序章。
嘘。
嘘、だ。
「嘘」
一途は密林の中の少し開けた地で青年を見ると両膝を落とした。恩師である大事な人の桔梗紋が鮮血に染まり、人形のようにくずおれるのを見ると天高く咆えた。
精神が軋み、闇が一途の思考を覆ってしまう。
目の前の出来事は見間違いでも夢でも無い。
現実だ!!
一途を遺したまま、逝かないで。
「桔梗紋は死んだ。一途。君を守ってさァァ?」
死神が優しく笑って一途をふり返った。
桔梗紋の返り血で、真っ赤になって。
「寂しくないよ。一途もすぐ逝くことになるんだからさァ!? 霊獣憑きィィいいいいいいいいいいいいい!?」
この一途の命はまた終わる。
一途の死に絶望し、そのまま仇の紅芭に喰われ、この星が、世界が終わることになるのだ。比喩とか何でも無く。世界中の生命が文字通り全滅する。
骸だらけの死の星になり、その星は塵になり。
「繰り返し、繰り返す」
この星の終焉のループ。
繰り返すだけの虚しい運命。
次こそ、正しい道を行けますように。
青年は焦がれるように零すと、次を生きるこの星の人類を見渡した。
「霊獣が出たらしい」
「今月で何度目だよ。全部殺しちゃえばいいのに」
一途。
唯一、このループを抜け出せる人間。
「……『霊獣』がまた出没したらしいぞ」
「嫌だわ。今月で2度目じゃないの!?」
「一途」
一途。
この運命って下らねェバカを、忌々しいものを徹底的にぶっ壊して粉砕してくれよ。
「お前じゃなきゃ、ならないんだよ」