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2 同志と刺客

     2 同志と刺客

 我々の本拠地が有り、俺の表の勤め先が有り、まあとにかく俺にとっての根拠地をなしているこの国ヴェルガノと、俺がこれから致命的奉公に出る手筈となっている()()()とは、世界地図にして半分ほどかけ離れていた。ここでの生活を精算した俺は、少ない手荷物を抱えて、その長い旅路に就くところである。

 港において、俺が高速船のチケットを買う為に金貨一枚を差し出すと、丸渕眼鏡の係員は苦笑いと共に、概ね同額分のコインをチケットに添えて返して来た。どうやら、料金表を一桁見間違ったらしい。俺は気恥ずかしさと共に、何故世界を半ば横断する、つまり事実上最大距離を渡る航路の、それも飛び抜けて最速の船がこれほど安い値で乗れるのか、という疑問を抱えたのであった。

 券売り場の小屋を出た俺は、忌ま忌ましいほどに照る陽の前を有翼の魔獣が頻りに飛び交うことで、夥しい影の行き交いがその上になされている栄えたメイン道を、人を避けながら歩み進んだ。そうして辿り着いた波止場は、数年ぶりに対面する海として、俺に、力強い香りと音を最早遮るものなしに伝えてくる。もし白髭を蓄えていれば、その編み目の狭間に黒々と結晶化したのではなかろうかと思わされるのほどの磯の香りと、泡立ちの白と波間の青が衝突することでかき鳴らされる漣の音は、何故か、共に心地よいものであった。普段見慣れている、空に浮かぶ青と白のコントラストよりも、この見慣れぬ、波の鬩ぎあいによる対照の方が俺の心を安らがせるのは何故であろう。もしやすると、寧ろ鬩ぎあっている為であるかもしれない。直接的でないにせよ、ずっと命懸けであの国と戦ってきた生涯が培ってきた俺の精神は、穏やかに青の世界を流れる雲よりも、寧ろきっと、激しく誕生と死を繰り返す海の泡立ちの方に同調をなすのだ。

 洒落た船を無視し続けながら、俺が波止場を海に沿って歩み進むと、どうやら、ようやく目的の船が見えてきた。その船の姿を予め調べておいたわけではなかったが、しかし、あまりにも明白だったのだ。横に走る木目を晒した巨大な船体の上では、冗談のように隆々とした肩を仕事に使っている船員達がまめまめしく蠢いており、そして船体の前のほうからは、幹のように太いロープが幾本も伸びていて、その先に、象の鼻のごとくしなやかな首を持つ海龍魔獣が三頭、旅立ちを待ち切れぬという体でぶるぶる身を顫わせているのである。一頭でも俺の故郷の街を薙ぎ倒すのに充分と思われる、あまりに魁偉な体躯を海中に沈めている三頭の海龍、彼らの牽引があるからこそ、この船は通常の帆船とは比べ物にならない速力で海の上を駈けることが出来るのだ。だからこそ、そう、大層な運賃を請求されると思っていたのだが、何故こんなに安いのだろうな。もしも何かしら客がつかぬ理由があるにせよ、あの三頭の海龍が喰らう餌代は相当のものであろうし、それを賄うことなど、あれ程安い料金で出来るのだろうか。

 波止場側に佇む、値段相応に無愛想な、どう見ても船乗りじみた係員に券を渡すと、踏み出すごとに軋む頼りない板を渡らされて甲板に案内された。そこを見て俺は、この船の採算の合わせ方について幾らか納得したのだ。船倉に入り切らなかったと思しき大量の品物が、樽やら網やらに詰められてそこら中に転がっているのである。成る程、基本的に荷物を運ぶ船で、客はついでに乗せるのみなのだな。となると、先程の案内人の無愛想も、寧ろ殆ど手ぶらで乗り込もうとする俺への困惑によるものだったのかもしれない。

 引き続いての案内により、果たしてお世辞にも上等とは言えない客室に通された俺は、理由がない限りあまり甲板に出てくれるなという忠告だけをその船員から寄越されて、一人きりとなった。これから数日、この狭苦しい部屋で寝起き、いや、もしもアイツの言葉に従うなら寝起きどころか殆ど一日中過ごすことになる部屋をぐるりと見回すと、一つ、奇妙なものが見つかった。赤黒い妙な壺だ。逞しい大きさと無骨な見た目は、二三人がかりでも持ち上げるのに難儀するほどのしっかりとした重量を俺に想像させる。まあ内装はとにかく、移り行く海原の風景や、海龍を巧みに操る(のであろう)水先案内人の伎倆を眺めて道中の無聊を慰めようと思っていた俺は、代わりの時間潰しをどうしようかと悩み始めていたのだが、その瞬間、上の甲板の方から喊声とも怒声とも判断し難い、とにかくがなり声が響いてきた。それに続いて、海の男達が床板を叩く跫音も忙しなくなる。ああ、早速出港なのかと理解した俺は、こんなにぎりぎりの時刻であったのならば少しは忠告して焦らせろと、券売り場の眼鏡の女に軽い恨みを抱いたが、しかし、すぐにそれどころではなくなった。

