愛しのスパダリに窮地を救ってもらってエンダァァァ!したと思ったらスパダリが誠実すぎてゴールラインを超えられなかった件
やあ、僕はポゥル!
花も恥じらう15歳の美少年だよ!
…あっ、その顔は信じてない?
本当さ!
勘違いでも自惚れでもない客観的な事実ってやつ。
その証拠に、ついこないだ卒業した男子校ではクラスのほぼ全員から告白されたし!
クラスメイトどころかよそのクラスや先輩や後輩や果ては独身教師からも言い寄られまくってまいっちんぐだったよ!
全員丁重にお断りしたけどね!
だって、僕はこの通りの傾国の美少年だから!
自分を安売りしたりはしないのさ!
理想や好みだってめっちゃ高くて、学校で一緒だっただけのそのへんの奴程度じゃ相手にする気にもなれないね!
「おまえ、いつか後ろから刺されるぞ…」
おっと、そんなことを言うのは僕の唯一無二の友!
なんで唯一無二かというと、こいつ以外はみーんな僕に懸想して普通の友達ではいられなくなっちゃったから!
「学校中ホモだらけという地獄のような学生生活だった」
逆になんでこいつだけは僕のこと何とも思わないんだ、って感じだけど。
「いや俺ガッチガチの異性愛者だから。どんなに綺麗でも可愛くても俺と同じもんが下についてるって時点でナシよりのナシだ」
…だってさ!
ちょっとムカつくけど、おかげでこいつとは安心して友達でいられる!よかった!
このとおり、僕と違って地味でモブっぽい外見で口も悪い奴だけど、友達思いのいい奴だしね!
「下げるのか上げるのかどっちかはっきりしろ」
どっちでもないよ!
僕は事実を述べたまでさ!
「正直ならいいってもんでもないんだぞ」
そう呆れるなよ、我が友よ!
おまえと僕とは就職先も一緒なんだし、今後も仲良くしようじゃないか!
「今度こそホモだらけの環境になりませんようにと祈りたいけどたぶん無理なんだろうなぁ……ハァ」
そう、その就職先だけど。
今をときめく白金騎士団!
新兵に採用されました!やったー!
騎士団長のレオ様がもうすっごくカッコよくて男前で!
僕、前々から大ファンなんだぁ!
僕だけじゃなく憧れてる青少年は多いんじゃないかな?
剣を振るえば一騎当千、軍を率いれば百戦錬磨!
若くして数々の華々しい戦歴を積み上げて縦横無尽の大活躍!
なのにちっとも奢ったところのない篤実な性格で!
彼こそまさに騎士の中の騎士!!
ああっ…彼のような素敵な人にだったら、僕の純潔を捧げてもいい…♡
「おいやめろ。俺だって団長のことは尊敬してるんだ。おまえのホモムーブに巻き込むな」
失礼だなぁ、我が友よ!
僕は一度だって誰かを誘惑したりホモムーブに巻き込んだりしたことはないよ!
向こうから勝手に寄ってくるのさ。
チョウチョが美しい花に惹かれるように!
「なまじ本当だったことを知ってるだけにツッコめねえ……でもおまえ、気をつけろよ」
ん?
なんのこと?
「おまえのホモムーブじゃなくても、元々軍隊ってそのケの奴が多いって聞くし。おかしな奴に目をつけられたら酷い目に遭うぞ」
なるほどね。
そういや学生時代にもたまにいたなぁ。
僕を無理やりチョメチョメしようとした不埒な輩!
もちろんそんな奴は一人残らず返り討ちにしてやったけど!
美少年だからって見縊っちゃダメさ!
騎士団に採用されたことからも分かる通り、僕は戦える系の美少年だからね!
「…今まではそれで済んでたかもしれねーけど、ここじゃ他の奴だってみんな強いだろ。それに騎士団なんて縦割り社会なんだから、上司から言い寄られたら断りきれねえんじゃ」
心配してくれてありがとう、友よ!
やっぱりおまえはなんだかんだでいい奴だよな!
でも、大丈夫!
僕だってそこんとこは十分気をつけてやっていくさ!
「なら、いいが…」
あっ、そういえば小隊長に呼び出しを受けてたんだった。
なんだろう?
とりあえず行ってくるよ!
「………早速フラグじゃね?」
友が後ろで何か呟いてたけど、僕はあまり気にせず指定された場所へと赴いた。
そして。
いきなりピンチです!
「ひと目見た時から君のことが気になっていたんだよぉ!ハァハァ!」
とかテンプレのキモいセリフと共に僕に迫りくるおっさん!
