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#11 これからどうしよう


「凛音ちゃん……凛音ちゃん」


 ん……。


「凛音ちゃん、朝ごはんできたよ。一緒に食べよ?」


 寒……あと五分……。


「…………ちゅっ」


 ────……。


──ん? 今何か……。


頬に何か生暖かいものを感じ、重たい目蓋まぶたをうっすらと開ける。

知らない天井……私を覗き込みにっこりと笑う美少女──蓮。

朝の冷たい空気と一緒に、卵焼きのいいにおいが私の鼻腔びこうをくすぐった。


これが、今日の始まり。



「ん、おいしい」


 テーブルに並べられたお皿には綺麗な色をした卵焼きが載っている。

一つ食べてみると、だしの甘みがほんのりときいていて凄くおいしかった。


なんと朝ごはんは蓮が早く起きて手作りしてくれたようで、いつもは朝を抜く私も喜ばざるを得ない。

もう一生嫁にはやらないでおこう。


「そうか? えへへ、昨日の鍋の残りで味噌汁も作ってみたんよ?」


 私の隣に腰掛けた蓮に味噌汁の入ったお椀を手渡される。

見える具材だけで、大根、白菜、豆腐、ごぼう、肉団子──。

あ、朝から豪勢だな。

どれどれ……ズズッ──うまっ!


「ど、どうやろ」


 蓮が感想を聞いてくる。


「凄くおいしい。いつも朝は何も食べないんだけど……蓮の料理だったら毎朝でも食べたいくらい」


「もぉ、凛音ちゃんはお世辞がうまいなぁ。でも朝はちゃんと食べなあかんよ?」


「お世辞じゃないよ。まぁ私はちょい低血圧気味だから食べる時間がないってのもあるんだけどね……」


 私は、味噌汁を啜りながら今日のことについて考える。

とは言え、選択肢は大きく二つ。

ここに留まるか、ここを出るか、だ。


前者の場合は、うまくいけばあと一ヶ月以上はそれなりに生活できるはずだ。それだけの食料の蓄えがここにはある。

しかし、それは私たちだけで、と言う意味だ。

生存者たちが食料などを求めてこのショッピングモールの食料品売り場に駆け込んでくるのは時間の問題だろう。

そして、おそらくその時は激しい食料の奪い合いが始まり、はては殺し合いにも発展しかねない。

この状況──多くの人間が消失し、外には凶暴なバケモノが闊歩している──なら十分にあり得ることだ。

まぁ、現に私も襲われたわけだし。


後者の場合は、ここを出た後どこに向かうか、だ。

候補としては、私の家。

元々はただの食料調達に来ただけなんだからこれも大いにアリだ。

それから、学校が現在どうなっているのか知っておきたい。

私は曲がりなりにも生徒会長であるわけだし、一応友達もいることだし。


そういえば、あいつ大丈夫かなぁ。

死んでないといいけど……。


「蓮はこの後どうしたい? もし家に帰りたかったら私が連れてってあげるよ?」


 私は思考を手放すと、蓮にも意見を仰いだ。

今まで何も言ってなかったが、この子も自分の家に帰りたいのかもしれない。

私の都合で振り回すのも、気がひけた。


「え? その……ウチは……」


「うん?」


「一人暮らしやから家はええよ……それより凛音ちゃんは家族のこと心配やないの?」


 蓮は家族のことはあまり聞いて欲しくないようで、明らかに話を変えてくる。

なので私もそれ以上は触れないことにした。


「私はいいの。心配は心配なんだけど、まぁ見えない相手を心配するよりはまず自分の心配しないとね」


「……り、凛音ちゃん」


「ん?」


「ウチ、これからも凛音ちゃんと一緒におってもいいん?」


 おずおずと話しかけてきたかと思ったら、そんなことを言ってくる。

ちくしょう可愛いな。

私はにやける顔を蓮の頭を撫でることで何とか誤魔化しつつ、


「いいよ、むしろ一生いてほしいくらい」


「そ、そんなこと言われると……一生凛音ちゃんから離れられなくなりそうやわ……」


 むしろ、一生いてください。

頬を染めてそんなことを言う蓮を見て、そう思わずにはいられなかった。



 朝ごはんを食べ終わり、現時刻、八時三十分。


考えた結果、もうしばらくはここに留まって様子を見ようという結論に至った。

そうと決まれば、行動は早いほうがいい。

幸いここは多くの専門店が集まるショッピングモール、生活物資の調達には持って来いだ。


拠点も、この部屋で問題ない。

トイレの位置も近いし、まだ水も出る。

なにより、豊富な食料が直ぐ近くにあるのだ。


しかし、問題もある。


一つは暖房。

この、店員の休憩室のような部屋には、一つの灯油ストーブと、灯油用のポリタンクが三つ置かれていた。

が、ストーブの灯油残量を見ると針がEエンプティの近くを指しており、またポリタンクのうち二つはもう空だった。

この季節、あと一つのストックだけでは心もとない、というか明らかにもたない。

早急な灯油、そして布団などの確保が必要だろう。


んで二つ目がそう、お風呂の問題。

休憩室といってもお風呂まで完備されているはずはなかった。

いくら冬で汗もかかないとは言え、女の子がお風呂に入れないというのは拷問にも等しい。

それに、体を清潔にするというのは、精神面でもかなり重要なことのように思える。

大きなおけかなにかがあればお風呂の代わりにはなりそうなんだけど……。


 私は必要だと思われる品を次々にピックアップしていった。


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