 先程見せつけられた体の大きさに似つかわしい、殷々たる嘶きを海龍が寄越して来、次の瞬間、俺の体がふわりと浮いた。いや、少なくともそんな感覚を覚えたのだ。そして続いての刹那には、後ろに引っ張られるような感じとなり、腰掛けていたベッドの上に身を投げることになったのである。眉根を寄せた俺が悪態をつきながら身を起こすと、縦横無尽の動揺が船室に迸り、俺の頭は風に戦ぐ花のようにぐらぐらと揺すられた。しばらくした後では幾らか落ち着いたが、それにしても普通の船とは比べ物にならない程度の揺れが(したた)かな酔いをもたらし、それによって俺は、あの頑丈な赤い壺を遺憾なく利用させてもらうことになったのである。

 食慾も湧かず、壺とベッドの上を、恐らく蒼白い顔で往復する日々を重ねた俺は、それでもなんとか()()()の港まで生きて辿り着くことが出来た。揺れない地面がこれほど有り難いものだとは。ええい、二度と海龍船には乗るまい! そう誓った俺は、このままこの港町で数日療養したい衝動に駆られたが、しかし、約束の時刻までは余裕がない。手紙以上に手早い聯絡手段がこの世に存在していれば良かったのだが、無いものは仕方がなく、そこで俺はやむなく乗り合い馬車に乗り込み、目的地、()()()の首都を目指した。道中、大荷物を背負う隣り合った老婆から、顔色をさんざっぱら心配されつつ。

 港を出る頃に丁度昇り始めていた陽が、優に天頂を通過し、寧ろやや黄色味がかってきた頃、ようやく俺は終始揺られながらの長旅を終え、この国の首都、やはり名を持たないおかしな都市に到着した。馬車から最後に降りた俺は、きっと、これから人を殺しに行く――それも世界的な英雄を――という男にはとても見えなかったであろう。見かねた(くだん)の老婆に手を貸されつつの降車であったのだから。尚も心配してくるその老婆をなんとか追い払ってから、都市を囲う荒野に転がっている適当な大岩に座り込み、自分でも血の気の感じられない顔で見上げると、()()()()の、大層立派な壁と門とが目の前に広がっていた。俺の背丈の幾人分あるのかも知れぬ、堆く築かれた脂色の石材壁は、この巨大な都市をぐるりと囲んでいるそうで、かつての幾世紀、この都市が魔獣やそれを統べるものと戦いの根拠地となっていたことを偲ばせる。今この世の中では、魔獣といっても獣とあまり変わらない、つまり、野生のものに会えばひとたまりもないが、町中で見かける分には何ということのない存在であり、あるいはもっと知的な魔獣であれば、野で会えば山賊、町中で会えば疎い隣人という、その程度の存在であった。しかし、例えばあれ程力強い牽引をなす海龍に人間が襲われてはひとたまりもなかろうから、つまり、彼らと本気での戦争を繰り広げていたかつての日々は、凄まじいものであったのだろう。そして、彼ら魔獣への対抗戦力の中心となったこの都市はその残り香というか杵柄というか、とにかく今も尚、世界中の強者が集う、この上なく精強な軍力を保持していた。つまり、武や魔術に長ける者にとっての聖地なのだ。勿論、世界中の全てが()()()()()()()の存在を良く思っているわけではなく、たとえば俺のように、()()()の存在ほど、明日の平穏を不確かにしている存在はないと信じている者も――幾らかは――居るわけだが。世界から武力が一ヶ所に集まるなど、どう考えても健全ではない。今は、聖地ゆえに被る縛めによってかこの国は大人しくしているが、もしもその厖大な軍事力にものを言わせるようになったらどうするつもりなのか。残りの国が束になっても敵う気がしない、そんな超軍事国家をどうして野放しにしておけようか。