…じゃなかった、小隊長!
……いやもうおっさん呼びでいいよ、こんな奴!
呼び出されたのがあまり使用されない倉庫だったことをもっと警戒するべきだった!?
だけど新兵に採用されて数日も経たないうちにこんなことになるなんて思わないじゃん!?
助けを呼ぼうにも、ここにはほとんど誰も来ない!
だからこそ呼び出し場所に選ばれたんだろうけど。
大ピンチ!
腐っても相手は小隊長、力ではとても敵わない。
この倉庫に収納されていたマットレスに押し倒されて、覆い被さられて…
い、嫌だぁぁぁぁぁぁぁッ!!?
こんな多少は強くてもハゲでデブで吐く息が常に臭いキモおっさんの餌食になんかなりたくない!
僕は必死で抵抗して逃げようとした。
「おっと、歯向かうなよぉ?分かってると思うが、騎士団では上官の命令は絶対だぞぉ?」
ううっ!??
こんなの、騎士団とは何の関係もないことに決まってるのに!
こいつっ…!
「まぁまぁ、大人しくしていれば悪いようにはしないよぉ。上官と懇ろになって出世する奴だってたくさんいるんだ」
確かにそういう話も聞くけど…!?
でも、僕は…!
「私のものになれば、いい思いをさせてあげるよぉ!だから、さあ、ほら…!!!」
い…
嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!
やっぱり絶対に嫌だ!
大体、こいつ口ではこんなこと言ってるけど、絶対に弄ぶだけ弄んで飽きたらポイするタイプだろ!?
いろんな男に言い寄られてきた僕だから分かる!
それに上官ったって、所詮はいい年して小隊長止まりのしょぼい奴じゃないか!
こんな奴はアテにできないし、大人しく言うことなんて聞けるもんか!
ああっ、でもキモおっさんの手が僕を力づくで押さえ込もうと!?
「ええい、往生際の悪い…!」
当たり前だろ諦められるもんか!
僕の純潔はおまえなんかに散らされるために取っておいたわけじゃないんだよ!
どうせ捧げるなら…
憧れのあの人に…
オェぇぇぇ、間近に迫られて生暖かくて臭い息が顔にかかる!
き、気持ち悪い…いやほんとに…!
逃げないと…逃げたい……あうううっ、けど…
「フフフのフ。もう諦めたまえ」
だ、誰か…
助けて…
ああ、もうダメだ…
絶望感と無力感に僕が押し潰されそうになっていた、その時、
「そこまでだ!」
毅然とした凛々しい声が倉庫内に響き渡った。
「だっ、誰だ!?」
僕に覆い被さったまま肩越しに振り返り、誰何するキモおっさん。
その表情がすぐ凍りついたことが分かった。
「あ、あああああっ……おまえは………いや、あなたは!?」
「新兵から報告を受けて来てみれば……まさか、栄えある我が騎士団にこんな下衆がいようとはな」
「ちっ、違うのです、団長!これは…」
「何が違う!」
「こやつが私めを誘惑したのです!私は言い寄られて無理やりこのようなことに!?」
倉庫の入口に仁王立ちになっていたその人と、恐怖のあまりベショベショの涙目になっていた僕の視線が交わった。
既に怒り心頭といった様子だったその人の形相が、より一層険しくなる。
「いたいけな少年に無体を働こうとしておきながら、その罪さえ擦り付けようとする……つくづく見下げ果てた奴!」
「だ、団長…」
「もはや問答は無用!貴様には厳しい処罰を下す故、覚悟しろ!」
「くっ…くそぉ!こうなったら!!」
キモおっさんが破れかぶれでその人に飛び掛かっていった。
逆上して自棄になってる!?
あ、危なーーー
「ふんっ!」
思わず悲鳴を上げかけた僕だけど、杞憂だった。
鎧袖一触。
僕の目には留まらぬ程の鋭く速い一撃で、キモおっさんはあっさり意識を刈り取られてその場に崩れ落ちた。
それに冷たい一瞥をくれてから、その人が僕へと駆け寄ってくる。
一転して気遣わしげな優しい表情になりながら、
「怖かったろう?…もう大丈夫だ」
う、ううっ…
レオ様…
本物の騎士団長のレオ様だ…
僕のために、こんなところまで助けに来てくれた…!
うわぁぁぁぁぁんッッ!!!
僕、感激ぃぃぃぃぃぃッ!!!
