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円満離婚に持ち込むはずが。~『冷酷皇帝の最愛妃』  作者: みこと。@ゆるゆる活動中*´꒳`ฅ


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1.冷たい幕開け

「かーしゃまっ、かーしゃまぁっ」

「ルーイ!」


 私を求めて手を伸ばす幼い息子。


「っつ、大丈夫よ。すぐ助けてあげるからね!」


 私は大切なルーイに向かって、そう叫んだ。




 ◇

   ◇

     ◇



 ──六年前──




「あなたと子を作るつもりはない」


 飾り立てられた初夜の寝室で、美貌の皇帝陛下に言われても。


(ですよね──?)

 としか思えなかった。


 昨日までの私だったら、途方に暮れて泣いてたかも知れない。

 でも今日の私は違う。


(これは、"愛することはない"の亜種ね)


 と、(うなず)ける。

 それもこれもお風呂で溺れかけて、前世を思い出したせいだ。


 私、エリザ・リーネルは転生者である、と。



 エリザの立ち位置は、小説『冷酷皇帝の最愛妃』の脇役で、リーネル公爵家の末娘。

 本日ライザー家に嫁ぎ、皇妃になった。


 帝国を我が物にせんと狙ってる父公爵と次期公爵の兄に、「皇帝の子を産め」と皇宮に送り込まれたばかりで、小説の時間軸だとまだ物語が動き出す前のはず。


 リーネル公爵家では、娘と皇帝との間に皇子が出来ることを強く望んでいる。


 子が生まれた(あかつき)には、皇帝を排除し、幼い皇子を擁立して、自分たちが権力が握るつもりなのだ。

 幼帝の後見人として。


 それがわかっているのに、皇帝はエリザを(めと)ることになった。公爵を筆頭とする貴族派の圧に屈するしかなかったのだ。


 さぞ腹立たしいことだろうし、"子を作らない"という発言にも納得しかないのだが。


(今の私の立場上、困るのよね)


 きっと実家からは"早く子を作れ"と頭ごなしにせっつかれることだろう。

 かと言って私も、嫌がる相手と"致したい"とは思わない。

 

(ましてや陛下、年下だもんね)


 年下だから対象外というわけではなく、ただ純粋に気の毒というか、申し訳ないと思うのだ。


 皇帝シュテファン・ライザーは十八歳。

 二十歳のエリザより二歳下で、私の前世年齢を加味すると、もっと離れてしまう。


 彼は、長く戦場に身を置いていた。


 皇族特有の金紫の瞳を先帝に(いと)われ、十四歳で初陣を命じられたせいだ。

 先帝は自分が金紫の瞳を持たないことから息子に嫉妬し、追いやったというのだから、ずいぶんな話といえよう。


(出産時に亡くなった先の皇妃様に想いを寄せて、息子を恨んでるという説もあったわね。いずれにしてもシュテファン本人に非はないじゃない)


 皇太子であるにもかかわらず、帝都より外で過ごすことを()いられたシュテファンは、先帝が事故死したことで、急遽呼び戻されて即位することになった。

 けれど、後継者としての人脈作りが出来てなかった新皇帝に対し、帝都貴族の態度は酷いもので。


 従わない者が多く、力づくの粛清をせざるを得なかったシュテファンは、あっという間に"冷酷皇帝"と呼ばれ始めた。


 エリザ・リーネルを皇妃として迎えることを条件に、リーネル公爵が貴族派をまとめ、反発を抑える提案して成り立ったのが、この婚姻。


(彼からみたら、エリザは"屈辱の象徴"みたいなもの)


 貴族すべてを断罪すると帝国が回らなくなる。苦渋の折衷案を受け入れるしかなかったのだ。


(エリザが実家で軽い扱いを受ける、価値のない娘だという事をシュテファンは知らないし、当然リーネル公爵側の人間だと思ってるわよね)


 エリザは美しい容姿で煌めく銀髪、露草(つゆくさ)のような瑞々しい青の瞳、そして華奢な外見をしている。


 リーネル公爵はもったいぶって、いかにも"手中の珠を預けます"、と仰々しく私を売り込んだ。

 だからまさかこの細さが栄養不足から来ているとは、誰も思いもしないだろう。


(見た目は、妖精のお姫様みたいに可憐だから)


 エリザの父と兄は権勢欲の塊で、女児など家の道具としか見ていない。

 年の離れたエリザの姉も、家門強化のため早くから嫁がされた。

 

 家族はエリザに貴族家の娘としての美麗な見た目のみを求め、さらにエリザ自身が大人しい子だったことから、彼女の予算は家令が横領。食事量を著しく減らされていた。

 家を(かえり)みない父は気づかず、小柄な娘だと思うに留まり、兄のベルントに至っては知ってて「それがどうした?」である。


 被服費や宝飾類も削られていたのに、「公爵家の娘がみすぼらしい恰好をするな!」と叱って終わった父。そんな父だからこそ、母に愛想つかされて、別居暮らしになったのだろうが。


(お母様、娘の私も連れて行って欲しかったなぁ……)


 嫌いな男の子どもは、たとえ自分の娘でも愛せないらしい。

 エリザの母は領地でひとり、謳歌していた。女主人の仕事とは?


 とりあえず父の叱責以降、家令の指示で外出着だけは用意されるようになったが、部屋着は依然、質素なまま。服下の肌着なんて見えないので言わずもがなで、肌は乾き、髪のツヤも良くなかった。輿入れが決まってから急に手入れされたとしても、限界があると思うのだ。


 身体の細胞が骨まで入れ替わるには七年必要。

 つまり今の身体は七年前の食事結果で出来てるわけで。


(おかげでこの体力のなさよ。入浴中に失神とか、冗談抜きで危険すぎる! そもそも結婚式のあと、初夜前にひとりで放置される皇妃ってどんなの? 普通、周囲に数人(はべ)って、失礼のないよう世話を焼くもんじゃないの?)


 思わずため息がこぼれる。


(皇帝が望まない花嫁だから、軽く見られたのね)


 いや、むしろ皇帝への機嫌取りかも知れない。

 リーネル家とシュテファンがバチバチやってることは、皇宮の使用人たちも知っている。"冷酷皇帝"に(おもね)る彼らは、私を粗雑に扱うことで、(あるじ)が喜ぶと判断した可能性がある。


 冷たい水が張られたバスタブに(ひと)り残されたエリザは、気の弱さから文句が言えず、自分でお風呂に魔力を注ぎ、水を温めて、浸かった。


(結婚前の忙しさで、ろくに食事と睡眠がとれてない時に魔力を使ったもんだから、疲労困憊よ)


 お湯の中で意識を落とし、沈み込み、あわや溺死!──してしまうところで、ハッと気づいた。


 そして私は、前世の記憶と共に浴槽から出たのだ。




 お読みいただき有り難うございます!

 こちら氷雨そら先生とキムラましゅろう先生の『シークレットベビー企画』参加作品となります。

 1月15日期限で1話滑り込めばセーフとお聞きし、急いで投稿している次第…!

 全2万文字くらいで完結予定です。よろしくお願いしますヾ(*´∀`*)ノ

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