 ほんの少し気分が良くなってきた俺は、いつの間にか、右手に見知らぬ小瓶が握られているのに気が付いた。宵闇のように青い硝子の上に張られたラベルを見ると趣味の悪い飾り文字が踊っており、それだけで水剤(ポーション)の一種と分かる。さっきの老婆が握らせてきたのだろうかと思いながらその見辛い字を読むと、酔い覚ましの効用があるらしい。そもそも喉が渇いていた俺は、薬効には期待せずにすぐさま蓋を開けてその水剤を呷ったのだが、しかし、驚かされた。空っぽの胃袋に液体が染みる感覚のあと、すぐさま、嘘のように気分が良くなったのだ。頭がすっきりした俺はそのラベルのまじまじと眺めてみたが、どうにも大した水剤には見えない。漠然とした、何となく気分が悪い時に飲め、という品のようだが、つまりそれ専用というわけでもないのにこれほど見事に馬車酔いを治してしまうとは、なんということだろう。これまでちっとも効き目の無い代物ばかりに出会していたので、どこか馬鹿にして使ってこなかった水剤であるが、少し見直すべきなのかも知れない。とにかく恢復した俺は、ようやく岩から立ち上がって、厳めしい門に向かった。

 ミネルヴァの署名付きで送られてきた書面を見せると、入都市審査の役人はすぐに俺を通してくれた。触れるのも嫌だったところを頑張って持ってきた紙切れがこう役立ってくれると小気味よい。そうして都市の中に一歩踏み入った俺は、数も知れぬ人が行き交いする喧騒の中孤独に佇みながら、実は一抹の不安を覚えていたのだ、目的地に無事辿り着けるだろうか、と。しかしその不安はすぐに霧散した。三頭立ての馬車が悠々すれ違えるほどに広い舗装道の両脇に、頑丈な石材作りの建物が立ち並ぶ中、その右手側の屋根屋根の上辺から、申し付けられていた目的地の特徴、風見鶏のように建屋の頂点に()まる、レッドドラゴンを象った木板が垣間見えるのである。俺は、道を曲がりながらその建物を目指した。

 その秀麗なドラゴンを頂いた建物は、二階に下宿用の部屋を持っているようだったが、俺は死んでもここには住むまいと誓った。その一階の騒がしさ故である。まだまだ日も沈まぬというのに、その酒場兼大衆食堂と思しき〝赤龍亭〟なる店屋は、まるで祝祭日か何かというくらいに、赭ら顔の連中でごった返していたのだ。そいつらに比べてずっと崇高な、少なくとも真面目な目的で来た俺は、身勝手に酔っ払い達を軽蔑しながら店の中へ入り、座る席から溢れている大男の背中と尻に辟易しつつ、なんとかカウンターまで辿り着く。繁盛によって死ぬ思いをしているウェイタや料理人とは違い、退屈そうにしている勘定役の娘に向かって、

「済みません、ヴェロ・ポックさんはここに来てないでしょうか。」

 眠たげな彼女が口を開きかけたが、しかし結局そこから言葉が出る前に、

「僕ならここに居るがね。」

 俺はその声のした方を見た。十五歳程度年上だろうか、無難な程度に整った顔だが、首から上の毛を執拗に調えている印象を受ける。すなわち、髭の類は一本残らず剃り落とされており、眉も最も清潔な印象を与えるように揃えられ、また、その小麦色の髪も前から後ろへしかつめらしく撫で付けられているのであった。その清潔過ぎる男は、勘定場所すぐ横のカウンター席に腰掛けており、成る程、俺が登場したら即座に捕まえられるようにしていたというわけだ。

 そう俺が感心している間に、その清潔過ぎる編輯者、ヴェロは席を立ち、右手を差し出してきた。

()()()()()()()、ケイン君。達者なようで何よりだ。」

 初対面のヴェロから浴びせられたこの意味不明な挨拶に、しかし俺は動じなかった。何せ俺は、このミネルヴァ付きの編輯者によって、見どころある若者として〝紹介〟される予定なのだ。ならば、俺とヴェロは当然旧知の仲でないといけない。

 俺はその手を摑みながら平然と言った。

「あなたもお元気そうで。ヴェロ。」

 俺の演技に満足したらしい男は、手を取り戻しつつ頷きながら、

「さて、遥々来てもらっていきなり悪いのだがね。是非君に、しかも日の暮れ切らぬ内に見せたいものがあるのだ。来てくれるかな。」

 ヴェロは俺の返事を待たずに、眠たげな店員へ、俺を待っている間に撮んでいたらしい飲食の勘定を支払った。見せたいもの、ねえ。成る程、早々に店を出るのに適当な理由というわけか。こんな衆人環境で要人暗殺の話など出来るわけがない。俺達はとっとと移動すべきだった。

 右も左も分からない俺は、店を出てからも大人しく、そして静かにヴェロについていった。ここで無用な会話をするのはあまり賢明でなかったのだ。何故なら、同志とはいえ初対面である俺とヴェロがどういう間柄を演ずべきなのか決まっていない以上、余計な会話は余計なボロの原因となる為だ。たとえそれを聞くのが通行人しか居なかろうと、用心するに越したことはない。

