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忘れられ姫は精霊の愛し子でした~鏡屋さん始めます~  作者: はにか えむ


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47.行商2

 万華鏡の在庫を幌付きの馬車の中に詰め込んで、イデアたちは行商の支度を終わらせる。向かうのは小さな村なので、チーズなど日持ちのする食料も売るために馬車に乗せた。

 今日は出発日だ。今日からおよそ三日かけてソーア村にいき、三日かけて帰ってくる。

「ソーア村は十年ほど前に開墾してできた小さな村だ。帝都のそばだから田舎よりは土壌が悪く収穫量は少ないが、今年の収穫量だけなぜか異常に上昇している」

 名前を聞いたところアドニスさんという騎士が、ビィさんに報告している。早速村について調べたなんてさすがは騎士だとイデアは思った。

 話を聞くと、どうやら精霊の檻が設置されて一年ほど経っているようだ。精霊たちが心配だ。

 

 アドニスさんが御者席に座ると、ルーラとエヴェレットも幌の中に乗り込む。ビィさんはドンおじいさんと出発前の打ち合わせをしている。

 イデアとアゲハも幌の中に荷物と一緒に乗り込んだ。

「乗ってみると意外と悪くないかも?」

「イデア、クッションあるからこれに座って」

 ルーラからクッションを受け取ると、イデアは床に座る。ルーラは荷物の入った木箱を椅子にして座っているので、ちょっとずるいなとイデアは思った。

 同じく床に座ったエヴェレットは苦笑している。狭いので誰かは木箱に座らないといけないのだが、エヴェレットは体が大きいので座ると木箱が壊れそうで怖いのだという。

「明日はその場所変わってね。ルーラ」

「はーい」

 ルーラは元気に言うと箱からまだ組み立て前の万華鏡を取り出した。万華鏡の在庫は十分にあるのだが、道中暇だから作りながら行こうということになったのだ。馬車の中で細かい作業をして馬車酔いしないか心配だ。

「よし、出発するぞ」

 ビィさんが幌を開けて中に乗り込む。ゆっくりと走りだす馬車からイデアが鏡屋を見ると、みんな手を振って送り出してくれた。

 イデアはみんなが見えなくなるまで手を振り返す。とうとう旅が始まるのだ。

 

「ビィさんって第二特殊部隊の隊長なんですよね? どんな部隊なんですか?」

 出発した馬車の中で、エヴェレットがビィさんを質問攻めにしている。エヴェレットも騎士に憧れがあるのだろう。

「第二特殊部隊は主に魔物の討伐をするのが仕事だ。だが隊員はみんな何かしら秀でた能力を持っている。だから隊全員で動くことはほぼ無いな。能力が必要になるたびに他の隊に組み込まれて活動するのが普通だ。君ももし騎士になるならうちの隊配属になるだろうな。戦いに応用できるギフト持ちは貴重だ」

「へぇ、じゃあビィさんもギフト持ちなんですか?」

「いや……ギフトは魔物化した時に失われた」

「そうだったんですか……言いにくいことを聞いてすみません」

「いや、かまわない」

 二人の会話を聞きながら、ルーラと二人で万華鏡を組み立てる。ビィさんとエヴェレットはなんだかとても仲良くなっていた。

 イデアはビィさんの横顔を見つめて考える。なんだかどこかで見たことがあるような気がするのだ。もしかしたら城で会ったことがあるのかもしれない。城には十数名だが魔物化した騎士が居たのだ。遠くからその姿を見ることもあった。

「そろそろ休憩にしよう」

 いつの間にか太陽は真上までのぼっていた。アドニスさんの提案で、水辺に馬車を止めた一行は休憩する。

「ああ、お尻が痛い。これがあと三日かぁ……」

 ルーラのぼやきにイデアは同意する。はっきり言って馬車旅は過酷だ。外にいるうちに体を伸ばしておかないと、そのまま固まってしまいそうだ。

「アドニスさん、お疲れ様です。ずっと御者でしたが大丈夫ですか?」

「ああ普段はずっと馬に乗って移動していたから、むしろ御者は楽でいいよ」

 騎士だから馬車に乗ることは少ないのだろう。アドニスさんは全く疲れていないようだった。

「それに魔物化しているからな。体力と腕力は普通の人間の比じゃないんだ」

 そんな会話をしていると、エヴェレットが興味を持って話しかけてくる。

「一度稽古をつけてもらえませんか? どれだけ強いのか興味があって」

「かまわないよ。俺も……ビィも対人戦闘の経験は訓練くらいでしかないが、それでも最低限の戦い方なら教えられる」

「ありがとうございます!」

 嬉しそうなエヴェレットを横目に、イデアは昼食に簡単なスープを作ろうと鍋を取り出す。

 旅は思っていたより穏やかで楽しいものだった。このまま何事もなくソーア村までたどり着けるといいなと、イデアは思う。

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