表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

葵の秘密


「では、これでSHRは終わりです。

 今日の日直は・・あ、篠畑さんがお休みだから

 篠原さんと東雲君お願いしますね。」



俺は席をたち

担任にところへ行って学級日誌を受け取った。


振り返るともう一人の日直

篠原葵が後ろに立っていた。



「あ、日誌あたしがかくよ」と篠原が微笑んだ。


もとより日誌なんて書く気がなかった俺は

「ありがと、んじゃお願いするわ」と微笑みながら

日誌を渡した。



その笑顔を見てか周りの女子がざわつく。



(うるせえ・・)



思ったことを顔には出さず

席に戻っていく篠原の背中をみていた。



自慢じゃねえけど、入学してからの告白の数は

数え切れない。


けど、俺に媚を売ったり、周りできゃーきゃーいわない

俺に興味を持ってないやつは簡単に数えられる。



その中の一人が篠原葵だった。



べつに騒いでほしいわけじゃないから

俺に興味があろうがなかろうが

どうでもよかった。


けど、初めて篠原を見たときの

彼女の雰囲気と今の雰囲気の違いに

引っ掛かりを感じていた。



初めて篠原を見たのは高1で入学して

まもなくのころだった。


追いかけてくる女子をまいて、

一人で昼飯を食おうとして

いい場所を探していたら


中庭のベンチに一人で座って

ぼーっと空を眺めている篠原を見つけた。


その目はまるで生気が宿ってないかのように

にごった黒色をしていて、

彼女の影の部分を見た気がした。



けど、それ以降はクラスもちがかったし

たまに廊下ですれ違うくらいで

そのときはいつも元気に友達と話していて

あの日のような雰囲気はまったく出していなかった。


だから、俺もそれ以来気にしないようにしていた。



そして、2年になってクラスが同じになり

たまたま出席番号が俺と篠原の間のやつが

休んだことで二人で日直をすることになった。


そして、偶然だと思うけど

1年前彼女をはじめてみた日にちだった。





1日が特に何もなく過ぎていった。

帰りのSHRが終わり、

各々部活に行ったり勉強しに行ったり帰ったり

している中日直は最後の仕事があった。


教室点検と日誌の提出



すると篠原がやってきて

「東雲くん今日部活だよね?

 あたし今日部活休みだし、日誌もうちょっと

 かかりそうだから部活行っちゃっていいよ」


といった。

「まじか、ごめん。

 じゃ、お言葉に甘えさせてもらうわ」


そういって部活に向かった。



1ヶ月後にある定期ライブに向けて

通し練をして休憩のため部室から出ると

たまたま担任が通ってきた



「あ、ちょうどよかった

 まだ日誌が届いてないのよ

 もう5時回ってるのに・・

 早く出してもらえないかな?」


「あ、すいません。

 たぶん教室で篠原が書いてると思うんで

 とってきます」



そういって教室に向かった。


(俺と別れてからもう1時間

経ってるのにまだ日誌書いてんのか?)



そうおもいながら教室の前にとまり

扉の小窓から中をのぞくと


夕日が差し込んでそれに反射して

きらきら光る赤い液体が

篠原の手首から腕へと流れているのが見えた。


右手にはカッターが握られていた。



篠原の目はあの日俺が見たものと同じだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