 しかし、あんまりむっつり並んで歩いているのもそれはそれで不自然かと思った俺は、無難なことを切りだしてみることにした。

「ヴェロ、一つ訊いていいですか。」

 清潔過ぎる編輯者の返事は淀みなく、

「何だい?」

「何だって、あんなに騒がしい場所を落ち合う場所に選んだのです?」

 少し間があってから、

「君は酒、あるいは酒場が嫌いなのかい?」

「いや、それぞれ大好物と大好きですが、しかし、状況というものがあるでしょう。()()()()をしに来たのですから、あのような場所は、例え待ち合わせるだけにしても些か相応しくないのでは、と思いましてね。」

「ふむ。しかしね、ケイン君。あの〝赤龍亭〟は、()()()()に詳しくないゲストを招く時に、お決まりの落ち合い場所なんだよ。ほら、君も見ただろう、あの大きな赤龍の意匠を。あれを目印に指定しておけば、どんなお上りさんであろうと迷わずに赤龍亭に辿り着ける。だから、とても便利にされているんだ。」

 俺は頷いて、

「成る程。納得しました。」

 事実、俺は深く納得していた。つまり、多くの者があの赤龍亭を待ち合わせ場所に用いるという事情が、そしてその事情に分かりやすい理由――ドラゴンの目印――が存在しているということは、この編輯者が田舎かどこかから知り合いの青年をその赤龍亭に呼びつけても全く不自然でない、ということになる。この清潔過ぎる男は、そこまで考えていたのか。また、俺は、こういう含蓄を美事、はたから聞くのみでは全く無難な言葉――無害な田舎者に赤龍亭の意味を説明しているだけに聞こえる言葉――の裡に即座潜めさせたヴェロの器用さを見上げた。このような機智が、この清潔過ぎる男にいきなりの出世を与えたのだろうか。

 その内に、道を先導するヴェロが立ち止まって言った。

「さて、君に見せたいものというのが、そこにある。日が沈む前に辿り着いて良かったよ。」

 店を出る間際の言葉が単なる方便でなかったことに驚きながら、俺は、

「そこ、とは?」

 ヴェロがどこかを指さした。

「そこ、さ。そこの公園の中だ。」

 俺がそっちを見ると、成る程、頑健そうな建物が連綿と立ち並ぶ中に、突如、ぼっかりとした巨大な欠落が起こっている。公園と言うからにはそこに草樹でも生えているのだろうが、しかし、

「まさか、わざわざ花でも見せてくれるんですか?」

 ヴェロはこっちにしっかりと振り向き、微笑んだ。

「あそこは、ペネニラル記念公園だ。」

「ペ……?」

「ジョーユ・ペネニラルという男のことだが、知らないかい?」

「恥ずかしながら。」

「まあ、きっと忘れられない名前となるだろう。ペネニラルは、〝不老術式〟を完成させた魔術師だ。」

 ここで、ヴェロが眉を上げた。きっと、隠し切れずに俺の顔に浮かんでしまった激憤に気が付いたのだろう。

「ふむ、()()()()()()()元気な青年だ。それならば、ミネルヴァ将軍のお傍での()()も充分こなせるだろう。」

 俺は顔をぶんぶんと振って、表情を改めてから、

「で、この公園に何があるのですか?」

「いや、ペネニラル記念公園にはだね、そのペネニラルの開発した〝不老術式〟の恩恵を受けている十余人の銅像が常に建てられるという決まりがあるんだ。つまり、君が仕えようとしているミネルヴァ将軍の銅像もあるわけでね。事前にそのお姿を見ておくのも良いことだろうと思ったのだよ。」

 俺は首肯した。

「成る程。悪くないですね。」


 その様な寄り道を経つつ、丁度日の沈んだばかりの時刻、俺達はヴェロの住んでいる借家、見るからにこぢんまりとしたそれの前に辿り着いた。

 ヴェロが扉を開いて言う。

「まあ、上がってくれたまえよ。」

 しかし俺が従わないので、その清潔過ぎる男は訝しげに、

「どうしたのかね。」

「ああ、いや。思いだしてみれば、自分、ここ数日ロクに喰っていませんでしてね。何か、頂けますか? というか、何かありますか?」

「おいおい、何だってそんな無茶をしたのだい? まあいい、たまたま食糧を買い込んだ直後だ。好きなだけ食べさせてやれるよ。今からわざわざ食べるものを買いに出る必要はない。」

