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初心者講習会 座学

直斗達を包んでいた光が消える。

直斗達の耳に多くの人の声が聞こえ、目の前には多種多様な人種にそれに対応している揃いの制服を着た人達がいた。


「ここがギルド?お父様に聞いていたとおりね」


「すごいです」


目の前の光景に目を奪われている氷依と魅砂。

花は氷依の後で周りを警戒している、直斗も辺りを見渡しどうしようかと頭を悩ませる。


「あんたら初心者か?」


不意に直斗の隣から男性の声がする。

驚いて声のする方へと顔を向ける一同。


「?、言葉が通じないか?」


「いえ!通じてます」


「ん。そうだろう、そうだろう。で、あんたらは初心者パーティーだろ?」


「はい、わかりますか?」


「ああ、初めての奴は大抵ここを見て動きが止まるから分かりやすい」


気さくに話しかけてくる男性を見るとずいぶんと背が低い、最初に見たときは腰を下ろしているのかと思ったが直斗の半分くらいの身長で壁に背を預け立っていた。

子供にしては声が渋いので、改めてよく見ると40歳ぐらいの顔をしている。


「あの、あなたは?」


「ん、俺か?おれはここであんたらみたいな初心者パーティーを案内する係の者だ」


「!すみません」


「?、別に謝られることはされてないが、あんたらの国ではそれが普通みたいだな。殆どの初心者パーティーがお前のような対応するから慣れたがな」


そう言うとニヤリと笑う。


「はあ。そうなんですか……………」


「まぁ、こんなとこでいつまでも居るのは時間の無駄だぞ、早く講習会を受けてこい」


「????」


「ん?ああ!まずはこのマズウェルのギルドで初心者用の講習会を受けてもらう。異世界でのやり方や注意点など教える奴が要るから習うといい。俺はここを動けんでなほれ、あの右奥に2階へ行く階段があるから上へ行って1番窓口の者に言えばいい」


そう言って男は右奥の階段のある方へ指を指す。

直斗達は男に礼を述べて言われたとおりに進む。

人混みを避け壁沿いに階段の方へと進む、ここにいる人達のほとんどが防具など戦闘装備に身を包んでいる。


キラキラと光る装備を横目に見て直斗達は階段を上がる。

氷依や魅砂は口数が少なくおとなしく直斗の後ろをついてくる。

最後尾に花さんが着き周りに気を配っている所を見ると萎縮してはいないようだった。

階段を上がり2階に出る、1階と違いまばらな人影に直斗はほっとする。

先程言われたように1番の窓口を見つけて職員さんに話しかける。


「あの、下で講習会を受けるようにと言われたのですが」


直斗達は1窓口の女性職員さんに告げると職員さんがはいはいと窓口から何かの用紙を差し出してくる。


「初心者さんですね、ではこの用紙に必要事項記入して3階の受付にその用紙をだして下さいます」


「え?」


「後ろのテーブルに記入例がありますので、それを参考にしてくださいね」


満面の笑みで言う職員さんに直斗はなにも言えずにおとなしく指示されたテーブルに行き見本を見ながら渡された用紙に記入していく。

用紙にパーティー名とリーダーの名前に参加人数などどっかで見たような内容に首を捻りながらも直斗は全ての欄を記入する。


「終わった?、次は3階ね。早く行きましょう」


氷依が直斗の手元を見て確認すると3階に行く階段へと歩き始める。

先程とは違いだいぶ元気がでてきたようだ、魅砂も顔色がよくなっているので慣れてきたようにおもう。


直斗達が3階に着くとそこは数多く部屋があるフロワーだった。

階段の片隅に受付らしい職員さんが2人いるだけの質素な受付、後は部屋だけがある。


「なによこれ?」


「部屋ばかりですね?」


「……………とりあえず受付があるから行ってみようか」


直斗達はとりあえず目の前の受付に行ってみることにした。

2人の若い女性の職員が直斗達を見て笑顔で迎える。


「ようこそ初心者講習会へ」


そう言うと職員さんが頭を下げる。

直斗は笑顔の職員さんに恐る恐る用紙を差し出す。

ショートカットの黒髪の職員さん用紙を受け取り頷く。


「はい、結構ですよ。リーダーの光羽様、講習会は2時間程度かかりますがよろしいですか?」


職員のお姉さんが直斗を見て確認してくる。

リーダーが男でパーティーで男は直斗ひとり。

当然の結果だろう、直斗は後ろを振り返り氷依を見ると彼女が頷く。


「はい、お願いします。ちなみにダメだった場合はどうなりますか?」


「はい。強制ではありませんので時間のある時に受けてくれればいいですよ。勿論、受けないという選択もあります。その場合は1階で登録だけしてあとは自由に行動して下さい」


