表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
円満離婚に持ち込むはずが。~『冷酷皇帝の最愛妃』  作者: みこと。@ゆるゆる活動中*´꒳`ฅ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/5

5.アンネの思惑

※本日はアンネ視点の回です。

 アンネ・ヴィンケル。

 鏡に映る愛らしい美貌を見て、私は思わず拍手喝采したわ!

『冷酷皇帝の最愛妃』、そのヒロインに転生したと気づいたもの。


 貧乏伯爵家の生まれだけど、いずれは皇妃。

 しかも美形で名高い皇帝シュテファンに溺愛されるなんて、さいっこうじゃない?

 これで今世の私、勝ち組確定ね!


 なのに家族はみんな堅実で、アンネにも家の手伝いを()いてくる。

 

 私は"ご令嬢"よ?

 特産品の市場調査? そんなことより自分を磨いて、お洒落やお手入れしてないと。


 ウィンドウショッピングで可愛い服や綺麗な宝石を見て歩く。

 今は眺めるだけだけど、将来全部全部買ってやる。なんてったって私は、皇妃様になるんだから!


 市場には出てるもの。家族に文句は言わせない。


 ああ、でもそういえば……。

 小説では市場で、お忍びシュテファン様と出会うんだっけ。


 彼に惚れられるのは決定事項だもの。待つ必要なんてない。

 自分から話を進めていくべきよね!


 行動派の私はヴィンケル家のツテをたどって、皇宮の侍女として採用されたわ。

 家族には皇宮で、大口客を見つけるためと言ってある。

 嘘じゃないわよ? 皇帝を釣って帰ったら、みんなどんな顔をするかしら?

 私を遊び人や怠け者扱いした連中、きっと平伏すわね。ふふっ、楽しみ!


 アンネの血筋は、立派な貴族家。

 さっそく皇宮でも奥深い場所に配置されたわ。


 儀式や政治が主な大宮殿とは別の、皇家の私生活を担う宮。

 将来、皇妃になった私が暮らす宮殿!


 当然エリザもここにいて、偶然見かけたけど。


(ふぅん? これが愛されない皇妃エリザ? ちっさくて貧相な女だこと。しかも年増じゃない。二十歳なんてこの世界では行き遅れ。そんなんで皇帝に嫁ぐとか、厚かましいのよ。家の力で皇妃の座を手に入れるなんて、シュテファン様に嫌われるのも当然よね)


 公爵家の娘という出身以外、取り柄のない女だった。


(まあ? 夫を略奪される彼女を見るのも面白そうだから、一時的に皇妃の座を貸しててあげるわ)


 そう思って鼻で笑ってたのに、実際勤め始めた宮の様子は、どうも小説(ハナシ)と少し違う?


 まずシュテファン様が毎日エリザの部屋に通ってる。

 忙しくても時間を作って日参してると聞いた。


 おかしいわね。冷遇されてるはずなのに。

 そんなにリーネル家を警戒してるのかしら。


 エリザはと言えば、そんな夫の態度をどう勘違いしたのか、部屋に飾る花を自ら用意する始末。

 しょうもない努力してること。使用人にやらせなさいよ。皇妃の権威を軽く扱わないで。


 そこそこな顔のクセして、花を抱いて歩く彼女が妙に輝いて見える。


 ドンッ!


 ムカつくから、思い切り肩をぶつけてやったわ。


「ああっ、申し訳ございません。皇妃様……っ」


 私はまだ下っ端侍女だから、恐れ入るフリをして慌てて謝ってみせると、エリザはだらしなくヘラッと笑った。


「いいのよ。前を見てなかった私が悪いの」


(そうね、あんたが悪いわね)


 でもデキる私はそんな思いをおくびにも出さない。

 落ちた花を一緒に拾うと、お礼まで言われたわ。なんて間抜けな女なのかしら。


 今のうちにおっとり過ごしてなさいな。

 そのうち宮から追い出してあげる。



「皇妃様って、花を飾ったり、お茶を淹れたり、シュテファン様を引き留めるのに必死なのね。馬っ鹿みたい」


 悪口に花を咲かそうと侍女仲間に話を振ると、急いで止められた。


「滅多なことを言うものじゃないわ。皇帝陛下は皇妃陛下をとても大事にしてらっしゃるから、誰かの耳に入ったら大変なことになるわよ」


 はあ?

