第4章① 迷い子前編
部屋の扉がゆっくりと閉まった。
ガコン――
重たい金属音が、静かな空間に鈍く響く。
その音はやけに重く、まるで外界との繋がりが完全に断たれたことを告げるようだった。
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閉じ込められた。
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誰も口には出さなかった。
だが、その感覚だけは全員が同時に理解していた。
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空気が変わる。
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さっきまでの“ゲームの空気”とは違う。
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もっと冷たい。
もっと現実的な空気。
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息が詰まるような圧迫感。
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入ってきたのは四人。
三人の男。
そして一人の白衣の女性。
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コツ……コツ……
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足音が床に響く。
規則的で、迷いがない。
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その音が、やけに大きく聞こえた。
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子供たちは誰も動かない。
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ただ視線だけが、その四人へ集まっていた。
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恐怖。
不安。
怒り。
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様々な感情が、言葉にならないまま空間に沈んでいる。
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沈黙を破ったのは――
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黒崎レンだった。
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「おい」
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勢いよく立ち上がる。
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椅子が床を擦る。
ギィッ――
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その音が、やけに響く。
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全員の視線がレンに集まる。
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レンは構わず歩き出した。
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怒りを隠そうともしない顔。
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「ここどこだ」
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男たちは何も答えない。
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ただ歩く。
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部屋の中央で止まる。
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レンはさらに近づく。
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「さっきのゲームは何だ」
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「説明しろ」
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空気が張り詰める。
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その瞬間。
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男の一人が前に出た。
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背の高い男。
無駄のない動き。
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軍人のような空気。
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「座れ」
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低く、冷たい声。
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レンは鼻で笑った。
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「は?」
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「ガキ扱いすんな」
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その瞬間だった。
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レンが踏み込む。
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拳が一直線に飛ぶ。
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速い。
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だが――
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次の瞬間。
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ドンッ!!
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鈍い衝撃音。
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レンの体が宙に浮いた。
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蹴りだった。
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見えなかった。
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あまりにも速い。
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レンの体が机にぶつかる。
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ガシャッ!!
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椅子が倒れる。
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床に叩きつけられる。
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「ぐっ……!」
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苦しそうな声。
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ナナが立ち上がる。
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「レン!」
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ユウも動く。
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レンの元へ駆け寄る。
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レンは歯を食いしばっていた。
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唇の端から血。
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呼吸が乱れている。
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だが、目はまだ死んでいない。
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その時。
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男が言った。
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「次は殺す」
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淡々とした声。
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脅しではない。
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ただの事実。
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それが分かるからこそ、空気が凍る。
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誰も動けない。
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その時。
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白衣の女性が前に出た。
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「落ち着きなさい」
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静かな声。
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だが、逆らえない圧があった。
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女性は全員を見渡す。
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その目は冷たい。
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人を見る目ではない。
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「ここは研究施設です」
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ざわめきが起きる。
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「研究?」
「何の?」
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だが、女性は答えない。
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代わりにスクリーンを指差した。
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パッ――
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光が点く。
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青白い光。
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そこに表示された言葉。
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Lost Children
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ユウの胸がざわつく。
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意味は分かる。
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だが理解はできない。
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「あなたたちは」
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一瞬の間。
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「迷い子です」