ニッコリと笑顔で言う職員さんに直斗は呆気に取られるも、その回答に背筋が寒くなる感覚が走った。


(なるほど、講習会を受けない馬鹿はいないと思うけど、もしいたらどんな事態になっても自業自得か。……………まぁ僕達に関係ない、情報の大事さを知らない者はいないしね……………たぶん)


「それでは皆様は階段側の2番の部屋でお待ち下さい。講習担当の者が説明しますので部屋の中でお待ち下さい。」


受付のお姉さんに言われたとおりに直斗達は階段側の2番の部屋に入る。

部屋の中は狭く四畳半ほどのスペースだ。

縦長の机が真ん中に1台、教壇らしき机に黒板と直斗には見慣れた光景だった。


壁際に立て掛けてあったパイプ椅子を人数分もっていき並べる。

右から氷依、花、直斗に魅砂と座り、講習を担当する職員を待つだけとなった。



部屋で待つこと10分程で部屋のドアが開く、首だけをドアからだし中に直斗達がいることを確認してから入ってきた。


「お待たせ!初心者講習を担当するミナホです。独身で25歳です…………………チッ、ガキが1人か……………なんてね冗談ですよ?」


かなりテンションの高そうな女性が教壇にたち直斗達を見渡す。

直斗に視線を合わせた時のミナホを直斗は絶対冗談じゃないよあの眼はと内心でビクついていた。


「えー、掴みは失敗したみたいですけど宜しくお願いしますね」


「はい!!!!お願いします」


直斗は揃って頭を下げる。

それを満足そうに見つめミナホが頷く。

身長は魅砂より頭ひとつ分は高いだろうか、それでもやや低い部類だ。

職員用の制服を身に包み黒髪のポニーテールにしている。

くりっとした眼は愛嬌があるので先程の言葉も下品とは受け取られない感じがする。

そして直斗がもっとも視線を集中させたのが彼女の胸だ。


(デカイ!あの身長であのサイズ、さすが大人の女性だ。スイカぐらいありそうだ……………)


「直斗様、どこを見つめているのです」


「えっ」


直斗が我にかえり周りに見る、氷依達は前を見ているものだと思っていたが、全員が直斗を見ていた。

氷依と花は侮蔑を含んだ視線を、魅砂は心配そうにこちらを見てるしミナホはニヤニヤと笑いながら胸を強調している。


「すいません、おもわず魅とれ……………ボーとしていました」


直斗は慌てて立ち上がり頭を下げた。


「うんうん。いいよいいよ、若いね少年。講習会が終わったら食事でも……………いや、なんでもない。はじめるよ」


気分を良くしたミナホが直斗に向けてアプローチを開始しようとしたとき、直斗の隣から殺気をだすメイドを見てミナホは慌てて講習会をはじめた。


「えっと、まずはこの施設から説明します」


ミナホは黒板に向かい書きはじめる。


まずここは火の国マズウェルの首都マズウェル。

人工5千万人以上いる大都市らしい、国王を頂点に頂く社会構図だった。

ようは今の日本と同じだと直斗は理解した。


そしてこの施設はマズウェルの冒険者ギルド。

しかし直斗達の職種はハンターとなるらしい、何故かとミナホにたずねると冒険者は自由に活動できるが、直斗達には依頼以外の活動には制限がかかるためらしい、その他にも細かい規定らしき項目があるらしいのだがミナホは覚えなくても問題ないと言った。