 シュテファン様があの女を大事にしてるなんて、とんだ勘違いだと教えてあげたいわ。小説でのふたりの仲は最悪なのよ。


 それにしてもなかなかシュテファン様から見つけて貰えない。何度か視界に入ってるはずなのに。

 いつまでこんなところで下働きしなきゃなんないのかしら。イライラするわ。


「アンネ、どうしたの? ご機嫌斜め?」


 休憩時間に同僚から、のんびりした声がかかる。


「あなたもこっちで一緒に飲まない? 私たち今から、皇妃様のハーブティーをいただくところなの」

「皇妃様のハーブティー?」


「ええ。皇妃様がブレンドティーを小袋に分けて、簡単にいろんなお茶を楽しめるよう工夫なさってるのよ。私、皇妃様当番の時にいただいたから、今からみんなで飲むところ。美味しいのよ?」

「ねっ。すごいわよね。どうしてこんなこと、思いつかれるのかしら」


 キャッキャッと、侍女たちがはしゃぐ。


「何よ。そんなにすごいこと?」


 つまるところティーバッグじゃない。珍しくもない。


 (あき)れながら彼女たちが手にする袋を見て驚いた。


(三角の形をした袋? もしかしてエリザって──)

 

 転生者だわ!


 私はピンと(ひらめ)く。

 小袋に茶葉を分けただけならともかく、テトラパックなんて、なかなか思いつかないはず。

 いつまでたってもシュテファン様から声がかからないと思ったら──。


(エリザが小説知識を使って、シュテファン様と私の仲を邪魔してるんだわ。()めた真似をしてくれるわね!)


 私はぎりっと唇を()んだ。

 話が変わってきてる以上、うかうかしていられない。


(いいわ、私が先にシュテファン様の子を産めばいいのよ)


 そしたら"妃"として(ぐう)されるはずだし……。

 私の身体に(おぼ)れたら、エリザなんて目に入らなくなるでしょ。後から追い出せばいいわ。


 シュテファン様を夢中にさせてしまえば、小説通り、この国の最大権力者が私の男になる。

 歪んでしまった物語は、軌道修正しなくちゃね。



 シュテファン様は皇妃(エリザ)と昼の時間を持つために、夜も執務をされている。

 夜は軽食とお茶を出すため、交代制で侍女がつくから……。


 その当番を私に、かわって貰えば良い。


 当番の侍女に腹下しを混ぜて、親切に代役を名乗り出た私は、特製媚薬を執務室に持ち込んだ。


 シュテファン様はまだ、愛しいの(アンネ)の存在に気づいてないようだけど、今夜忘れられない思い出を作ってあ・げ・る。


 彼は執務の合間に、皇妃の作ったティーバッグでお茶を飲むから……。

 そこに媚薬を混ぜれば、万一おかしいと思っても、疑われるのはエリザのはず。

 だってあいつは皇位を狙う、リーネル家の娘ですもの。


 特製媚薬は子どもが出来やすいよう特別な配合をして貰ったから、きっと自制は利かないわ。

 そしたらすぐ近くに立つ私に、必ず手を出してくるはず。


 ほら、もう効いてきた。


 執務室の立派な机にガタンと手をつき、シュテファン様の顔が真っ赤に火照(ほて)る。


(身体が熱くなったのね? 極上の女がここにいてよ?)

