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肌がじりじりと音を立てながら焼けるような感覚。もう夏真っ盛りだ。



内村は海の家で足を伸ばして海を眺める。香西は着替えに行っていて、今はそれ待ち。


日陰で待ってはいるが、あまりの暑さに汗が止まらない。汗で濡れた前髪をぐっと掻き上げると、まわりの女性からやたら見られていることに気付いた。内村は心の中で「もうすぐ40なのになぁ」と呟いて苦笑いする。



ちょうどその時、さく、さく、と砂の上を歩く足音が聞こえてきた。内村がふと顔を上げると、そこには普段見ることのない香西の姿があった。


白地に青と水色のチェックが入った水着。下にはデニム地のショートパンツを穿いている。

髪はコンコルドで綺麗にまとめられ、暑さも吹き飛ばしてくれるような爽やかさがある。



内村はこんな姿を見てしみじみ思うのだが、香西は結構スタイルが良い。むしろその辺のグラビアアイドルよりずっとずっと良いかもしれない。


香西が学生の時はあまりそこまで思ったことはないが、再会した当初はスレンダーだった香西がグラマーに変化したことにびっくりしたくらいだ。



内村が周りを見てみると、海に来ている男たちがちらちらと香西を見ている。それを不快に思った内村は、香西と目が合った瞬間着ていたTシャツを脱いで香西に被せた。それにびっくりした香西はふごふご言いながらシャツから顔を出す。


「な、なに?」


「それ着てろよ」


内村がにっこりと笑った。長い付き合いで、香西はこれが少し怒っているのを表してるということがわかる。


「ちょっと…何怒ってんの?」


「べっつに」


腹黒い笑みを浮かべてる内村に向かってむぅ、と呟いたあと、香西はぶかぶかのTシャツをウエストで絞った。美しいといっても過言ではない曲線があらわになる。


「薫」


その瞬間にこの内村の不機嫌な声が響く。香西が声のしたほうを振り返ると、頭をぐしゃぐしゃにされた。


「ちょ、何するの!」


「お前さ、男に見られてる自覚ないわけ?」


「は?」


「お前が他の男にじろじろ見られるの嫌だ」


「そんなこと言われても…しかもそっちだって女の人に注目されてるじゃん」


「悪い気はしないよね」


「な、に!その違い!」



香西は内村の腕を掴もうとしたが、あっさりと払い除けられてしまった。いつもと違う反応に香西は若干戸惑う。


「ホラ、ここ家じゃないからさ」


内村はビーチサンダルを履きながら香西に向かって言った。


「良い歳した大人が外でじゃれあってたら痛いだろ?家でいっぱい可愛がってあげるから」



さわやかな笑顔でひらひらと手を振って、内村は海の家をあとにした。香西は顔を少し赤くしてぽかんとした。


「…何なのよ、もぅ…」


浮かんでいる汗を拭って、香西は内村を追い掛けるように砂浜を走り出した。





「おー、綺麗じゃん」


内村は足首まで海水に浸けてそう言った。よく写真で見るような綺麗な海。


「ホントー。わぁ、冷たーい」


無邪気にはしゃぐ香西が何となく新鮮で、内村は思わずふっと笑ってしまった。


「来て良かった」


香西が慈しむような目で内村を見て言った。最愛の人にこう言ってもらえるなんて喜ばしいことだと内村はしみじみ思う。


「ホント?それは良かった」


内村も香西を見つめて言った。一つ残念なことは、ここが公共の場であること。内村は軽くため息を吐いて自分より深い場所にいる香西のもとへと向かった。横に並んで微笑みかける。


「今日泊まって帰ろうか」


「え?どこに?」


「大人ホテル」


内村はにっこりと笑ってその言葉を発した。いかにも爽やかな口調にわけがわからなかった香西だったが、内村の耳打ちで顔を真っ赤にし、海でなぎ倒そうとしたのは言うまでもない。


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