第17話 目 乳母車
これは中学生の頃M美の家に泊まりに行った時の話である。
M美と私は今も付き合いがあるほど大親友で
家族ぐるみで仲がいい。
M美のお兄さんは霊感が強く
怖い話が大好きな私はお兄さんの話を聞くのが毎回毎回楽しみだった。
その日も夜になってM美のお兄さんが帰ってくると怖い話を教えてくれた
「この寝室頭元にベランダがあるだろ..?
真夜中になると乳母車を押した女がベランダの窓に向かって
ゴンッ...ゴンッゴンッ…ゴンッ!
中に入ろうとぶつけ続けるんだよ」
怖いのが少し苦手なM美は
「ちょっと寝れなくなるじゃん!辞めてよ」と怒りながら言う。
そんなの気にせずお兄さんは
私の目を真っ直ぐ見ながら
「本当だから夜中に見てみな」と言うと自室に戻って行った。
「そんな話聞いたら眠れなくなるじゃんね!お風呂入りに行くから付いてきてー」
M美に引っ張られながら下の階に付き添う。
待ってる間も先程の怪談が気になっていた
本当の話だろうか…?
お泊まりってこともあり学校の話やテレビの話をしながら夜更かしをしていた
話してた途中で急に静かになる
「あれ...寝ちゃったかな...」
いつの間にかM美は静かに寝息をたてていた
目をつぶって眠ろうとするが先程聞いた話が脳内で再生される
作り話だろ...そう思った瞬間
ゴンッ!
えっ...
頭の上から何かをぶつける音がする
ベランダの窓はすりガラスのようになっておりハッキリとは分からないのだが
人影が立っていた。
ゴンッ…ゴンッゴンッゴンッ…
何かをずっと窓にぶつけ続けている
結構大きな音なのに隣に寝ているM美は全く起きる様子はない。
ゴンッゴンッゴンッゴンッ....
その音は明け方まで続き私もいつの間にか疲れて眠ってしまっていた。
翌日の朝
M美のお兄さんがニヤニヤしながら
「来たろ?乳母車の女」
そう嬉しそうに言ってきた。
夢じゃなかったんだという驚きと同時に
お兄さんの霊感の強さにあらためて背筋がゾワッとした。