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#20 ささやかなひと時、過ごしましょう


 現時刻、午後4時15分。

太陽も少しずつ傾き始め、薄暗い夕闇とともに外から獣のうめく様な声も聞こえ始めている。

 私は部屋の真ん中に鎮座している透き通った小さな石を見た。

ある程度の信憑性はあるにしても、この石に所謂結界のような働きがあるとはまだ断言できない。

つまり、いくらある程度の守備力がある要塞に篭っているとはいえ、完全に安心はできない訳で。

蓮もある程度立ち直ったようだけど、実際は……多分怖いんだろうと思う。

パニックやヒステリーを起こすようなことはないものの、昼からずっと顔が強張っている。

緊張、不安、恐怖の連続から、一転したささやかな安心感。その後に例の映像を見たことで、より恐怖が増したんだろう。

誰もが美並ちゃんのように、単身街に乗り出すような強い人ばかりではないのは分かっているけどこのままじゃまずい。

厳しいようだけど、いざという時に「恐怖に足がすくみました」ではそのまま"死"を意味するからだ。

だから蓮には早いところ恐怖を乗り越えてもらわないといけない。

私ができうる限り守るにしても、絶対に守りきる自身がまだ私にはないから……。

 


 ふぅ、とため息をついて私は現拠点である、ショッピングモール内のスーパーにある部屋を見渡した。

現在この部屋にいるのは私を入れて三人。男どもは隣の部屋に移動している。

蓮はホウキを片手に部屋の掃除、美並ちゃんはソファーに座って、なにやら思案顔をしている。

そして私は、一人五右衛門風呂に向かっているところだ。

この地域もすぐに断水されるだろうから今のうちに精一杯お風呂を楽しんでおきたい。

せっかく蓮やみんなと作ったんだしね。

 五右衛門風呂を見つめる。

今はまだ、水が半分くらい。

供給源は水道で、別にホースを繋いで直にお風呂に水を供給しても良かったんだけど、訓練を兼ねて私の魔法を使うことにした。

前にも試したとおり、やはり液体を操作するのはかなりの集中力、そして魔力を持っていかれる。

こればかりは慣れやアイデア。

私がしているのは透明なホースの中を水が通るようなイメージをつくること。

一連の動作をイメージして魔法を使うと、やはり効率がいい。

集中力が切れると、水が零れ落ちそうになるけど、そこは蓮や美並ちゃんも気を利かせてくれている。

カチコチという時計の秒針の音、蓮がホウキで床を掃く音、美並ちゃんの息遣い、鳥の鳴く声。

あと……少し。


「……──っ、できたーーーー!」


 一人、歓声をあげる。

ようやく湯船に十分な量の水が溜まって、それと同時に立ちくらみのようなものを感じ私はその場にどさりと座り込んだ。


「り、凛音ちゃん!?」


 蓮が慌てて駆け寄ってきたけど、片手を挙げて大丈夫だと伝える。

美並ちゃんは原因が分かっているのか、少し腰を浮かせただけだった。流石。

私はニコリと笑顔を浮かべる。


「いやー、大丈夫大丈夫、ちょっと疲れただけだよ……ふぅ、よし。蓮、立たせて?」


 心配そうな顔で私を見る蓮に両手を伸ばすと、「仕方ないなぁ」とでもいった表情で手を握って引っ張ってくれた。

立ち上がると蓮は私の手を握ったまま、


「凛音ちゃん。あんまり無理したらあかんよ?」


「了解、了解。でもほら、水も入ったし後は暖めるだけだよ」


「もう、そういうことやなくて」


「大丈夫。蓮をおいて死んだりしないから。それよりほら、お風呂沸かさないと。蓮も入りたいでしょ?」


 ここ数日、身体は拭くだけだったらしいので、いくら蓮が可愛いといえど身体の汚れは当然溜まる。

不衛生は病気の下。この状況だ、どう考えても病院が機能しているとは考えにくい。

つまり私たちがとるべき最良の手段は、病気にならないようできるだけ清潔な場所で、十分な栄養をとり、ゆっくりと寝ること。

私がワンコに足を切り裂かれて、今息をしているのは奇跡に近い。

これからは怪我や病気を最大限警戒することにしている。


「さて、木材をいれて……っと、チャッカマンで……あれ?」


「これですか? それにしても改めて凄いですね。私五右衛門風呂なんて初めて見ました」


 点火のための道具を探していると、横からスッと綺麗なおててが現れた。

その手には、新品のチャッカマン。

美少女が握るだけで、何気ない着火器具がこんなにも輝く!


「おおぅ、流石みーちゃん気が利きますなー」


「だから誰が──いえもういいです」


「うん? あ、みーちゃんもお風呂入る? 初五右衛門」


 カチカチとチャッカマンのトリガーを引く。

ニ、三度そうすると、先端からポッと明るい火が点る。


「いえ、私は……今回は遠慮しておきます。二日ほど前に家でシャワーをしてきましたので」


「あ、そうなんだー。う~ん、じゃあ今日は蓮だけにしようか? そろそろ身体が気持ち悪くなってきたでしょ?」


 そう言って、横で良さそうな木材を選別していた蓮に視線を向ける。


「え? でも……」


 予想通り、蓮が遠慮がちな反応をする。

しかし、反論は許さない。

もともとこれは蓮のために設置したものなのだ。


「はいはい、"でも"は禁止。病気にでもなったら元も子もないんだから、今は先輩の言うことを聞きなさい……分かった?」


「凛音ちゃん……ありがとぉな。それじゃ今日は使わせてもらうわ」


「うむ、それじゃ蓮、木材頂戴」


「えっと、これでいいかな?」


「うん、上等。ポイポイポイっと……うん、こんなもんか」


 釜の中で木材が轟々と燃えている。

……ものすごい火力だ。この調子なら一時間もかからないかもしれないな。


さて、しばらくすることもないし、


「夜ご飯でも食べよっか? 二人とも何か食べたいものある?」


 幸い、今のところは食料に困ることはない。

今のうちに贅沢の限りを尽くしておこう。

私は少しだけ困り顔の二人を見ながら、今後の身の振り方に思いを馳せた。


サブタイを10分くらい考えてたけど、別にたいした問題でもなかったから直感で。

にしても、2000字って全くといっていいほど物語が進まない。

まぁ、4000、5000も書ける気がしないので仕方がないですね。

モブ男たちの処遇にも困る今日このごろ。

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