰ることにした。

鈴木さんは鈴木さんの家へ、わたしは探偵事務所が放火されて使用不能なので久々にアパートの自分の部屋に帰った。


わたしは部屋に帰るなり、ベッドで熟睡してしまったので、起きたら日付が変わっていた。


今日もあの駅前交番に行き、なんとしても枝裁から話を聞かなくてはならない。

しかし、鈴木さんとの約束は10時からなので、わたしは「塔の破壊者」についてネットで調べていた。

普段パソコンなんてまったく使わないので、悪戦苦闘しながらネットの海から情報を集めていた。

「無能な警察はもう信用できない!」など、「塔の破壊者」を支持するものが多かった。




しばらく「塔の破壊者」についてよくまとめられたサイトを見ていると携帯の着信音が部屋に響いた。


非通知。


わたしはそれを無視し、ネットの海を漂う情報の捜索を再開した。


しばらくするとまた電話がかかってきた。


非通知。


わたしはまた無視しようとしたが、この携帯電話の番号はほんの数人にしか教えていないはず……


わたしは電話に出た。

無言で相手の出方を窺う。


「初めまして。どうも『塔の破壊者』です。そちら、瀬野さんですよね?」


「なっ……⁉」


電話口から聞こえてきた相手の声はもちろんボイスチェンジャーで変えられていたが、間違いなく「塔の破壊者」と名乗った。

私はすぐさまメモを用意し、慎重に話し始めた。


「もう一度お伺いしますが、そちら、瀬野さんで間違いありませんか?」


「あ、ああ……もちろん……」


「さて、早速用件をお話しますね。今日、お電話させていただいたのは、ただ確認がしたいことがありまして」


確認したいこと? 捜査の状況か?


「あー、多分あなたの思っているようなことじゃないですよ。そんなこと確認するまでもないですから。確認したいことというのは、16年前に起こった『警察官家族連続殺人事件』についてです。ただ、その事件にどのような形で関わっているか、ということです」


「……ッ!」


まさか「塔の破壊者」からもその単語が出てくるとは思わなかった。


が、よく考えれば今一番疑っているのは「警察官家族連続殺人事件」に少なからず関係していた人物だ。

これで枝裁がますます怪しくなってきた。


「で、どうなの? 関係者なんですか?」


「わたしは探偵として、その事件の捜査に協力をしていた。それだけだ」


わたしが捜査に協力したというのはニュースにもなっているので、正直に答えた。

解決できなかったことも報じられている。


「ああ、そうですね。確かに捜査に協力していただけのヘボ探偵でしたね。本当は事件を解決できたはずなのに」


「ちょっと待て! それはどういうことだ!?」


「あなたはあの事件の犯人が分かっていたんでしょう? それなのに犯人が分からないフリをしていた。違いますか?」


「……」


「まあ、答えなくても私はあなたが何をしたか、何をしなかったかは知っていますからね。それでは、また……」


「1つ、聞きたいことがある」


「……何ですか?」


相手は電話を切ろうとしていたのか、少し間があって返事が返ってきた。


「どうしてお前は『塔の破壊者』を名乗って事件を起こしているんだ?」


「それは、私にも分かりません。強いて言うなら使命だから、でしょうかね?」


そう言い残し、相手は電話を切った。

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