第2章② 宝探しゲーム(後編)
その時。
背後から声がした。
「宝箱なら上の階の可能性が高いよ」
振り向く。
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そこには、眼鏡をかけた少年が立っていた。
落ち着いた目。
周囲の混乱とは対照的に、冷静な表情だった。
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ユウの頭の中に名前が浮かぶ。
坂井タケル。
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タケルは静かに続ける。
「普通、隠すなら探索しにくい場所」
「屋上か三階」
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カイトが笑う。
「頭いいじゃん」
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その時。
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「おーい!」
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明るい声が廊下に響いた。
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振り向くと、廊下の奥から元気な少年が走ってくる。
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高橋ソウタ。
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ソウタは息を切らしながら笑った。
「体育館見てきたけど何もなかった!」
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カイトが肩をすくめる。
「どんどん増えるな」
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その時。
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階段の方から足音が聞こえた。
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ゆっくりと降りてくる一人の少女。
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鋭い目。
強気そうな表情。
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橋本ナナだった。
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ナナは腕を組む。
「理科室もなし」
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ユウは少し驚いた。
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気づけば。
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五人がそこに集まっていた。
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まるで最初からチームだったかのように。
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カイトが笑った。
「よし」
「チームだな」
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ユウは一瞬考える。
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(このゲーム……一人じゃ危険すぎる)
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そしてうなずいた。
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「三階に行こう」
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五人は階段を上る。
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途中、いくつもの罠を見つけた。
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床に張られたワイヤー。
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足を引っ掛ければ何かが落ちてくる仕組み。
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崩れかけた棚。
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だが。
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ユウの観察力と。
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タケルの冷静な分析で。
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すべて回避していった。
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そして。
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三階の一番奥の教室。
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ドアを開けた瞬間。
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「おい!!」
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ソウタが叫んだ。
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教室の中央。
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机の上。
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そこに。
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小さな宝箱が置かれていた。
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カイトが思わず笑う。
「マジかよ」
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ナナが警戒する。
「罠かもしれない」
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ユウはゆっくり近づく。
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床を見る。
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天井を見る。
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机の下を見る。
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罠は見当たらない。
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(……本当にないのか?)
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心臓が少し早くなる。
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そして。
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宝箱に手をかけた。
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ゆっくり開ける。
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カチッ。
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その瞬間。
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『ゲームクリア』
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教室に静寂が広がる。
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カイトが笑った。
「やったじゃん」
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だが。
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ユウの胸の中には、まだ不安が残っていた。
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ゲームが終わっただけだ。
まだ。
何も終わっていない。
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その時。
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廊下の奥から足音が聞こえた。
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コツ。
コツ。
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静かな足音。
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ユウは振り向く。
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そこに立っていたのは。
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橘ミサキ。
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だが。
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ユウの目が見開かれる。
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ミサキの隣に。
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もう一人。
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同じ顔の人物が立っていた。
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まったく同じ顔。
同じ髪。
同じ姿。
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カイトが呟く。
「……は?」
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次の瞬間。
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ミサキは迷いなく。
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腰から銃を取り出した。
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そして。
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自分と同じ顔の女へ向ける。
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ユウが叫んだ。
「ミサキ!?」
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銃声が校舎に響いた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
第二章はこれにて終了です。
最初のゲームが終わったはずなのに、
ユウたちの前に現れたのは、あまりにも理解しがたい光景でした。
同じ顔をした二人のミサキ。
そして、響いた銃声。
この世界では、まだ何一つ安心できません。
ここから物語は、さらに大きく動き始めます。
少しでも続きが気になっていただけたら、次章も読んでいただけると嬉しいです。
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引き続き『Lost Children』をよろしくお願いします。




