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#17 よく現状を確認しよう

 


 全員が昼ごはんを食べ(食べさせ)終わって、葉山に暖かいお茶を淹れてもらう。

季節は、冬。

暖かいお茶は、身体にも心にも良く染み渡る。



 現在私たちは一つの小さなテーブルを8人で囲っているような感じだ。

ソファー側の面に美並ちゃんが座り、右に私と蓮。左と対面に残りがそれぞれ座っているような図である。


私は熱めの緑茶にそっと口をつけながら、美並ちゃんのこれからのことや、美並ちゃんが見てきたであろう外の情報、それと他全員が現在持ち合わせている情報の詳細な摺り合わせを行う必要がありそうだと思っていた。

先ほどの美並ちゃんの口ぶりからすると、外の状況は思いのほか酷そう──というより酷いのだろう。

楽観思考は極力捨てないまでも、せめて情報収集と現状への対策くらいは講じておくべきか。

 

 そんなことを考えていると、ソファーに腰をかけた美並ちゃんが「あの、凛音さん」と、両手で上品に飲んでいたお茶をコトリと机に置いてから言った。


「どうしたの?」


「……少し……お話を聞かせてもらえませんか? 今までのこと……お恥ずかしながら、私は今の状況についていけていません」


 考えてることは同じだったようだ。

そして、それは他のみんなの顔を見ても同様かもしれない。


「そうだね、この際だから一度みんなの持ってる情報をまとめてみようか。ビー、ホワイトボード」


「了解ッス」


 部屋の隅に置かれていた、小汚いホワイトボートが全員の前に引っ張り出される。

私は立ち上がり、ホワイトボードの上のほうに『第一回定例会議─現状の確認について─』とマジックで大きく表題。

それから、くるりとみんなに向き直り、ゴホンと咳払いをした。


「それでは、今から第一回定例会議を始めます。司会は私こと、恋咲凛音が勤めさせていただきます。質問や意見などは挙手制となりますのでよろしくお願いします」


「わぁ、凛音ちゃんなんだか先生みたいやね」


 無駄にキメテ言ってみると、蓮にお褒めの言葉を頂いた。やったね。

しばらくこのキャラでいくか。


「ありがとー、蓮……では、始めに私の知りうる──と言うよりも、現状最も大きな、核となる問題を三つ提示したいと思います」


 キュッキュッと、リズミカルな音をたて、ホワイトボードを縦三つに分割するようにして書き出していく。

内容はこうだ。



一つ『バケモノについて』


二つ『魔法使い(超能力者)について』


三つ『結晶病(仮称)について』



「本日の議題となるのは大きく分けて、ここに示した三つです。ここではこれら三つについて話し合っていこうと思います」


 一度、全員を見渡す。

みんな真剣な表情で聞いてくれているみたいだ。非常によろしい。


「ではそうですね……まずは一つ目『バケモノについて』なにか意見、質問のあるかたは挙手をお願いします」


 私がそう言って、真っ先に手を挙げたのは美並ちゃんだった。


「はいっ、美並ちゃん」


 ビシィと指を指して指名すると、美並ちゃんは小さく間を置いた後静かに話し始める。


「私がまず気になったのは、そもそも何故あのようなバケモノが現れたのか、という点です。見たところ従来の動物が突然変異した姿に見えないでもないですが……」


「それについては、私も気になるところですが……葉山、どうした」


「多分、その突然変異って考え方は正しいと思います」


 葉山が、私の発言を遮るように挙手をし妙に確信めいた発言をする。


「ふーん、根拠は?」


 どうせ大したもんでもないんだろう? と思いながら一応。

すると、葉山はポケットからおもむろに携帯を取り出してポチポチと操作をし始める。


「俺たちも、あの日あんな事になったときから頻繁に外と連絡取り合ったり、ネットで情報集めてたりしてたんですけど……ちょっとこの動画を見てくれませんか?」


 あー、そういえば私の携帯は電池切れてたなーと、ぼんやりと考えていると、葉山が携帯の画面を指して私に言う。

見ろということらしい。

机の方へと行き、みんなと同じようにして葉山の携帯を覗き込んでみた。ほうiPyonアイピョンか。

そして私の視線は、その内容へ。


「……動画?」


 どうやら動画ファイルの再生画面のようだ。

私はiPyonじゃないから分からないけど。


「はい、そうです。これは、12月23日にU-tuneユーチューンに投稿された割と有名な動画を保存したものなんですけど、まぁそれはいいですね。じゃあいきますよ? あ、ちょっとグロテスクな表現も入るので、蓮さんも美並さんも、もしそういうのがダメなら注意してくださいね」


 コクリと頷く蓮と美並ちゃん。

だが、ちょっと待って欲しい。


「……なぜ私には聞かないのか」


「え? ダメなんですか?」


「いや、特には」


「ですよね」


 うん、なんとなくムカつくなコイツ。

モブのくせにすかしやがって、ん? モブ? モブって何だろう。


そして全員の沈黙を了承と受け取ったのか、


「……では、再生しますね」


 そう言って、葉山は動画の再生ボタンをゆっくりとタッチした。



長く(?)なったので、ここで区切りました。


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