そして最後にミナホさんは直斗達にこう言った。


「ハンターに嫌気がさしたら冒険者になればいい、日本には帰れないけど、この世界も良い所よ」と。


黒板の文字を消しミナホが次にこの世界の通貨を教えますと言って書き始める。


「では皆さんのギフトからこのギルドを検索してホームページにある初心者の歩き方をダウンロードしてください」


そう言われ直斗達はスマホを取りだし検索。

簡単にマズウェルの冒険者ギルドのホームページにアクセスして言われたとおりにダウンロードのする。


「へ~、皆さん携帯型ギフトなんですね。私もです装着型は頭が痛くなって苦手です」


携帯型と装着型、前者がスマホなど直接増産するタイプ。

装着型は脳から目にと映像が表示されて手を使わず意識して操作するタイプになる。

慣れれば装着型の方が良いらしいが人それぞれである。


「はい!黒板に注目して下さい。この世界の通貨は円です。どの国、どの世界でも共通貨幣ですので覚えてくださいね。現物がこれです!」


そう言うとミナホはきれいに並んだ通貨を直斗達に見せる。


「へぇ、それがお金ね。初めて見たわ」


「わ、私もです。ピカピカですねぇ」


「………」


ミナホは一通り見せてから、説明をはじめた。


「まずは円の種類を覚えて下さい。先程ダウンロードしていただいたファイルを開いて。そこにお金の使い方があるので見ながら説明します」


ミナホは円を順々に手に取り説明する。

1円から1万円と価値が高くなり、1円が5枚で5円。1円が10枚で10円とミナホは丁寧に説明していった。


「まさか算数ができない人はいませんよね?勉強はしてますよね?」


「当たり前よ!花と一緒に勉強したわ」


「はい。お嬢様」


「私も裁縫するのに計算は必要だったので覚えました」


「僕はゲームで」


「あら!皆さん優秀ですね。大抵は知らなくてスマホの電卓機能で教えるのですが必要なさそうです。では次に簡単な試験をしましょう、お金に関するテストですのでやってみて下さいな」


机の上に配られたテスト用紙を直斗は見つめる。

問題は全部で五問。

本当に簡単な問題だった。


例えば1個10円のリンゴが5個あります、合計で何円でしょう。とか。


直斗はスラスラと問題を埋めていく、最後の問題はやや難しく作ってあったがネトゲーで鍛えられた直斗には問題なかった。


全ての答えを書いて直斗が周りに仲間を見る、隣の魅砂と目が合うと余裕の笑みを浮かべていた。

ならばと氷依と花さんを見ると花さんは最後の問題で手が止まっていて、氷依はう~んう~んと唸りながら難しい顔をしていた。



「はい!そこまで」


「えー!ちょっと待って~」


ミナホがパンと手を叩きテスト用紙を回収していく、それを氷依が焦った声でミナホが回収したテスト用紙を未練がましく見ていた。


パラパラと用紙を捲りミナホがテスト用紙を見つめる。

氷依以外は涼しい顔で待っているのだが、氷依はオロオロと落ち着きがない。


「氷依、まさかだよね」


「!、あっ!当たり前じゃない余裕よ!」


絶対に嘘だ!と直斗は思ったがそれは言わない。

長年の経験で必ず後で手がとんでくるからだ。


「うん。やっぱり優秀ね。みんな合格です!」


氷依の明らかにホッとした表情。

魅砂はため息ひとつ。

花さんはいつも通りに無表情で直斗は当然とばかりに頷いた。


「うん、これなら次にいこう。次はこの世界ルールや場所など地図を見ながら説明します」


ミナホは全員のスマホにダウンロードされたこの世界の地図を開かせる。

六芒星のように配置された島の地図がでた。


「まずここは火の国、地図だと南の方に位置します。その他。水、土、風、木、光、闇の国があるのがわかりますか?」


「はい!!!!」


「闇の国は中央に位置していて渡航制限がしかれているので行けません」


「なんでよ?」


「闇の国は魔族が支配しています。とても強く濁った空気に人は耐えられないのです。もし行くなら装備を充実しなくてはならないでしょ」


「ふ~ん。まぁいいわ、行く予定は無いしね」


「他の国は自由に移動していいですよ。船に飛行機と移動手段は豊富です、値段が高いけど。次に火の国をクリックしてください」


ミナホに言われクリックすると、火の国の地図が表示される。


「ここが首都マズウェルです。幾つか町や村がありますが全て鉄道で繋がっていますので楽ですよ」


「鉄道?」


「はい。知りませんか?鉄でできた乗り物です」


「へぇ、見てみたいわ」


「はい!見たいです」


「そうですね、お嬢様」


「………」


パッと目を輝かせる3人とは別に直斗の表情に変化はない。


「その他にも色々と交通主段がありますので、初心者の歩き方を参考にして下さい。次にこの世界には様々な人種が存在します、あなた方の世界にもいる獣人族や妖精族など色々です。そこの貴女も獣人族の血が入っているのですね」


と魅砂の頭の狐耳を見つめミナホが訊ねる。


「え?え?」


魅砂はいきなりの事に困惑気味。ミナホは当然、肯定されると思っていたのが違う反応だったので首を傾げている。


「ミナホ様、それ以上はご容赦を」


花さんが助け船をだすとミナホは何がいけなかったのかわからずも頷く。

魅砂が花さんに感謝の視線を送る。


「まぁ、色々な人がいるので相手を尊重して行動して下さい。……………とこれで1時間たちましたね、10分の休憩後に実技の講習に移ります」


ミナホはでは10分後にまたと部屋を出ていく。短いような長かったような座学が終わった。




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