 俺はようやく一歩踏み込みつつ、

「では、遠慮なく。」

 そうして中に入り、ようやくヴェロと二人きりになった俺は、しかしまだ緊張を解いていなかった。すると、この切れる編輯者は聡く察したらしく、

「ああ、この部屋に関しては、魔術的にも物理的にも盗み聞きの心配はない。もう、幾らでも遠慮なく話しあうことが出来るよ。」

 俺は肩の力を抜き、ずかずかと、主人の性癖の通りに整理整頓や掃除の行き届いた部屋を中程まで横断した。そのままの勢いで、洒落たソファに座り込む。

「……ったぁ! クソっ垂れな長旅のせいで疲れたぜ、全く。なあヴェロ、その分の金は出すからさ、とにかくありったけの喰いもんをくれよ。」

 編輯者は首を振りつつ、

「おやおや、随分と行儀が悪くなったね。」

「なんだって、同志として対等の立場であるアンタ相手に、しかも密室で、慇懃に振る舞わないといけないというんだい。アンタが、俺のことを知人の息子だと紹介すると言うから、それなりに演じていただけだろうが。」

「まあ、それはそうなのだろうがね。しかし、表でボロが出てもいけない。心など込めなくても良いから、一応叮嚀な言葉を使ってもらえないかな。」

「悪いがおっさん、まず飯を喰わせてくれよ。その後でなら善処する。」

「はいはい。まあ、本当にありったけを出してしまっては体に毒だろうからね。普通に一食分を振る舞わせて頂くよ。」

 ヴェロは手際よく、輪切りにされた固焼きパンと、何やら皿に盛られた、油で和えた生魚の切り身のようなものを出してくれた。

「パンと、……なんだこれ?」

「魚だが?」

「魚だと?!」

 続いて酒らしきものを持ってきてくれていたヴェロは、驚いた顔で、

「何だい、君は魚を見たことがないのかい?」

「そんなわけあるかよ! いや、独り身のお前が買い込んだという食糧に、なんで生の魚があるんだ。こんなもの、一日と持たないだろう。」

 ヴェロは、その毛のない頬を撫でつつ頷いてから、

「ああ、そうか。君まだ親しみがないのか。いや、()()()()である程度稼ぎがあるものは皆持っているのだよ、〝保冷庫〟を。」

 俺は首を伸ばして、先程この男が俺を持て成す為にこまこまと何やらしていた辺りを覗き見た。見慣れぬ、いかにも分厚そうな真っ黒い箱がある。

 俺は訊ねた。

「動力は?」

「この部屋の天井にもついている、魔晶燈と同じだよ。魔晶石だ。もっとも、〝水〟の魔力を帯びたものが必要だがね。明かり用に出回っている〝光〟の魔晶石とは異なってこいつが少々高いというのが憾みどころだが、基本的には便利な品だよ。僕は魚、それも干したりしていないものが大好物でね。後は、野菜も日持ちするから中々助かるよ。」

 俺は耳の辺りを弄りながら、

「いやはや、世の中どんどん便利になるものだなぁ。ああ、いや、流石に魔晶燈は俺も親しみがあるが。」

「そう便利だ。しかし、この様な発明の殆どが、()()()の研究機関、それも軍にべったり寄り添っているそれによってなされているというのは、我々にとって複雑な話だね。」

 俺は眉根を寄せてから、

「ヴェロ、保冷庫の愛好者であるアンタは、その点についてどういう気持ちの整理をつけているんだ?」

「発明に罪はない、と思うことにしているよ。我々の仕事、あるいは我々の革命が完遂しても、結局どこかでこういった研究はなされるだろうしね。それにそもそも今の世の中、保冷庫はともかく、魔晶燈すら使わないとなったら、奇人として注目を浴びるに決まっている。職務遂行上、そんな馬鹿な意地で目立つわけにも行かないだろう?」

「まあ、それもそうだがな。」

 俺はいい加減に、目の前のパンを引っ摑んだ。

 粗方平らげ、そして飲み干してすっかり元気になった俺は、ヴェロの注文通り叮嚀な口で、

「では、ヴェロ。そろそろ()()の話をしましょうか。」

「ああ、すぐにでも始めよう。と言いたいところだが、その前にケイン君、君はミネルヴァの事をあまり知らないらしいね。」

「ええ。」

「君にとっては特に憎い相手であろうに、何故?」

「憎いからですよ。アンチクショウ達の情報をわざわざ調べる気にも、頭に蓄える気にもなりませんでした。こうなってはそういう態度を後悔していますが、しかし話が急でしたのでね。船出までの僅かな期間の内は、色んなものを精算したり準備したりするのに忙殺され、結局殆どアンチクショウについては勉強出来ていません。」

