第8話 目 通せんぼ
私が中学生の頃に体験したお話である。
いつもと同じように友達と放課後駄菓子屋のベンチでたわいもない話をしていた
友達との話は尽きないものだ。
ここからは友人をM美と呼ぶ事にする
駄菓子屋のおばちゃんに
「あんた達もう結構遅い時間だよ?
」と声を掛けられ時計に目をやると19時30分を回っていた。
いつのまにそんなに時間が経ったのだろうか
慌てて荷物を持ち
「おばちゃんごちそうさま!」
と声を掛けて駄菓子屋を後にした。
あたりはすっかり暗くなっている
M美の家にはいくつかの帰り道があった。
一つは急な階段、
ここは運動嫌いな友達は疲れるからと滅多に使うことがなかった
もう一つは
急な坂道この道も夜は真っ暗で街灯がほとんどなくあまり使わない
あとの二つは
急な坂だけど近道になっている所と
真っ暗な木々が多い茂った坂道だった。
いずれも高台の方に住んでる友人宅に帰るには登らなきゃいけない。
夜も遅いこともあって
1番近道の坂から帰ることにした
私の家は隣の坂を登ってかなきゃならなかった為
M美を坂の下で見送ることにした。
「また、明日ね!」
M美に手を振る、
手を振りかえすM美の奥
坂の中腹に人影が見えた気がした。
誰かいたっけ?
さっきまで誰もいなかったはず..
薄暗いから見間違いだろうか目を凝らしてみるとやはり人影がある。
背中がゾワッとした嫌な汗が流れる
「M美!
私送るから反対の坂から一緒に帰ろ!」と叫んだ。
必死な私の様子に不思議そうに登り掛けていた坂を下ってくる
「せっかく途中まで登ったのにー」
と不服そうなM美の手を取って隣の坂に向かった
木々が鬱蒼としている坂の方
「こっちの坂暗くて怖いんだよ」
というM美の手を引きながら殆ど無言で家の前まで送り届けた。
「なんか変だよ??」
と不思議そうにするM美に
「また明日ね!」と言い急いで坂を降りた。
言えなかった。
目を凝らして見た人影
薄らとした闇の中
棒人間のようなものが何にも手を繋ぎ通せんぼしていたなんて。
あのままM美を見送っていたらと思うと
何かがあったかもしれないと
今でも背筋がゾワッとする。