表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
円満離婚に持ち込むはずが。~『冷酷皇帝の最愛妃』  作者: みこと。@ゆるゆる活動中*´꒳`ฅ
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/19

6.エリザの決意

 ◇


 衝撃的な事後から数か月後。

 私は、呆然としていた。


(子どもが出来た……!)


 私たちはあの後、たどたどしく接し合いながらも何とか日常を取り戻していた。


 シュテファンが薬に(おか)され私と(つな)がった翌朝。私と彼はぎこちない会話を交わし、彼は私に詫びた後すぐ、媚薬を盛った犯人を調べるために部屋を出た。


 つまりあの行為は、彼の本意ではなかったわけで……。


(それはそう。だって子を作らないと言っていたのに、あんな……)


 初めての夜を思い出すと、今でも熱くなる頬に手をあてて冷ます。


 媚薬のせいで余裕がなかったはずなのに、シュテファンはまるで宝物のように私を大切に扱ってくれた。


 私がはじめてだから、痛くないようにと気遣って……。


(シュテファンのあの態度は良くないわ。だって愛されてるって錯覚しちゃう)


 そのくらい彼の胸の中は心地良かったし、逞しい腕はとても力強くて、包み込まれている時の安心感ったらなかった。

 彼の指先が触れてた部分は、その手が離れても長く熱を持って余韻が抜けず、もっと。

 ずっと(そば)にいて欲しいと、思わず口走ってしまうところだった。


 お飾り皇妃のエリザ相手に、あんなに優しいのよ?

 これが本命の相手だったら一体──。


(すごく女性を大事にするタイプなのね……)


 "冷酷皇帝"なんて、誰が言い出したんだろう。


 確かに婚礼の日は怖かったけど、今思えばただ女性に不慣れでぎこちなかっただけ、とも思えてしまう。


(いいなぁ。シュテファンに想われる女性(ひと)──……)


 ズキン、と胸の奥が痛んだ。


(はっ、私ったら何を! 無し。今の無し)


 慌てて何もない(くう)に手を振って、頭に浮かんだ思いを追い払う。


(ヒロイン一筋、溺愛ヒーローのシュテファンに、当て馬役のエリザがアプローチするほど、(むな)しいことはないわ。彼にはアンネだけなのよ。媚薬事件で彼に思いを寄せた侍女が、けんもほろろの扱いを受けたって聞いたじゃない)



 媚薬事件。

 判明した犯人は皇宮の侍女で、彼に懸想(けそう)し、"(ちょう)"を欲して犯行に及んだとシュテファンが言っていた。


 その侍女は、自分がシュテファンに抱かれるために薬を使ったらしいのに、目当ての彼は妻である私のもとに真っ直ぐ来てしまったのだから、皮肉なものだ。


 大それたことをしでかした犯人は皇宮から追放され、厳罰に処されたという。

 皇帝に薬を盛ったのだから、致し方なしだと思う。


(あのシュテファンに媚薬を盛るなんて、なんて恐れ知らずな)


 立派な体躯で近づきがたい威圧感をまき散らしてる青年相手に仕掛けようなんて、率直に感心してしまった。


 そんな彼はと言えば、私との契約になかったアクシデントのせいか、媚薬の一夜以降ばつが悪そうにしてて。あまり会話時間も持ててないまま、同盟国の要請に応えて遠征に出てしまった。


 おかげで相談を持ち掛けることも出来ないけれど、契約婚の私に手を出してしまったことを、悔いてるのだとしたら──。


(私には特別な夜だったのに、温度差が切ないな)


 とはいえ私たちは正式な夫婦で、あっちは恐れ多くも皇帝陛下。


 私もそれ以上は踏み込まずに、またも白い結婚(いやもう白くない? 第一シュテファン不在)を継続していたところに、月のものの遅れ。


 真っ先に浮かんだ疑念は、"妊娠"だった。


 こちらの避妊は日本以上に不確かだし、何よりあの日、そんな配慮はしてなかった。

 もし本当に妊娠していたら、皇宮の医師はまずい。

 きっとすぐさま実家に筒抜ける。


 宮をこっそり抜け出した私は町医者の診察を受け、疑念は確信に変わった。


(リーネル公爵は健在だし、シュテファンは当然、私との子どもを望まない。まして彼はいま遠征中で、しばらくは帰って来れないわ。周りが先に懐妊を知ったら、公爵たちがどんな手を使ってくることか)


 それは、"貴族派に有利な行動をしない"という、私とシュテファンの契約内容に反する。


 私の妊娠は、間違いなくリーネル公爵に利するもの。


(どうしよう。子作りの予定はなかったから、莫大な違約金が払えない。ドレスや宝石をすべて売っても、到底届かない……)


 シュテファンを信用させるため、違約金はどーんと大きく設定してあった。


 かといって。

 宿った命を否定するなんて、私は絶対したくない。

 もしも誰かに処置を提案されたら、徹底抗戦してしまう自分が目に浮かぶ。


(──逃げる?)