「それは、良くないな。」

「そう、良くないんですよ。だから、あなたが教えてくれませんか、ヴェロ? 恐らくあなたは、民間人の中で最もミネルヴァに詳しい男なのでは?」

 清潔過ぎる男は笑いつつ、

「まあね。単に仕事付きあいをしているというだけではない。僕は彼女の自伝的作品の編輯も行ったんだ。つまり、結局その本編に取り入れなかったエピソードまでも一旦聞き及んではいる。だから、相当に詳しいよ。彼女の過去にも、現在にもね。」

「そりゃ有り難い。そして、その未来は我々の手によって封じられるわけですね。」

 ヴェロは好ましそうに頷いて、

「では、何から教えようか。」

「ヤツの、〝氷刃〟のスペックというか、戦闘能力というか、まずはそこが一番大切でしょうね。」

「それもそうだね。では、まず君は、氷刃ことミネルヴァ・ララヴァマイズ軍務次官の銅像をさっき見たと思うが、」

「ええ、そりゃ。」

「あそこにある銅像は、建立当時とは言え、それぞれのモデルの人物をかなり正確に再現しているんだが、君は氷刃のそれを見てどう思った?」

「どうって、まあ、……細い女だなあ、と。」

「そう、彼女、ミネルヴァは、普通の人間からすればかなり痩せている。」

「普通の人間、というと?」

「言葉の定義にもよるんだが、氷刃は、人間ではないんだ。」

 俺は目を見開いた。

「馬鹿な! あの女が魔獣だというのか? 魔獣が、世界をどうこうすることが出来る力を持つ軍のトップに居るというのか?」

「いや、そうではない。たとえばそうだな、馬と驢馬って居るだろう? アイツらは良く似ているし、実際その間で仔を儲けることも出来る。しかし、その馬と驢馬のハーフである騾馬は、子孫を残すことが出来ない。つまり、正常な生物ではなくなってしまうんだ。これは、馬と驢馬が良く似てはいるが別の種族であることを意味している、と、生物学者たちは言っている。

 つまり、これと同じことだよ。我々が馬だとすれば、ミネルヴァの出身国である〝ハーゼルモーゼン〟に住まう者たちは、驢馬なんだ。良く似てはいるし、実際普通の人間と全く同じようにコミュニケーションを取ることも出来る。しかし、生物的なメカニズムが異なるんだ。」

 俺は納得して、

「ふぅん、成る程、」

「まあ、そういった畜獣とちがって人間では実験調査が出来ないから、本当に我々常人とハーゼルモーゼン人が異なる種族なのかどうかは、まだ分かっていないのだがね。とにかく、別の生き物と言われても不自然の無いくらいには性質が違っているんだ。」

「で、具体的には、どう違うんです?」

「たとえばそうだな、ケイン君、君の身長は幾つだい?」

「――――。」俺は、174 cmに相当する値を述べた。

 ヴェロは目を少し大きくして、

「これは奇遇だね。ミネルヴァ将軍殿と全く同じだ。」

「全く嬉しくないですね。」

「で、君の体重は幾つかな。」

「ええっと、最後に量った時には、――――。」俺は、72 kgに相当する値を述べた。

 編輯者は、俺の頭から足許までを眺めてから、再び目を合わせつつ、

「少々重いと思ったが、成る程、鍛えている分か。」

「まあ、無駄な肉を付けた憶えはないですよ。それでヴェロ、あなたは何が言いたいのですか?」

「ああ、そうだった、そのミネルヴァの体重なのだがね、――――。」

 俺は訊き直した。

「何ですって?」

「きっと聞き間違えではないよ、観念するんだケイン。ミネルヴァの体重は、確かに、――――。」

 俺は信じられなかった。

「馬鹿言え! 俺の三倍だと!? あのがりがりの体形で、いやそもそも、まともな人間でそんな体重有り得るかよ!」

「そう、そこだ。やはり彼女たちは、()()()()()()ではないのだよ。彼女、というかハーゼルモーゼン人はね、筋肉の作りが通常の人間とは異なっているらしいのだ。同じ体積の筋肉でも、何倍、もしかしたら何十倍の重量、そしてその重量の更に何倍かの筋力を誇る。だから、普通のハーゼルモーゼン人は、我々からすると病人としか思えないくらいに痩せ細って見えるんだよ。筋力がまるで無いように見え、しかし実際には凄まじい筋量を誇ることによって脂肪が淘汰されるが故にね。彼女、ミネルヴァのように『痩せ気味だなあ。』と思わされる程度の体格は、ハーゼルモーゼン人においては凄まじい筋骨隆々となるんだ。」