 

 緩まる私の口元。

 けれどシュテファン様は席を立つと、彼の前に出た私を「どけ」と押しのけ、ドアノブに手をかける。


「え、あ、あの、シュテファン様? どちらへ?」

「名を呼ぶ許しを与えたか」


 ギロリと背筋が凍るような一瞥(いちべつ)を私に残し、彼はドアを開けて外に出た。

 慌てて廊下を見ると、ヨロヨロとした足取りでどこかに歩いていく。


(水でもかぶって体の熱を冷ますつもりなの? 無駄よ。誰かに欲望を解き放たない限り、媚薬が抜けることはないわ)


 結局。その晩彼は、部屋に帰って来なかった。


(くっ。失敗した! 高い媚薬だったのに……。ま、まあ、またチャンスはあるわ)



 夜勤明けの休みを貰っていると。

 侍女部屋まで近衛騎士が呼びに来た。

 鎧を着た物々しい()()ちに何事かと焦ったけれど、次の一言で歓喜に変わる。


「アンネ・ヴィンケル、皇帝陛下がお呼びだ。来い!」


(お声がかかった……!)


 やった、やったわ。

 ついに彼の目に留まったのね!


 壁際に待機してても、運命の恋人アンネには惹かれるってわけ?

 ふふふ、小説通り。これで私も皇妃様よ。



 ところが。浮かれて出向いた部屋は、異様な空気に満ちていた。


 椅子には足を組んだシュテファン様。

 横には何人かの仕事仲間が並ばされていて、一様に青ざめた顔をしている。


 思わず息を呑んだ。


 "冷酷皇帝"の名にふさわしいほど(すご)みを帯びたシュテファンが、恐ろしい目でこちらを(にら)みつけていたのだから。


(え……、なんで……?)


 足が(すく)む。


(なんで? どうしてそんな顔をしてるの? 私はあんたの未来の"最愛妃"よ?)

 

「なぜ呼ばれたかわかっているか? アンネ・ヴィンケル」


 地を()う様な低い声。


「い……、いいえ……?」


 震えながら答える。

 何この緊張感。すごく怖い。少なくとも、恋人に放つ空気じゃない。


「これに見覚えがあるだろう」


 彼が示したのは、使用済みのティーバッグ。


(まさか……、怒ってる、の?)

 

 でも私は、自分の正当な権利を取り戻そうとしただけで……。


 ガチガチと耳障りな音がする。私の歯の根が合ってなくて、それで鳴ってる音。



「アンネ・ヴィンケル。今から俺の聞くことに、正直に答えろ」


「ヒッ」


 恐怖で腰が抜けた私を、鎧の騎士が乱暴に腕を引いて立たせる。




 私は知らなかった。

 シュテファン様が、エリザを心から愛していて。

 大切にしていた妻に無体を働いてしまった自分を恥じ、怒り、さらにその原因を作ることになった犯人を、徹底的に調べ上げたなんて事を。


 "冷酷皇帝"の逆鱗に触れた人間が、どんな末路を迎えるか。

 私はこの後、身を持って知ることになった──。



 お読みいただき有り難うございます。

 今回3000文字以上あったのに、ずっとアンネで。

 エリザたちが出なくてすみません。(少しだけ出た)

 ところで「おくびにも出さない」の「(おくび)」って、げっぷって意味なんだとか。それは人前で出しちゃダメなやつだ(笑)


 なお精子の形成には約74日かかるそうなので、子どもが出来やすい媚薬って……。勢いとか、回数とかなのでしょうか(目()らし)。深く追求しないでくださいね!

 妊活中は女性だけでなく男性も、食事や薬にお気を付けください。


 次回はエリザ視点に戻り、その後シュテファン視点です。(予定)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
良かったらコチラもよろしくお願いします!
短編が多いです!

・▼・▼・▼・▼・▼・
【総合ポイント順】
・▲・▲・▲・▲・▲・

・▼・▼・▼・▼・▼・
【新しい作品順】
・▲・▲・▲・▲・▲・

・▼・▼・▼・▼・▼・
【異世界恋愛+α】
・▲・▲・▲・▲・▲・

【最近の中編連載】

『私はまだ、何もしてなかったのに?』
『私に価値がないと言ったこと、後悔しませんね?』
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