 心に浮かんだ一言は、これ以上ないほど名案に思えた。名案というか、もうそれしか選択肢がない。


 いずれ離婚する予定で国内情報を集め、どこに住むか候補地もいくつか検討済み。

 お金も貯めてある。


 母子が慎ましく生活する分には何とかなりそうだ。私が働けばいいわけだし。

 貴族家育ちのエリザと違って、私は労働に抵抗がないもの。


 そろそろシュテファンとアンネとの仲も進展する。彼は私のことなんて忘れて、運命の恋を喜ぶだろう。


 ──チクチクと胸を(さいな)むこの痛みは、きっと妊娠によるホルモン変化──


(アンネが()たら、私が相談なく姿を消しても、シュテファンも大目に見てくれるわ)


 ──暗く沈んだ気持ちになるのも、たぶん妊娠による自律神経の影響(せい)──


(最終的な離婚は、ふたりの合意だったもの。早いか遅いかだけの違いよ。私たちの未来は、同じ場所にない。それに逃げてしまえば)


 ──アンネに微笑みかけるシュテファンを、見なくて済む──


(やっぱりシュテファンは冷酷皇帝ね。好きになっちゃいけない相手なのに、よくも私の心を自分に向けさせたわね)


 いつからだろう。

 部屋に彼が来ると、嬉しいと感じるようになったのは。

 いつからだろう。

 会えないと、こんなに寂しく泣きたくなるのは。


(冷酷皇帝というより、残酷皇帝でしょ。子どもまで作っておいて)

 

 そんな相手なのに、彼の(かせ)になりたくないと考える自分がいる。ホントどうしようもない。


 このおかしな想いが、きっと恋。

 シュテファンと結婚して約一年。私は人生で初めての恋をしている。実らない想いだと分かっているのに。


 ぐい、と(にじ)む涙を(ぬぐ)う。


(──そうと決まればお腹が大きくなる前に決行しなきゃ、身動き取れなくなっちゃうわ)


 ひとりで産めるの? という不安はあるけど、当然街の産婆を頼る予定だし、エリザの骨格はなんだかんだ欧米型。骨盤は前傾タイプで腰幅がある。アジア人のそれより産道が確保しやすいはず。



 "皇帝が娘を害した"とリーネル公爵がシュテファンにイチャモンつけないよう、シュテファン宛に置き手紙を残し、そうして私は皇妃冠(ティアラ)を捨てた。



 これ以上シュテファンに、()かれてしまう前に。




 お読みいただき有り難うございます!

 エリザはアンネが媚薬事件の犯人だと知らないようです。

 あと「けんもほろろ」は雉の擬音語から発生した言葉です。 


 骨盤なんですが、欧米人とアジア人では傾きもカタチも違い、また皮膚の伸びやすさ、等々も違うそうです。骨格も違うため筋肉の付き方も違ってて、日本人はおんぶのほうが重心が安定するとか。なんかいろいろあるみたいです!

 未婚のエリザ(前世)がなんでそんなの知ってるんだ!(笑) きっとデスクワークの腰痛で受診した時、お医者さんに豆知識貰ったんですね!(≧∇≦)b 私がレントゲンとった時欧米型で、お医者さんから教わりました。 ←おい


 ちょっと私生活のほうでバタバタ案件が舞い込みまして、明日の更新が怪しいのですが、次はシュテファン回の予定です。

 独白回がアンネ、エリザ、シュテファンと続いてすみません。その後事態は動き出しますので、お付き合いどうぞよろしくお願いします♪ヾ(*´∀`*)ノ


 ◆◆◆


 あさぎかな先生(@Yatushiro1)からコラージュアート貰いました♪ わああ、めちゃくちゃ素敵!

 ありがとうございます!! そっかぁ、こんな感じ…。雰囲気を感じれて解像度上がりました(´艸`*)

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
良かったらコチラもよろしくお願いします!
短編が多いです!

・▼・▼・▼・▼・▼・
【総合ポイント順】
・▲・▲・▲・▲・▲・

・▼・▼・▼・▼・▼・
【新しい作品順】
・▲・▲・▲・▲・▲・

・▼・▼・▼・▼・▼・
【異世界恋愛+α】
・▲・▲・▲・▲・▲・

【最近の中編連載】

『私はまだ、何もしてなかったのに?』
『私に価値がないと言ったこと、後悔しませんね?』
― 新着の感想 ―
後書きの豆知識好きです。 コラージュアートもめちゃくちゃ綺麗ですね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