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お戯れ

「ばかー…明日仕事なのに何考えてんのー…」



内村の腕の中で香西が恨めしそうに呟いた。内村は香西の頭を撫でながら話し掛ける。


「いいじゃん別に、減るもんじゃないし」


「年考えたほうがいいんじゃないの?」


頭を撫でていた内村の手がぴたっと止まった。反対の手が香西の頬を掴む。


「むああ!」


「いつから俺にそんな口たたくようになったの?ん?」


「むぁ、ごめんなふぁい!」


頬を伸ばしていた手が離れ、香西は自分の頬をさすった。


「普通彼女にこんなことするー…?」


「少なくとも俺はね…それより」


内村はそう言ってベッドから身を起こした。悪戯っぽい笑みを浮かべている。


「まだ許してやらないから」


内村がそっと顔を寄せた。唇が触れそうになるその時、香西が思いっきり内村の肩を掴んだ。


「…なに」


「だ・か・ら!明日仕事でしょ!」


「そんなの気合い」


心なしか嬉しそうな声を上げて内村は香西に口付けた。






ほんの数時間前、珍しく内村が料理を作った。昔付き合っていた頃はお世辞にも上手いとは言えなかった。しかししばらく経ってまた付き合ってみると、内村の料理の腕がかなり上がっていた。


内村曰く「料理の出来る男はモテる」。それを聞いた香西は「はぁ…」としか返事のしようがなかったというのはあえて触れないでおこう。



夏ということもあって冷し中華を作った。麺だけを買ってあとは自分で調理となると立派なものだ。


二人で食事を楽しみ、内村が入浴している間に香西が片付けを済ませた。その後部屋に戻ろうとした香西は、風呂からあがってきた内村に後ろから捕らえられ、ベッドへと連行された。そのままあらららら…という流れだ。






口付けをしたまま内村はゆっくりと香西の頭を撫でた。香西は目をぎゅっと閉じたまま、内村の鎖骨辺りに手を添える。


「んん…!」


いつも以上に濃厚なキスに香西は頭がぼーっとし始めた。内村はそれを狙っていたかのように唇を離し、そのまま首もとに顔を埋めた。


「やぁ…っ!」


「なんで…?」


「明日仕事でしょ…ぉ…」


「いいじゃん」


色気たっぷりの声でそう囁いて、内村は香西の耳たぶに唇を寄せた。


「もう一回やっちゃったんだし」


「だからでしょ!もうダメ!」


さっきの甘い雰囲気はどこへやら、香西は大声でそう言って内村の肩から背中にかけてくらいの位置をばしっと叩いた。しかしそれはあまりに無駄な抵抗で、腕を上げてしまったばっかりに脇に隙が出来たという逆効果になってしまった。


内村はまるで手放すつもりはないと言って聞かせているように、香西の体をぎゅっと抱き締めた。


香西の体から力が抜けたのを確認すると、内村は再び香西に口付けた。


「ふ…っ、んんん…!」


内村は名残惜しそうにゆっくり唇を離すと、ふっと笑ってみせた。


「可愛い」


「ば、か…」


頬が上気し、瞳が潤んできている香西を見て自身の高まりを感じた内村は、それを表に出さないようにふっと笑って香西の髪の毛を撫でた。



「ダメ?」


内村の低めの声が甘えるようにやさしく響く。香西は少し上目遣いで内村を見つめ、腕を首の後ろへと回した。


「明日のお弁当、なくてもいいならね」


「我慢する」


そう言って内村はもう一度香西に口付けた。




まだ夜は始まったばかり…。


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