シオレVSグロウ
「やーやー、わざわざ待ってくれたんだねー? あ、自己紹介するのが君達の流儀なんだっけー? ウチはシオレ、よろしくー」
「……オレはグロウだ。見え見えの罠に飛び込むほど獣ではない」
「なるほどねー、君があの王様とお侍さんを止めたんだー。脳筋に見えて冴えてるねー」
「おしゃべりに付き合うつもりはない」
「そー? じゃあはじめよっか。言っとくけどさー。君じゃあこの包囲網は破れないよ? どこかのカードゲーマー少年のおかげで全部の手札は見えてるんだしー」
「烏合の衆がどれほどいようと負けるとは思えないな」
「そうだねー。総合火力を鑑みても君には届かないけど――肩腕の君をずーっと相手するくらい、余裕だよー。【魂分裂】」
シオレは、自身のオリジナル装備のスキルを発動し、作戦に参加しているプレイヤー全員の肉体に入った。数十人の体を同時に操作し、それぞれの持つオリジナルスキル、オリジナル装備を活用し、即席のレイドパーティーを無理やり完璧な連携に持っていくのである。身体を貸し出した後、邪魔にならないようにプレイヤーは身体を残してログアウトした。
「いやー、ボス戦の貢献度で色々変わるから調整が大変だったよねー」
「【紫炎大帝】」
「【乱数封印】【四方転がし】」
――――
――
四方八方から強力なオリジナルスキルなどが飛び交う。転移で回避しようとするグロウだったが、不発に終わって直撃した。どれもデバフ系のものだったのは、シオレの狙い通りである。
パラメータで圧倒的な防御力と、スキルで貫通を向こうするものがあるのは知っていたので、倒すのではなくひたすら動きを封じ、火力を下げる方向で動いているのである。
転移を封じたのは――
「シエラちゃんが来れないから、借りてきてるんだよねー」
シエラが参加できないと知った時に彼女から借りていた魔道具、内側からの脱出と転移を阻害する{蟻地獄}の効果であった。
「ならば! 【灰日照り】【干ばつ】!」
グロウは空間系は読まれていると考え、巨大化してフィジカルでの勝負に出た。
全長数キロにわたるほど巨大である。
「毒地獄へご招たーい」
「【絶望侵食】」
シオレが入ったカナタによって与ダメージを倍にする。そしてグロウの頭部のある上空では――
「一名さんご案内!! やっちゃえふたりとも!」
「姫さん! 【万死千解】!」
「ええ! 【状態加速】!」
ハル(本人)の盾に乗ったエンジョイ太郎(本人)とトネリ王女は、毎秒最大HP1%のスリップダメージを与える毒のオリジナルスキルと状態異常の効果時間を圧縮するスキルを同時に発動。
毒のスキルに効果時間はなく自然解除されないため、通常の五倍の速度でダメージが加わり、そこに【絶望侵食】の効果も加わって、結果的に毎秒最大HP10%の毒を浴びることになる。毒は上空の頭部付近に蔓延しているため――
「無駄だ」
「徹夜テンションガード!」
咄嗟に二人を攻撃したグロウだったが、そこは最硬のタンクが盛大に吹き飛ばされながらも受け切った。
追撃しようとしたが、悪寒が走って中断した。
巨大化を解除して毒の領域から脱するグロウ。
それに対してシオレは残念そうに肩をすくめた。
「あー、間に合わなかったかー。君の無限復活スキルを封印できるオリジナルスキル、準備してたんだけどなー」
「……」
グロウはパッシブスキルで一秒で半分回復する【無限回復】と、一分間HP1が残り続ける【短き永遠】によって実質的に無限の耐久が可能だ。
しかし、シオレの言葉が本当だった場合、自身を脅かす可能性がある。偽りだった場合でも、グロウ目線、得体の知れない軍師のシオレには他の狙いもあるように映る。
「ならば先に潰すのみ――!」
「辿り着けるかなー?」
シオレを狙い、真っ直ぐ拳をぶつけに向かうが、その間には残機が二つあるプレイヤー達が阻む。
攻撃力の低下系デバフや物理的な罠、上空にいるハルの援護などで四、五人ごとで対応すれば数発は保つ。
「(ウチのオリジナルスキルは温存……というかたぶん今のレベルじゃ足りないからなー。早く来ておくれー)」
ジリ貧の戦場で、賭けに近い期待だけを信じて、シオレは言葉巧みに相手を疑心暗鬼に陥れ、耐え忍ぶのであった。




