変わらない関係
内村は家に着いてすぐ、寝室のベッドの横に無造作にスーツを投げ捨てた。ネクタイを少々乱暴に解き、はらりと床に落とす。
ギシ、と音を立てて内村が乗ったベッドには、すでに放り込まれて横たわっている香西がいる。
もうちょっとデリケートに扱ってよ!と言いたくなるのは山々だが、目の前に内村が迫ってきてるのでは、香西はただ無駄な抵抗をするしかない。じりじりと後退りをする。
内村は無表情のまま、何も喋ることなく香西の方へ向かう。
「ちょ、っと!待ってよ!」
「何で?」
「何するつもり?」
香西の問いに内村がふっと笑った。
「そんな事俺に言わせるの?」
「どんな事よ」
上半身を完全に起こして内村の腕を軽く叩いた香西は、次の瞬間組み敷かれていた。
「こんな事」
妖艶な笑みを浮かべた内村は、そのまま香西の首筋に唇を落とした。香西が小さくぴくん、と動く。
「へぇ、身体は素直じゃん」
「ば、か…!」
香西は非力な手で内村の腕を掴んだ。香西の必死の抵抗は、逆に内村の気持ちを高ぶらせる一方だ。
内村は何も言わず、そっと香西の唇に自分のそれを寄せた。何度も何度も内村は香西の唇を啄み、内村の腕を掴んでいた香西の手は、やがて内村の首で組まれた。
二人が離れた時、香西は頬を上気させて俯いた。あまりの可愛さに内村は香西のこめかみに唇を寄せた。そして…
「だめ!」
香西の胸の膨らみに触れたとき、内村は香西から思いっきり叩かれた。予想以上の痛さに内村は思わず香西から離れ、自分の腕をさすった。
「そーんな本気で殴らなくても」
「だってまだ夕方よ!」
あまりの真剣な顔に内村はつい笑ってしまう。そしてやわらかな香西の髪の毛をよしよし、と撫でた。
「今日夕飯俺が作るよ」
「え、いいの?」
「その代わりデザートもらってもいい?」
「うちにデザートなんてあったっけ?」
あるある、と言って内村はぎゅっと香西を抱き締めた。
「夜…楽しみにしてるから」
大人の男の色気を含んだ囁き声に、香西はただ顔を赤くするしか手がなかった。