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腹ペコ義賊の旅物語  作者: チル兄
第一章 義賊リオニール
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脱出

 部屋から出た僕達は兵士の目を掻い潜り、

 出口を探していた。

 だけど……



 「歩けど歩けど同じ道……

 もうっ!何時になったら出られるのさ!!」


 『この城の造りはどこも似てますからねぇ。

 あ、この道通るの三回目ですよ』


 「え゛!?嘘!?」


 『本当ですよ~だって先程も同じ壁の

 ひびを見ましたからね』



 だったら教えてくれればいいのに……

 内心文句を言いながら歩き続けると、

 分かれ道に辿り着いた。




 「どっちに行こうか?」


 『先程は左に行きましたよ』


 「じゃあ右に--」


 『ですがその前には右に行きました』


 「えぇ~」



 それじゃあ行く道が無いじゃん……



 「どうする?いっそ壁でも壊してみようか?」


 『出来ないことはないですが、間違いなく

 ここに居ることがバレますよ』


 「だよねぇ……」


 まぁ、どっちにしてもこのままじゃ

 見付かっちゃうけどね。



 『この城から出られる方法がありますよ』


 「本当!?」


 『本当ですよ♪しかもとっても簡単です!』


 「おぉっ!」



 ちょっと怪しいけど、ここから出られるなら

 何でも良いや!



 『では、今から私の言う通りにしてください』


 「分かった」


 『まず私を通路の中心に……あぁそこじゃなく、

 もう少し右の方に……はい、そこです。

 その位置で垂直に立ててください。

 あ、まだ手は離さないでそのままで』



 次々に出されるレーベンクルスの指示に従って

 通路の中心にレーベンクルスを垂直に立てる。



 「これで良いの?」


 『はい!では、手を離してください」


 指示に従い手を離す。

 支えを失ったレーベンクルスは

 重力に従い、右に倒れた。



 『右ですね?では、右へ行きましょう!』


 「は?」



 レーベンクルスの言葉に僕は言葉を失う。

 ま、まさかこれが外に出られる方法?


 『どうかしましたか?』


 「どうしましたか?じゃないよ!

 これが城から出られる方法なの!?」


 『はい♪ねっ?簡単でしょう?』


 「確かに簡単だけど、これって

 ただの運頼みじゃん!!」



 いくらなんでもこれはない。

 自分の命がかかってるのに運頼みだなんて……



 「冗談じゃないよ!こんな方法で

  進む道決めちゃって!」


 『まぁまぁっ!不満なのは分かりますが、

 落ち着いてください。じゃないと--』


 「居たぞ!ここだ!」


 「うわっ!?見付かった!?」



 僕の声を聞き付けて、次々に兵士達が

 こっちに向かって来た。



 『だから落ち着いて下さいって言ったんですよ!!』


 「元々は君のせいでしょうが!!」



 僕達は互いに言い合いながらも、

 レーベンクルスを拾い上げ、

 右の通路に向かって駆け出した。





 「ハァ……ヒィ……も、もう無理……」



 ひたすら逃げ回った僕は大きな噴水のある

 広場で大の字に倒れていた。

 いつの間にか空は日が落ち、

 代わりに月が空に上っていた。

 ……随分の間逃げ回ったんだなぁ……



 『マスター!こんなところで倒れている

 暇はありません!早く逃げないと!』


 「無理……もう少し休まないと動けない……」



 レーベンクルスにそう返しながら、息を整える。

 は~しんどいなぁ……

 どうにかして出口を探さなきゃいけない。

 だけどここが何処か分からないだよなぁ……

 これからどーしよ……



 『あの~マスター?本当にそろそろ逃げないと

 不味いですよ?』


 「……分かってる」



 レーベンクルスに促され、身体を起こした瞬間



 「動くな」



 首に剣が突き付けられた。



 「や、やぁクルツさん……ご機嫌はいかが?」


 「最高の気分だ。お前を見つけることが出来てな」


 「そ、そう……それは良かったね。

 アハ、アハハハハ……」



 僕の乾いた声が空しく響く。

 いやいやまさかクルツさんに見付かるとは……

 流石に気を抜きすぎたかな?



 「あのー武器を下ろしてくれると

 嬉しいなーなんて……」


 「……」


 「ごめんなさい冗談です!!

 だから無言で剣を首筋に押し付けないで!?」



 あぁっ!?首筋が切れて、血が出てきた!!

 殺る気満々だよこの人!!

 ……と思ったが、何を考えたのか

 クルツさんは剣を首筋から外し、鞘に戻した。



 「クルツさん、どうして……」


 「……着いてこい。出口を教えてやる」



 クルツさんはそれだけ言って背を向け歩いていく。

 少しの間、僕は呆気に取られていたが

 すぐに正気を取り戻し、慌てて後を追った。





 「あの……一体何処に行くの?」


 「……」



 クルツさんは僕の質問に答えず、無言で歩みを進める。

 そして両手に緑と黄色の宝玉を持った

 古い石像の前で立ち止まった。



 「高そうな宝玉……一個欲しいなぁ」


 「後で両方共くれてやるから、今は触るな」



 クルツさんはそう言って両方の宝玉を取る。

 あの宝玉、貰っちゃっても良いんだ!?

 いやぁ~クルツさんは太っ腹だね♪

 僕が心の中でクルツさんを感謝していると、

 クルツさんは取った宝玉を逆の場所に置いた。

 すると石像が上に動き出し、その下から

 人一人が通れる大きさの通路が現れた。



 「凄い!こんなところに隠し通路があったなんて!!」


 「六十年以上前に作られた王族専用の避難通路だ。

 外へと繋がっている」


 「ほへぇ~流石王族、お金使ってるねぇ」


 「ただの無駄遣いだ。

 実際、一度も使われたことはない」



 あ、使われたことは無いんだ。

 それは確かに無駄遣いだね……



 「無駄話はここまでだ。……行け」


 「うん……あの、最後に聞きたいことが

 あるんだけど良いかな?」


 「何だ?」


 「何で僕に手を貸してくれたの?

 さっきまで捕まえようとしてたよね?」



 さっきまで血眼になって僕を探してたから、

 手を貸してくれることはないと思ってたんだけど……



 「……単なる気まぐれだ。さぁ、行け」



 そう言ってクルツさんは僕に二つの宝玉を渡して

 背を向けた後、鞘から剣を抜く。

 その直後、石像が地面へと戻り始めた。



 「クルツさん!」



 僕の声にクルツさんは振り替えることはなかったが、

 左手の親指を立てて応えてくれた。

 そして、石像は地面へと戻り、

 クルツさんの姿は見えなくなった。

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