ゆいこのトライアングルレッスンU2〜夢オチ編〜
「おやすみなさい.....」
声優巽悠衣子、明日も精一杯頑張ります.....
あっという間に眠りは訪れた。
「.....いこ....ゆいこ....」
誰かに揺さぶられているのを感じ、意識がゆっくりと浮上して行く。
ん....だれ.....?
「ゆいこ!」
耳元で長年よく知る声が響き、はっとして目を開いた。
「おーい、ゆいこ〜?生きてるか〜?」
明るめの短髪のイケメンが超至近距離で私を覗き込んでいた。
「へっ!?」
「お、起きたか」
イケメンがニヤリと笑う。
金髪に近い色の短髪のその青年は、紺色のスクラブを着て、その上に若干くたびれた感がある白衣を羽織っていた。
「脅かすなよ、お前は・・・」
イケメンくんの背後からまた聞き慣れた別の声が響き、パシッとイケメンくんの頭を軽く叩いた。
「ゆいこ、気分はどう?大丈夫?」
最初のイケメンくんを押しのけるように覗き込んで来た優しい声の主は黒髪で、こちらも紺色のスクラブの上に、クリーニングから帰って来たばかりのようなパリッとした白衣を羽織っていた。
「だ、だれ!?」
慌てて毛布を鼻の頭まで引っ張り上げる私を二人のイケメンが顔を見合わせ、怪訝な顔で見下ろした。
「ゆいこ?」
「大丈夫?」
そこでふと気づいた。
二人の口から発せられるその声が両方とも長年お世話になっている先輩の声であることに。
「え?下野さん?」
困惑気に問う私の額に黒髪の青年の手がゆっくりと伸びてくる。
金髪の青年も私の手首にそっと触れる。
「・・・熱はない」
「・・・脈も正常」
あ・・・もしかしなくても・・・これは・・・
「たくみ?ひろし・・?」
「あ、よかった、記憶喪失とかではなさそうだな。」
ひろしが下野さんの声でホッとしたように言う。
「寝ぼけてただけだろ?」
たくみも下野さんの声でいつものように私をからかう。
いつものように?
たくみもひろしも・・・
私の妄想の世界にしか存在しない人物だったはず。
下野さんに命を吹き込まれ・・・具現化したのだろうか。
いやいや、そんな小説のような話があるわけが・・・。
あぁ、そうか、これは夢だ。
そう気づいた途端、意識は遠のいた。
「おはようございま〜す!あれ?巽、寝てます?」
遠くの方で聞き慣れた先輩の声がする。
「巽!」
「わぁ!!」
突然耳元で名前を呼ばれ、飛び上がった。
「おはよう。大丈夫?疲れてる?」(ひろしっぽい声)
「ひろし?」
「は?どうした?」
「あれ?下野さん?たくみとひろしは?」
「は?何言ってんの?」(たくみっぽい声)
「たくみ?え?」
「えっと巽・・・?」
「あ〜・・・夢かぁ・・・せっかく!!!せっかくたくみとひろしの白衣姿だったのに!!しかも研修医っぽかったかも!!きっとそうだよね!?下野さん!なんで起こしたんですか!せっっかく研修医のたくみとひろしと一緒だったのにぃ!!!!」
突然叫き出した私に送られる下野さんの冷たい視線を感じながら、私は机に突っ伏した。