謎の雷撃
2015年1月ある邦人ジャーナリストがテロ国家に拉致された。犯人グループからの要求は200億円にものぼる身代金。時の首相、伊部は自衛隊に邦人の救出命令をだし、野党並びに市民団体からの抗議を受けながらも、海上自衛隊第一護衛隊群は旗艦ひゅうが以下八艦と共に横須賀港を出港していってのであった。途中、沖縄本土に寄航し救出作戦用のオスプレイをひゅうがに積み込む。沖縄までは平和な航海ができるはずだった…。
「歴史的瞬間だな。まさか日本がこんな強硬手段をするとは。敵さんもさぞ驚きだろう。」ひゅうが艦橋でひゅうが艦長の岡本は誰にというわけではなく口を開いた。
「全くですね、艦長。私が防大を出て早幾年ですが、あの時はこんなことになるとは…。」副長の宇野が不安たっぷりに答えた。
もちろん、この艦隊の中に不安を抱いていない者などいない。しかし、管理職ともある副長の弱気な一言に護衛艦隊司令長官の山本は少し顔をしかめながら言った。
「これ副長。君がそんなに弱気でどうするかね。間もなくここ沖縄を出る。気を引き締めなさい。」
艦橋はまたしても緊張に包まれ、沈黙していった。
そんな沈黙と各隊員の談笑が交互に続き、沖縄を出て10時間が経過した頃、イージス艦こんごうからの報告がひゅうがの艦橋を氷つかせた。
「魚雷音聴知。210度高速接近。雷速46ノット。距離4000。接触まで2分30秒」
「魚…雷…。4000と…。なぜそこまで気づかなかったんだ。」
「デコイ発射。全艦即時退避となせ。シーホークを飛ばし対潜哨戒を厳となせ。」
「了解」
激しく指令が飛び交いどんな敵からかもわからぬ攻撃に各員震えていた。
「音紋解析はできないのか?」
「聞いたこともないスクリュー音です」「音紋解析不可」
「距離2000」「距離1000」
そのとき、激しい揺れが船を襲った。
「なんだ?まだ距離はあったはずだぞ。」「被害状況を報告せよ」
「レーダー探知不可」「衛星ロスト、GPSダウンします」
「当たってはいないのか?なんだ。何が起きている。」
混乱の中一つの報告が入った。
「僚艦をロスト。こんごう以外通信不可」
「なんだと…。目視にて確認せよ。シーホークとの通信は?」
「目視でも確認できず。この海域にはこんごうと我々以外存在していません。シーホーク通信不可。ロスト。」
一体何が起こっているのか。混乱に満ちた艦内。
第一護衛艦隊群の運命は。