 俺は少し間を置いてから、

「成る程、それが、あの氷刃の化け物じみた身体能力の秘密なわけですか。」

「そう。きっと彼女は、世界最強の筋力を持つだろう。ハーゼルモーゼン人の筋肉量に男女差が殆どないことと相俟ってね。」

「揚げ足取りかもしれませんが、その、ハーゼルモーゼン国に、つまりハーゼルモーゼン人が大量に住まう土地に、ミネルヴァを越える化け物が居る可能性はないのですか。」

「考え難いね。」

「何故です?」

「それへの説明には、そもそもハーゼルモーゼン人が何故そのような体質を得ることになったのかを語らねばなるまい。ケイン君、君はハーゼルモーゼンの気候を知っているかな。」

「いえ、全然。」

「あの国は極端に北に寄った島に存在していてね。早い話が、年中寒いんだ。君や僕が暑い思いをしている日でも、寒い思い日をしている日でも、ハーゼルモーゼンは変わらずに寒い。それも、考えられぬほどに。」

「それがどうかしましたか。」

「でだ、生物が寒さに対抗する術は、普通三つあるんだ。まずは巨体化だ。大柄になれば体積の割に表皮面積が小さくなるから、つまり、保熱力にたいして放熱力が小さくなるから、寒さに強くなる。

 次にあるのは毛だ。寒がる人間が毛皮を纏うことからも分かるように、皮膚に大量の毛を生やすことは、やはり寒さへの対抗策になる。」

「しかし、そんなものは獣だからこそ、しかも長年寒さに耐えるように進化した獣だからこそ可能な話でしょう。幾ら俺達と体の作りが違うとは言え、ほぼ人間であるハーゼルモーゼン人とやらに、そんな芸当が、」

「そう、不可能だ。しかし、第三の手段は、われわれ人間もそれなりに行ってきたものなのだよ。それは、脂肪を蓄えることだ。毛を纏うのと同じように、熱を逃しにくくなる。」

「ああ、成る程。太りやすくなるだけならばきっと可能ですね。」

「その通り。実際、ハーゼルモーゼンとは違う寒冷地に住む、とても肥満体質になりやすい人種が知られているよ。彼らは、完全に人間だがね。」

「そりゃよかったですがね、ヴェロ。しかし、ミネルヴァのどこが肥満体質なんです?」

「ああ、だから僕はこう言いたかったんだよ。ハーゼルモーゼン人は、これら他の生物が取ってきた三つの対抗手段、それらとは全く違う独自の手法で寒さに耐えて来たんだ。」

 ここでヴェロが言葉を切ったので、仕方がなく俺が、

「それが、異常な筋肉量ということですか。」

「その通り。他の耐寒手段が概ね放熱を防ぐことを考えているのに対し、ハーゼルモーゼン人は、発熱力を高めることを考えたんだ。ああ、いや、実際に誰かが考えたわけではなかろうが、とにかくそうなった。あの国の、特定の穀物や海獣が異常に豊かであるという地理条件を活かし、多大なエネルギ消費を負ってでも、彼らは筋力を只管増強する道を選んだんだ。あの寒過ぎる土地で生き延びるべく。」

 俺は少し考えてから口を開いた。

「成る程、もしも充分な肉やパンが喰えるのであれば、筋力が一番望ましいのかもしれませんね。何せ、脂肪や毛と違って、役に立ちますから。

 そして今の俺は、そのお役立ちによって苦しめられている、と。豊かな筋力に裏付けられた凄まじい身体能力を持つ、ハーゼルモーゼン人を殺めないといけない。」

「そう。ああ、で、ようやく君の質問に答えられるが、その様な理由があるのでね、本国に住まうハーゼルモーゼン人の筋力は、一定のところで止まってしまう筈なんだよ、寒さによってエネルギを消費した余りで筋力をつけるのだからね。だから、この温暖な都市に移り住んだ、しかも七十年近くも老いずに鍛練を続けているミネルヴァに対抗し得る筋肉量を蓄えたハーゼルモーゼン人が本国に居るとは考え難い。」

 俺は眉根を寄せて首を振りながら、

「ったく、忌ま忌ましいですね。まるで歴史のあらゆる機微が、我らが仇敵、ミネルヴァ・ララヴァマイズの体を逞しくするために働いて来たかのようだ。

 ああ、それで、ハーゼルモーゼン人における、他の身体的特徴は何かありますか?」

「そうだな、たとえば、さっき君はパンがどうだと言ったけれども、彼らは殆ど穀物を()()ないんだ。」

「ん? では、どうするのです。」

「全て蒸溜酒にして、()()()しまうんだよ。清浄な水が手に入り辛い土地らしいし、あとは、暖を取るのにも都合がいいのだろう。」

「ああ、成る程。」

「と言うわけでだ、ハーゼルモーゼン人は異常に酒に強い。無限に酒を飲んでも決して酔わないだろうとすら言われている。また逆に、一定の間酒類を取らないと体調を致命的に崩すことで知られているな。」

