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忘れられ姫は精霊の愛し子でした~鏡屋さん始めます~  作者: はにか えむ


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58.教会2

 祈りをささげていると、イデアは突然水の中に引きずり込まれるような感覚を覚えた。あまりに勢いよく足を引かれたため、呼吸ができず息が苦しい。

 パニックになりながら水の中でもがいていると、優しい声が聞こえた。

『大丈夫だよ。愛しい子。もう息ができるはず。落ち着きなさい』

 その声は穏やかなのに従わなければと思わせる何かがあった。イデアはもがくのを止め声に従って呼吸を整えた。

 イデアの視界はどこをどう見まわしても、光を受けてキラキラと輝く美しい水だ。水の中なのに呼吸ができることにイデアは混乱していた。

『落ち着いたかい? 愛しい子。私の媒介。精霊の王たる私の力を届ける者よ』

 水の音と合わさって聞こえるこの声は、精霊王のものであるらしい。イデアはこの現象が精霊王の起こしたものだと知って安堵した。

 

『精霊の檻を見つけたね。イデア。この度の媒介である君の仕事は、古の邪術を復活させようとする組織を壊滅させることだ』

「それが、私の使命なのですか」

 水の中でしゃべることができるのか不安だったが、口を開いてみれば何の抵抗も苦しさも無く喋ることができた。

『そうだよ。愛しい子。あれは危険なものだ。どんな邪術も、私の愛する精霊たちを犠牲に発動するものなのだから』

「どうして私が愛し子なのですか?」

 イデアは聞いてみたかった。自分の何が精霊王のお気に召したのかわからなかったからだ。

『どうして……? 私の力との親和性の高いミラメアの血筋の中で、変わった魂を持った子だったからだ。たまたま目についたからね』

 たまたまと言われてイデアはなんだかもやもやした気持ちになった。まるで誰でもよかったみたいではないか。

「誰でもよかったんですか?」

 聞かなければいいのに、イデアはそのまま思ったことを口に出してしまった。

「私の力との親和性が高ければ誰でもいいよ。ミラメアにはたくさん子供がいるから、君が失敗しても大丈夫。次の子に頼むだけだから」

 イデアはしばらく無言で考えた。イデアが無理なら次が居ると知れたことはイデアの心を軽くしたが、一つだけ気になることがある。

「もし、私が使命を果たせなかったら、お母様との約束はどうなるのですか?」

『彼女は一度私と契約を交わした。その代償はイデアが使命を果たすまでイデアには会えないということだ。使命を果たせなければ会えることはないよ』

 それではイデアはなんとしても使命を果たさなければならない。イデアにとって一番の願いは母に会う事だ。

 

『クリーズメイに行きなさい。そこの様子が少しおかしいんだ』

 イデアの心境を気にすることも無く、精霊王は語る。

 愛しい子といいながら、精霊王にとってはイデアなど大した存在ではないのだろう。イデアはそれくらいの存在の大きさを精霊王に感じた。

「わかりました。……私が使命を果たしたら、必ずお母様に会わせてくださいね」

『もちろん、自由にしてかまわないよ』

 その言葉を最後に、イデアの意識は闇に沈んだ。

 

「……デア……イデア!」

 目が覚めると、アランさんとロランさんが青い顔でイデアを揺さぶっていた。

「イデア!良かった。目が覚めたか」

「急に倒れるから心配したんだぞ」

 耳飾りを外しているから、どちらがアランさんでどちらがロランさんなのかイデアには見分けがつかなかった。

 二人いわく祈りを始めてすぐにイデアは倒れたらしい。

 目を覚まさないので心配していたようだ。

「すみません、精霊王とお話ししてて……」

 正直にあったことを話すと二人は眉間にしわを寄せる。

「クリーズメイって、ミラメアへの国境がある街だろう?」

「……とりあえずビィさんに連絡するか」

 三人は教会を出ると、配達屋に行った。配達屋は手紙や荷物を届けてくれる。日本のようにすぐ届くわけではなく、場所によっては何か月もかかるが帝都内なら数日もかからない。

 アランさんが配達屋の隅の手紙を書けるテーブルで手紙を書くと、きょろきょろと周りを見回した。

「お手紙、出さないんですか?」

「いや、出そうと思って探してるんだよ。イデアの護衛」

 イデアはそういえば護衛がついていたのだったと思い出す。なるほど、確かに護衛に直接渡した方が早く届くだろう。

 アランさんは探し出した護衛に手紙を託すと、カフェに行こうとイデアを誘った。

 

少し更新不定期になります。もうしわけありません。


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