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キモチ

家に着くやいなや、香西は内村に荷物のように担がれた。突然のことに香西はただただびっくりするしかない。


「ちょ…っ、何を…!」


一方の内村は香西を担いで意気揚々と寝室へ向かった。香西をベッドへと下ろし、艶っぽい笑みで見つめる。



内村は何も喋ることなく、自分の真向かいで猫座りしている香西に口付けた。あまりの濃厚なキスに香西はほうっとし、とろけてしまいそうになる。


「ふ…」


いつかのように思わず声を出してしまい、香西はますます恥ずかしくなった。その時の相手は内村ではなかったため下手に話は出来ないが。



内村は相変わらず言葉を発することなく、慈愛に満ちた笑顔で再び香西に唇を寄せた。さっき以上に深い深い口付けに、香西の全身の力が徐々に抜けはじめる。


それを良いことに、内村は香西の胸の膨らみに手を掛けた。まだキスされているままのため、香西は声を出すことが出来ない。


「んん…!」


内村のシャツを掴む香西の手に少し力が入る。内村が少し唇を離すと、香西の唇からは甘い声が洩れた。


「ふ…ぅん…!」


内村の唇が首筋や首元に集中し、それと同時にゆっくりと胸部から刺激が与えられる。


「あ、ぁ…んっ、あっ…!」


二人とも座ったままという姿勢。全身に力が入らなくなってきた香西は、背中を反らして前のめりの形で内村に縋りついた。内村の袖を掴む手がかすかに震える。




内村はふっと笑い、香西のこめかみに口付けを落とした。それと同時に香西がぴくんっと反応する。


「可愛い」


「や、だ…っ!ばか…!」



内村が香西の耳たぶに唇を寄せたと同時に、内村の手が香西の脚の付け根部分へと滑り込んで来る。


「ぁ…っ!」


びくん、と香西が大きく跳ねる。甘い声を出しながら、香西は必死に内村にすがりついた。





とその時、何を思ったのか、内村がぴたりと手を止めた。その代わりに香西を引き寄せ、力一杯抱き締めた。


「…」


香西は大きな目をさらに大きくさせた。驚いて言葉が出ない。


内村は自分の腕の中にいる香西の頭をそっと撫でた。その漆黒の髪の毛は、最近染めなおしたとは思えないほどさらさらしていた。


「…ごめんな…俺本位でこんなことしてばっかりだよな」


内村の囁くような言葉に、香西はふと顔を上に向けた。そこには切なそうな内村の整った顔がある。


「お前の有無を言わさずやっちゃってるし…なんか無理やり襲ってるみたいになってるよな…まぁ実際そうなんだろうけど」


一応と言っては失礼だが、内村は随分過去の行いを後悔していた。予想もしない言葉に香西はただただびっくりする。


「だっ、大丈夫だよ!嫌だったら殴ってでもやめさせるし!」


「でもストレスのはけ口なんて嫌だろ?」


香西は内村の胸から離れ、両腕に手を添えて真っすぐと見つめた。


「嫌なんて思ったことないし…」


香西がそう言いながら俯いた。その顔には朱が射している。


「…むしろ、嬉しいって思ってたりしたり…」



内村はその言葉に目をぱちぱちさせた。知らないうちに愛しい人の仕草が移っているなんて、当の本人は気付いてないようだ。


いつものようにふっと笑みを浮かべたあと、内村は香西をそっと抱き寄せ、額にキスを落とした。


「やっぱりお前しかいないよ、俺には」


頭を撫でてくれる大きくて温かい手が心地よくて、香西は笑みを浮かべたまま目を閉じた。


「私も…あなただけよ」




そして二人は再び見つめ合い、お互いの唇を寄せた。


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