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第36話 目 ポスター

これは私の母が若い頃に体験したお話である。


若い時母は一時美容師を目指していて

部屋にポスターやカット用のマネキンを置いていた


最初こそカット用マネキンが部屋にあるのはちょっと不気味ではあったが次第に慣れていった


海外のオシャレなポスターはとても気に入っていて

自分が寝ているベッドの真上の天井に貼っていた。


そのポスターはビビットなカラーで

6人の女性がそれぞれ違う髪型をしている

横顔がメインのオシャレなものだった。


それはある夜のことだった。

その日真夏って事もあり夜中でも寝苦しかった


薄がけ布団を足にかけていたが

いつの間にか蹴っ飛ばしていた


ハッ!と夜中に目が覚める


暑いとはいえ尋常ではない汗の量

冷えた体

頭に鳴り響く動悸の音。


金縛りになって目が覚めた

暑いはずなのに寒い...


部屋のどこからか

話し声が聞こえる

金縛りを振り払おうとするが全く動く事が出来ない


視界が固定されたかのように自分の真上

ポスターから目が離せなくなった。


天井に貼られた6人の女性が映っているポスター

横向いているはずなのに

その全ての視線がこっちを向いていた。


棚がある左の方からも強い視線を感じる

僅かに動く視線で左側を確認した


雑誌とインテリア、カット用マネキンが置かれている左側の棚


カット用の目をつぶっていた筈のマネキンが

目を見開きながら口をパクパク動かしている。


ポスターの方に視線を戻すとポスターに映る顔も目を見開きながら口をパクパク動かしていた。



「「◎△$♪×¥●&%#?! 」



何を言ってるか聞き取ろうと耳をすました瞬間

意識が遠のいた。

遠のく意識の中

聞き取れた言葉は



「こっち見てぇーこっち見てぇー...」



朝起きてポスターを確認すると元の状態に戻っていた。


ただ...

カット用マネキンの目が見開いたままって事は

昨日の出来事は

夢ではなかった事を証明するのに十分だった


ポスターはもちろん外して

カット用のマネキンはビニール袋に包んで

押し入れにしまい込んだのは言うまでもない。


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