74.灰の王
「【超強襲】【天破砕】」
「【瞬】【斬】!」
お嬢様との同時攻撃。前後で挟み撃ちしたものの、どちらも灰の王の周囲に漂う灰の粒で止められた。
ハルが防戦の中で探った情報にあった、神刀が灰になってその粒子ひとつひとつが相応の力を持っているらしい。そのため、鎧に隙間ができるハルは棒立ち戦法を封じられていたらしい。おかげで丸一日ずっと盾を精密操作しておかしなテンションになっていたが、今はそれどころではない。
「無駄なことを」
そう言いながら、灰の王が指を鳴らすと同時に灰の粒がこちらに炸裂。
お嬢様は剣を振り回して吹き飛ばし、僕は【超強襲】の揺り戻しで回避した。
しかし、反撃の隙もなく今度は降っていた灰がすべて槍となって降り注ぐ。逃げ場の無い飽和攻撃である。
「【朱月降誕】【新月】――」
お嬢様とともに一時離脱、すぐさま灰の槍の雨の上に戻った。向こうのリソースがおおすぎるためあ長期戦は不利、一気に攻めに出る。
「【繊月】【天破砕】」
一振りで、敵の全身目掛けて全方位から飽和攻撃のお返しをした。
当然向こうはこれを防ぐために灰を使うはず。
もとはスメラギ・トオルなので、これが連発できない必殺技というのは用心深い性格からして調べているはず。となれば、念入りに一撃もくらわないように防御するはず。
「【灰嵐】」
案の定、一帯の灰を一瞬で集めて自身の周囲覆っている。それによって完全に防がれる――
「【闇陽降誕】【極黒点】」
賭けではあったが、読み通り慎重を期してしっかりスキル発動で守ってきたので、影からぺんぎんさんが出てきてその封印を行ってもらった。
この攻防はコンマ数秒の出来事。ぺんぎんさんでなければ発動を確認してから封印なんて不可能だっただろう。
だからこそ刺さったわけだ。
「なっぐぅ……!?」
灰の嵐は途中で制御を失い、集まった灰は地に落ちてこちらの過剰な割合ダメージがすべて命中した。ちゃんと灰の王のHPゲージが全損しているのも確認できる。
復活するようなスキルがあれば面倒だが――
『灰の王トオル(Lv.5000)を討伐しました』
『複数のミッションを――』
よかった、きちんとゲーム側から知らせてくれた。他にもミッションの報酬やらイベントの早期終了のお知らせとかがドンドン流れている。
うるさいので無視。
「やりましたね。これで――」
「死体、なんか変ですわ。まだ浮いて――」
《まずいですぞ! 片母様がお目覚めに――!》
「騒々しい」
――突如、嵐が吹き去った。
同時にぺんぎんさんが瞬く間に灰になって吹き飛んでしまった。
『【純白】により“灰崩壊”を弾きました』
『【純白】により“性質反転”を弾きました』
僕とお嬢様は無事――というにはボロボロだった。身体には異常は無いが、武器と装備が灰になってしまったのだ。なぜか【修繕】も効かなかったので本当にお嬢様の武器だけが頼りである。ちなみに、ゲーム的な都合なのか一応下着だけは残っていた。
「ほう? 星の力も、あやつの力も無しにこれを耐えるか」
まずい。こうも簡単に灰をばらまいた本人(?)であろう推定“破壊の母”が現れるとは。しかも今の攻撃で僕のオリジナル装備が全損してストレージへ送られている。そのため【天破砕】が撃てない。
「まあよい。王の器を壊した礼だ。痛みなく殺してやろう【破壊砲】」
視界を塗り替えんばかりの光が迫り――二つの影がそれを遮った。




