零式艦上戦闘機
謎の雷撃を受け、艦隊の80パーセントを失った第一護衛艦隊群。残艦はレーダーは回復したものの、衛星はロストしたままだ。そんな中、旗艦ひゅうがにこんごうの士官数名が集められ、緊急会議が開かれていた。
「さて、先ほどの雷撃で、一瞬にして、わが艦隊は壊滅したわけだが…。一体どこの国からだ。あのテロ国家が潜水艦をなんてわけないよな。」
「全くわかりません。我々の判別不能の音紋ということは中国、韓国、北朝鮮、ロシアどこでもないということになります。秘密裏に新造艦がなければですが。」
「アメリカから新造艦なんて話は聞いてないな。じゃあいったいどこなんだ」
「我々の対潜能力を超える性能を持った潜水艦ということか。そんなことが…」
彼らが驚くのも無理はない。日本の対潜能力は世界1ともいわれ、アメリカでさえも一目置く存在なのだ。
議論は行き詰まった。誰も何もわからなかった。
そしてまた、こんごうからの通信が入るのであった。
「レーダーに感。小型レシプロ機。200ノットで本艦隊に向け航続中。距離200。本艦隊接触まで30分。」
「レシプロか。沖縄から飛び立った民間機だろう。一応監視しておけ。」
「了解」
司令官山本が迅速に指示をだしまた会議が始まった。
「なんにせよ、市ヶ谷には報告しなければなりませんな。事態発生からもうすぐ30分。いい加減報告しないと…。」
「そうだな。市ヶ谷につないでくれ」
山本は重い腰を上げ、本部の市ヶ谷に指示を仰いだ。
「つながりません。通信不可」通信士が申し訳なさそうに言う。
「なんだ。まだ復旧せんのか。」ため息とともに山本は席に戻る。
そんな時、またしてもこんごうから報告が上がる。
「レシプロ機ロスト。」
「なんだと。どういうことだ。墜落か?」
「わかりません。急降下と共にロストしました。おそらく故障によるものかと。」
「災難は続くもんだな。シーホークを飛ばせ。ただちに救助だ」
山本が指令を下すと、艦長の岡本が館内に指示を出す。
シーホークが飛びたち、周辺海域についたころ、シーホークからの報告が上がる。
「こちら、シーホーク。墜落したのはゼロ戦と思しき帝国軍戦闘機。繰り返す、墜落したのはゼロ戦。」
シーホークのクルーたちは目を疑い、ひゅうが並びにこんごうの乗務員は耳を疑った。
「ハリウッドが作った模造品ですかね。ゼロ戦なんて…」
「そんな機体が単独飛行なぞするわけなかろう。まずは救助だ。乗組員の救助を報告しろ」
岡本は混乱をこらえ、無線に向かい「報告せよ」と一言発した。
「乗員は1名。旧海軍の制服を着ています。意識無いものの生存。」
報告を受け、艦内はまたしても混乱に包まれた。
「乗員のひゅうが輸送を許可する。帰還せよ。」
「了解。あと、艦長。先ほど沖縄のラヂオを傍受したのですが。」
「それがどうした。」不思議そうに艦長が問う。
「ニュースで菊水作戦が実行されていると、繰り返し報道されています。帝国軍の沖縄防衛は完璧だと。」
「ドラマか何かだろう。早く帰還だ。急げ。」
艦長の中にある仮説が生まれた。そして、シーホークからの報告でその仮説に確信を持ちつつあった。