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第一章〜「ミステリー研究会」〜

5月8日。月曜日。朝。

俺は疲れきった体と消沈した気分で学校に登校していた。

このゴールデンウィークはまさに掃除の嵐だった。片付けても片付けても終わらない無限地獄。しかもほとんど事務所に泊まりっぱなし。

俺の親が普通の親ならば、この事について何かと反論が出るだろうが、俺の親と夜井さんはちゃっかり意気投合してしまい、親公認のアルバイトになってしまった。せめてお金をもらっていれば文句はないが、4月の事件でかかった費用分、仕事をしろと夜井さんに言われてしまい、きっちりバイトをしている。つまり一銭も貰ってはいない。

・・・はぁ。辛いな。まったく。

だが苦しい事があれば、嬉しい事もあるようだ。

俺の隣にはウチの制服を着た桃原空菜がいる。ウチの学校の制服は藍色を強調していて男子のブレザーと女子のスカートがその色だ。よくある制服と言ってもおかしくない。デザインも普通すぎるからな。ただ着ている人によって制服ってのは悪魔と天使になるらしい。俺の隣にいるのは天使と言っても過言ではない。

「学校って楽しいよね?」と空が突然話題を提供してきた。

「まぁね。空はめちゃくちゃダチ出来たから楽しいしょ?」

「うん!」と美の女神如くの笑顔を俺に向けた。と意味のない会話をするのが俺と空の会話だ。だが俺にとっては楽しいもだ。


ただ空は、『あれ』さえ治せば完璧なんだけどな・・・



「なぁ、聞いたか??例の自殺事件?ニュースでやってたよな?」

「そうそう、こえーよな。自殺なんてなんでしたんだろう?」

「いやよ・・・。だって・・・・」

「この学校の近所で・・・・」

など

俺と空が一緒に教室に入ってみると、例の自殺事件がクラスの話題だった。俺は全く誰が自殺したのも、何故ここまで話題に持ち上がるかも、わかりもしない。

「おは!はじめ、ももちゃん!二人で登校とはラブラブモード全開だなぁ!!」と俺の友達の勝間が話しかけてきた。

「うるせぇ。ちょうど登校時間が一緒なだけだよ。」

「そうだっけ?だってわた・・・」と私の家で泊まって一緒にここまで登校してきたんだよと間違いではないが、大きく勘違いされる台詞を全力で俺は空の口を塞いで全力で止めた。


説明をもう一つ。この無邪気な美少女高校生はかなりの天然である。初対面の時はそのようなオーラは一切なかったが、今じゃこうだ。言わなくてもいいことをポンポンと言ってしまう。なかなかの困り者だ。いつからこうなってしまったのだろうなぁ・・・。これも夜井さんの影響か?


「分かった。分かった。どうせ聞いても教えてくれないだろう??そういえば二人は例の事件知ってるか??」

「ああ・・・。えっとニュースでやってたやつ?それがどうしたんだよ?」

「いやウチの学校からめちゃめちゃ近いじゃん!」

「駅でいう二駅ぐらいの距離だぜ?何を大きく話題にしてんだよ?」

「それがよ。何でも噂だけど自殺じゃなくて殺人らしいぜ?」

「ふ〜ん」

「はぁ!!何だよ!!お前のそのリアクション?!もっとびっくりしろよ!」

「びっくりしたくても噂じゃあ・・・」

「ももちゃんも驚きだよな?!」と話題を振る。

「えっと・・・スゴく恐いね!」と笑顔で突き返す。

「いいよ・・・。どうせ俺は妄想族ですよ〜」と少し涙目になって嘆き始めた。

・・・へこみやがったよ。まぁ誰かの被害妄想が生み出した噂だろうな。と思いつつ、いつも通りの学校生活が始まった。




正直言うが、この時、俺は少しこの自殺事件を気になりだしてはいた。ただ、余計な事に首を突っ込むと痛い目をみるのは自分と理解している。もう二度と危ない目に遭うのはごめんだね。



だがそう簡単に俺を逃してはくれなかったようだ。運命ってやつは。



放課後。つまらない授業を終えて解放感を味わっている俺にある思いがけない人物が俺に話しかけてきた。


「・・・あの少しお話をしたいんですけど・・・」

俺に話しかけてきたのは同じクラスの上木真央。女子であまり目立たない方のやつだ。今初めて話しかけられため、特徴が述べにくいな・・・。背が小さく大人しいタイプというしかないな。


「お、俺?何で?」

「お願いします。大事な話があるんで・・・」上木は小さい声で話す。なんだろう、大事な話って。

「どうしたの?」と今度は空が俺に話しかけてきた

「もしかして告白されてるの?」

と真面目な顔で言いやがった。ちょっと待て。こんなまだ授業終わって間もない時に告白なんてローマ法王でもやらないぞ。

「・・・違います。少しついてきてくれませんか?」

と恥ずかしながら上木は言った。




連れてこられたのはウチの学校の別館にある文化芸棟。教室がある教室棟にある棟で、文化系の部活が活動するための教室がある場所だ。さすが私立というべきか。

ついでに空もついてきた。

「空は先に帰ってもいいよ」

「ダメだよ。ねえさんにしっかり見張っとけって言われるから」

「何で?」

「バイトから逃げないようにって」

・・・俺は信用されてないのかよ。悲しいな。



「ここです。」

そこは文化芸棟四階の一番端にある教室だ。入ってみるとそこには見知らぬ人物が二人いた。

メガネをかけて、いかにも生徒会長のような風格の男が椅子に座り、じっと見ている。

その横に短髪の女子。どうやら体育会系だろ。雰囲気がそんな感じだし。




「こんにちは。いや、はじめましてかな。君の事はちょくちょく耳にしているよ。」

何をだよ。コイツ、嫌なやつオーラがプンプンするな。

「・・・えっと〜何っすか?」

「ごめん。先に自己紹介するよ。私の名前は石山賢二。君と同じ学年でクラスは1組だ。以後よろしく。早速だが本題だ。実は我がミステリー研究会に入って・・・」

「やだ」

俺ははっきりと拒否した。それと同時に上木を見る。コイツ、何で俺をミステリー研究会なんぞに・・・。てかそれだけのために・・・。少しガックリだ。

「まぁ、予想通りの反応だな。さすが荒波君。」

なんだ?こいつ・・・。名前なんか教えてないぞ。気持ちわるいな。

「用がそれなら帰る。一応俺バイトしてるし、時間ないってのは妥当な理由だよな?いきなり連れてこられて入会なんて、宗教勧誘と同じ手口じゃねえか。帰ろうぜ、空。」

「え、いいの??面白そうなのに?」と空が何も分からない顔で答える。

「当たり前だろ?ほら、帰ろうぜ。」こんな気味の悪い部活なんぞ入ってたまるか。





「例の自殺は自殺じゃない。」

コイツも噂を丸呑みしてるのかと思う。だが次の言葉に俺を驚かされた。



「明日、私たちの学校で人が殺される。自殺と見せかけてな。」



俺は教室から出ようとしていた体をこの石山に向ける。そして俺はコイツを睨みつける。

コイツは何を言ってやがる。

「もし、この部に興味が湧いたら、明日の放課後、学校の正門に私達はいる。おそらく学校には入れなくなるからな。」と石山はにやりと笑う。



俺はそんな頓珍漢な言葉を無言で返し、空を連れて、その最悪な場所から出る事にした。















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