第3章 ②銃撃後編
全員が走り出した。
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廊下を全力で駆ける。
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靴音が響く。
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だがどこか遠い。
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背後から迫る、あの円のせいで。
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空間が歪んでいるような感覚。
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ソウタが叫ぶ。
「これゴールあるの!?」
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声が震えていた。
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ユウは答えない。
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答えられない。
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ただ一つ。
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止まれば終わる。
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それだけは分かる。
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「下だ!!」
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ユウが叫ぶ。
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階段へ向かう。
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その時。
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「……あ」
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小さな声。
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ユウが振り向く。
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カイトの足が止まっていた。
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ほんの一瞬。
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ほんの数センチ。
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だが、それで十分だった。
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足先が光に触れていた。
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その瞬間。
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変わる。
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皮膚の色が。
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灰色に。
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石に。
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「カイト!!」
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ユウが叫ぶ。
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石化はゆっくり広がっていく。
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足。
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膝。
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腰。
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カイトは苦笑した。
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「……マジかよ」
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ユウは戻ろうとする。
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(まだ間に合う)
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一瞬。
そう思った。
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だが。
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「来るな!!」
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カイトの叫び。
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石化は胸まで来ていた。
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間に合わない。
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分かってしまう。
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それが一番残酷だった。
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カイトはユウを見る。
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その目は、変わらない。
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少しだけ笑っている。
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「ユウ」
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呼吸が浅い。
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苦しそうだ。
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それでも言う。
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「このゲーム……」
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息を吸う。
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「クリアしてくれよ」
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ユウの拳が震える。
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「……ふざけんなよ」
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声が震える。
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カイトは、小さく笑った。
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「頼んだ」
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その瞬間。
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完全に止まる。
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カイトは石になった。
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動かない。
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声もない。
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ただの像。
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さっきまで、
隣で笑っていた人間が。
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もう二度と、
動かない。
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“物”になる。
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ソウタが叫ぶ。
「ユウ!!」
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石化の円が迫る。
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ユウは動けなかった。
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足が動かない。
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その時。
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腕を掴まれる。
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ナナだった。
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「行くよ!!」
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強く引かれる。
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無理やり走らされる。
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視界が滲む。
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涙だった。
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悔しさか。
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怒りか。
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分からない。
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ただ、苦しい。
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階段を駆け下りる。
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廊下を曲がる。
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そして。
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目の前に巨大な扉。
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ユウが押し開ける。
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ギィィ……
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その先。
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広い部屋。
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中央には巨大なスクリーン。
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整然と並ぶ座席。
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そこにはすでに多くの子供たち。
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全部で31人。
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同じように生き残った者たち。
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ユウは座る。
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体が震えている。
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呼吸が乱れている。
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隣には少女。
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白石アヤ。
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「初めまして」
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落ち着いた声。
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場違いなほど冷静。
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「あなたも迷い子?」
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ユウは息を整えながら言う。
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「……迷い子?」
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アヤは静かに答える。
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「ここに連れてこられた人たち」
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「私たち」
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そして、少しだけ間を置いて。
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「帰れないみたい」
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その言葉が、妙に現実的だった。
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ユウはスクリーンを見上げる。
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ここはゴールじゃない。
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その時。
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背後の扉が開いた。
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大人たち。
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白衣の女。
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その瞬間。
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ユウは理解した。
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ゲームは終わっていない。
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これは――
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始まりだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
第三章はここで終了です。
カイトの選択と、その結末。
この世界では、一瞬の判断が命を分ける現実があります。
誰が生き残り、誰が失われるのか。
そして、この「ゲーム」はどこまで続くのか。
ユウたちの戦いは、まだ始まったばかりです。
少しでも心に残るものがあれば、
続きも読んでいただけると嬉しいです。
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