必ず逃げ出してやる!
序盤はシリアスっぽいんだけどなぁ……
僕が牢屋に入れられてから一体、
どれだけの時間が経ったんだろう?
ここに居ると感覚が狂っちゃって困る。
話し相手もたまに来る色男さんしか居ないし、
食べ物も美味しくない。
……早まったかな?
そう思った時、足音が聞こえてきた。
色男さんが来たみたいだ。
「調子はどうだ?」
「まぁ、ぼちぼちかな?色男さんは?」
「特に問題はない。……それと私はクルツだ」
色男さん……クルツさんは溜め息をつきながら、
今日の分のご飯を牢屋に入れてくれた。
「いやぁ~いつも悪いねぇ」
「ここで餓死されても困るからな」
改めて自分が生かされてることを実感できるね。
ま、生きてられるなら文句はないんだけどさ。
「……リオニール」
ご飯を食べ終わってクルツさんと雑談していると、
クルツさんが急に辛そうな表情をして僕の名前を呼んだ。
「どうしたの?急にそんな顔して……」
「……」
「クルツさん?」
「……お前の処遇が決まった。
明日、セント・アディナ広場で
お前を公開処刑にするそうだ」
「……そっか」
まぁ、当然だよね。今まで散々貴族達を
こけにしてきたんだから。
それに……僕は獣人だしね。
捕まった時点で最初からこうなることは分かってた。
ここの王様は僕ら異種族のことが嫌いだからね。
「教えてくれてありがとね」
「これからどうするつもりだ?」
どうするつもり?そんなの決まってるじゃないか。
「上手くここから逃げ出してみせるさ。絶対に……ね」
こんなところで死んでたまるか!
絶対に逃げ出してやる!
「……本気か?」
リオニールの言葉を聞いて自然と私の口が開く。
この城にどれだけの兵士が配備されているのか
こいつは分かっているのか?
出来るはずがない。
だというのにこいつは……
「勿論本気さ。僕は戦うことは苦手だけど、
逃げることだけは誰にも負けない自信があるんだ」
「だからこの城から脱出出来ると?不可能だ」
「不可能じゃない。やろうって意思があれば、
どんなことだって出来るんだ。
それを……僕が証明してあげるよ」
リオニールは私の不可能という言葉を否定し、
挑戦的な笑みを浮かべて脱出することを宣言した。
その自信は何処から来るのだろうか?
というかその前に--
「お前、私が一応敵であることを忘れてないか?」
「……あ」
やっぱり忘れてたのか……
「話してみたら良い人だったから
勘違いしちゃってたよ。いやぁ~失敗失敗!」
リオニールは暫しの間カラカラと笑い--
「今の言葉、聞かなかったことにしてください!!」
土下座してきた。
さっきまでの自信はどうした?リオニールよ……
やっちゃったぁぁぁぁ!!
つい調子に乗って脱出を宣言しちゃったよ!
しかも一番しちゃいけない人に!
この人相手に逃げられるわけないじゃん!
僕の馬鹿っ!これで逃げる計画がパーじゃないか!
「……無理だな」
「ですよねー」
これで逃げ出すことが難しくなっちゃった……
トホホ……