「お? じゃあ、ミネルヴァが酒を手に入れられないようにすれば、あの女を殺せるわけですね。」

「そりゃそうだが、……しかし、考えてみてくれケイン君。浮浪者や貧者ならともかく、最高級の軍人であるミネルヴァからどうやって酒を取り上げるんだ。凄まじい財力があるだろうし、また、そういう事情がある()()なのだから、もしもの場合には国なり軍なりが総力を上げて酒を用意するだろうさ。決して死なせるわけにはいかないのだから。」

 俺は顳顬の辺りを搔きながら、

「成る程。それじゃ寧ろ、酔わせての隙を狙えないだけ、その飲ん兵衛体質は不利に働きますね。参ったねこりゃ。」

「あと強いてハーゼルモーゼン人の特徴を挙げるのならば――まあ、挙げようと思えば幾らでもあるんだが――特に言うならば、彼らは極端に寿命が短い。長くとも、四十台半ばで心臓を壊して死ぬ。」

「肝臓じゃないのが恐ろしいですが、まあ、異常な筋力に対して心臓が持たない、ということでしょうかね。」

「そうだろうな。つまり、ハーゼルモーゼン人は、寿命と引き換えに凄まじい戦闘力を得ているともと言えるわけだが、」

「あの忌ま忌ましい氷刃、ミネルヴァの奴は、〝不老術式〟によって老いを免れているから、短命を返品してその戦闘力だけを頂くことが出来ている、と。……ああ、なんというこったい。

 しかし、良くもまあ、そんなに短命な種族が淘汰されずに生き残っていますね。」

「種族間の生存競争において、短命はそれほど不利に働かないと思うがね。四十台から子供を作る女はそんなに居ないだろうし、そもそもああいう極寒地に済む民族はしばしば姨捨、つまり、喰い扶持を稼げなくなった老人を殺害する習慣を持っていたりするものだ。」

「そりゃ残酷なことで。」

「喰うものが限られるのだから仕方ない。そして、ハーゼルモーゼンではその姨捨の手間が省けるとも言えるだろう。」

「ふむ、成る程、そう聞かされてみると、短命種族だからこそ生き残ったことも有り得るわけですか。」

 ヴェロはちょっと膝を組んで、両手をそこに乗せた。

「さて、()()については、ひとまずこんなところかな。」

 俺は、この清潔過ぎる男の言葉で肝腎なことを思いだし、

「ああ、そうか。俺達は今、()()()ミネルヴァの話をしているのでしたっけね。」

「そう、それも、世界で最大量の魔力の保持量、出力を誇るであろう彼女についてだ。」

 俺は溜め息を一つついてから、

「ったく、どこまでも忌ま忌ましい女だ。ではヴェロ、その、この世で最も力強い魔術師の伎倆についてもさっさと教えて下さいよ!」

「ああ、すぐに教えよう。何せ、後がつかえているからな。」

「ん? つかえている、とは?」

「そもそも、ミネルヴァについて教えてくれと言ってきたのは君のほうなのだよ。つまりそれらは、僕にとって想定外の講釈なんだ。さてケイン君、僕がわざわざあれ程焦らせてまで、無意味に君を、ミネルヴァに引き会わせる十日も前に呼びつけるだろうか。」

 俺は納得して、

「ああ、成る程。で、これからの十日間、俺に何をさせるつもりなんです?」

「いいか、ケイン君。()()()()()()()において、右も左も分からない若造なんかを補佐官に推挙するわけに行かないだろう。ああ、君が()()()()に来たこともないということはミネルヴァに白状してあるから、幾らか常識が抜けていても許されるだろうが、しかし、実際に仕事が出来ないようでは困るのだ。『カッツェヌトに二泊の出張に出るから、移動と宿泊の手配をしろ。』などと言われて、毎度毎度、カッツェヌトとやらがどこなのか分かりませんし、ボロ馬車以外の交通手段も知りません、では、あまりにも職務に障る。だからケイン君、君は今から懸命に学ばないといけないのだよ。ミネルヴァが君の無知を、辟易しつつも許してくれる程度に至る為に。」

 俺は眉の間に軽く皺を刻みながら、

「やれやれ、じゃああれか。俺はこの部屋に缶詰めにされて猛勉強させられるわけですね。」

「それでは、やはり呼びつけた意味があまりないだろう。出来る限りそこら中に連れ回して、()()()()の空気を吸わせるさ。ただ、そうした残りの時間は、確かにここで座学に勤しんでもらうことになるだろうね。」

 俺は観念しながら、力なく首を振った。

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