第1章 ② 失われた現実
冷たい床の感触が膝から伝わる。
「……ここは?」
ゆっくり目を開ける。
そこは駅のホームだった。
しかし何かがおかしい。
周囲を見渡す。
人がいる。
だが――
全員、子供だった。
自分と同じくらいの年齢。
中学生くらいの少年少女たちが、困惑した顔で周囲を見回している。誰もが状況を理解できないまま、ただ呆然と立っている。泣き出しそうな顔の女の子もいる。怒鳴り声を上げる男の子もいる。だが、そのどれもがまだ現実感を持てていないようだった。
ざわめきが広がる。
「え、何ここ?」
「なんで?」
「さっきまで駅にいたよな?」
「お母さんは?」
「これ、夢……?」
混乱の声があちこちから聞こえる。
ユウは近くのガラスを見る。
そこに映った自分の姿を見て、言葉を失った。
「……なんだよ、これ」
制服。
小さな体。
腕も肩も、すべてが幼い。
声も少し高い。
手のひらはまだ子どものそれで、骨ばった大人の手ではない。指も短い。足元に映る影まで、自分の記憶にある現在のものと違っていた。
まるで――
中学生の頃の自分だった。
(夢か……?)
だが頬をつねると痛みが走る。
夢ではない。
呼吸は荒く、心臓は早鐘のように打っている。風の冷たさも、ホームの床の硬さも、あまりに鮮明だった。
その瞬間。
また光が走った。
世界が歪む。
景色が引き裂かれるように揺れる。
床が消える。
体が落ちる。
視界が崩れる。
何もかもが白と黒の境界をなくして混ざり合っていく。
そして――
次に目を開けたとき。
ユウは学校のような建物の中に立っていた。




