第二話 その1
太鼓の音が響き渡った。
そうそうたる強者が、その威容を並べていた。
合戦の前の、陣の中。
ある者は手槍をしごきつつ、ある物は野太刀を自分の手に結わい付けて、ある物は長巻の刃をささくれ立っている部分を砥石で舐めていたり。薙刀の鞘を払いジッと見つめている者。
御姫様、いや、殿、いかがいたしましょう。
家臣が、下知を賜りに来た。
準備の総太鼓は響き渡った。
敵味方の布陣は終わった様子、後は総大将の合図があれば。
西軍、東軍の天下分け間の大戦。
父や、兄の跡を継ぎ、私はここの持ち場を任されていた。
戦国時代の終盤、後の世にはそう呼ばれる時代だと聞く。
数年前。
もうそろそろ、御身を固まりあそばせ。
近隣の国々は戦国の世の習いとして、政略結婚、が人の一生を決めてしまうのが至極当たり前としていた。
家臣は、さっきの科白をもう何度も言っていた。
私の愛だの、恋だのは、
一つの國を跨いだもの。
愛とは一瞬で変わるもの、國というしがらみの中では何の意味をなさない。
そう、思っていた。
だから、身を固めることも何の意味をなさない。
そう信じていた。
目を通していただき、ありがとうございます。また、引き続き彼女の物語にお付き合いくだされば幸甚に存じます。