本当に怖かったこともあって、僕はついレオ様に抱きついてしまった。
新兵ごときが騎士団長に畏れ多いけど、レオ様はそんな僕をしっかりと抱き留めてくれて…
「本当に、間に合ってよかった……君にもし何かあったらと思うと、私は…」
…えっ?
それって、どういう…?
「…実は、採用試験で初めて君を見た時から気になって仕方なかったんだ」
なんか、さっきも似たようなことを言われた。
でも印象は天と地ほども違う。
同じ言葉でも、口にした人の人柄によってこうも違って聞こえるのかと。
僕を抱き締める腕にぎゅっと力を込めながら、レオ様はさらに言う。
「君があわやという目に遭っていて、頭に血が上った。怒りでどうにかなりそうだった。それで、分かったんだ……私は、君のことを……」
れ、レオ様…!
嬉しい!
僕も、ずっとあなたに憧れてました!
助けてもらって、ますます大好きになりました!
あなたになら僕のすべてを捧げられます!
どうか、もらってください僕の…
「いいや、そういうのは良くない」
…あれっ???
ここは相思相愛になった二人が抱き合ってキスしてそして互いの想いを確かめるようにそのままひとつになってエンダァァァァァ!する場面じゃないの??
あれれっ…???
ちゅーしてもらおうと唇を突き出した僕の顔の前に遮るように片手を広げて、レオ様は至極真面目に言う。
「君はまだ未成年じゃないか」
そ、そーですけど…!?
「そういったことは、きちんと大人になってからするべきだ。まして婚前交渉など以ての外だ」
え、
「私は、君が大人になるのをちゃんと待つから…」
ええええ、
「それまでは、ダメだよ。自分の身はもっと大切にしたまえ」
えええええええええええッ!!???
我が身のことは十分以上に大切にしてますけど!?
ファイナルアンサーとしてレオ様に今すぐ身を委ねたいってことなんだけど!?
ああっ、でも未成年には手を出さないって、真面目で誠実なレオ様らしい…!
そんなところも好き…!
でも、でもさぁ…!?
僕のこの若さと勢いに任せた溢れんばかりのパッションは、一体どーすりゃいいってのさぁ!?
「…まあ、なにはともあれ無事で済んでよかったんじゃね?」
…ありがとう我が友よ。
僕の受けた不審な呼び出しの件、レオ様に伝えてくれたのおまえだったんだってな?
おかげでマジで助かったよ。本当に感謝してる。
レオ様とも一応は恋仲になれたし…
「それな。またしても周囲がホモに汚染されたかと思うと気が滅入るけど、カップル固定になってくれりゃこれ以上は拡散したりもしないだろうから、痛し痒しでまあいいかと受け止めることにした」
なんだか棘のある言い草だなぁ。
「気にすんな」
うん、まあいいや。
そんなことより、相談したいことがあるんだよ。
「えー?聞きたくねえ…」
せっかく恋人になったのに、レオ様が全然手を出してくれないんだ。
どうすればいいと思う?
「聞きたくねえっつってんのに……普通に、大人になるのを待てばいーじゃん」
やだ!待ち切れない!
「おまえって基本我儘だよな」
だってしょうがないだろ!?
若さってなんだ!?躊躇わないことだろ!?
僕は躊躇わずにレオ様とひとつになって名実共に結ばれたいんだよ今すぐにでも!
「そこだけ切り取って聞くとおまえがとんだビッチに聞こえる」
失敬な!
僕はレオ様一筋なんだから断じてビッチじゃない!
それにマジでレオ様指一本も触れてくれないからこの身も正真正銘まっさらな処女のままだし!
「処女言うなや男が。引くわー」
引いてもいいから助言を!
なんかアドバイスをプリーズっ!
「…もう全裸で抱きついて誘惑でもなんでもしてくればぁ?」
なるほど!
直球勝負だね分かりやすくて凄くいい!
じゃあ今すぐ行ってくる!
吉報を待っててくれ!
「いや冗談だって………あ、マジで行っちまいやがった」
友が後ろでなんか呟いていた気がするけど、レオ様に向かってまっしぐらの僕の耳には入らなかった。
その後。
真っ赤になったレオ様に上着を羽織らされた上で床に正座させられて滾々と説教される僕の姿があった…
僕のために怒ってくれるレオ様も素敵!
でも。
いつになったらゴールラインを割れるんだよぉぉぉぉぉッ!!?
「俺知らね」
そんなこと言わずに、我が友よ!?
また相談に乗っておくれよ!




