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正統派女装メイドが“Original Trajectory Online”で理想のお嬢様を育成するようです!  作者: 御神酒
『今は亡き忘却の島』

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73.守って滅ぼすか、負けて滅びるか

 

 時間稼ぎをやってくれている二人に一日だけ任せ、僕は仮設の避難所にて炊き出しを振舞っていた。といっても食材は持ち寄ってのものなので、こちらから出すつもりはない。


「よし、これで全員ですね」

「何から何まで悪いねぇ。アンタもあっちで話聞くべきでしょうに」


「いえいえ、構いませんよ」


 一緒に炊き出しをしていたおばさんから後片付けは任せな、と言われたので、絶賛会議中のテントに戻る。


 と言うのも、既に対戦カードはシオレさんによって決まっているから、寝る前の最終確認をしに来たのだ。

 ユキさんは唯一真っ向から勝てそうなレオさんが。灰の王は手札の多い僕とお嬢様が。

 その他プレイヤー総出であのシンプルに強力なグロウさんを相手取る。終わり次第、状況に合わせて他の応援に回るという手筈である。テントの中で話していたのは、その集団戦をするグロウさん戦の作戦会議らしい。ちなみにやる気満々だったアリア女王とハツハ騎士団長にはその間の一般人の護衛をお願いしている。




「お、そっちは終わったー? こっちもこっちで終わって早めに解散にしたよー」

「そちらはやれそうですか?」


「ま、ウチらの予想が正しければ……というかメタ的に考えれば()()し、早まった分どうなるかって感じだからー、時間稼ぎくらいはできるってとこかなー」

「ええ。任せましました」


 僕とシオレさんは、灰の軍勢の動きに対して、逃げ延びて数年も経ったシエラさんが何かしらのアクションを起こしてもおかしくないと読んでいる。なので現状討伐が難しそうなグロウさんは他のマッチアップに横槍を入れられないように総出で抑える予定なのである。


「逆にそっちは大丈夫ー? 増援なしの場合はキッチリ倒してもらわなきゃいけないわけだけどー」

「お嬢様と私に不可能はありませんから」


「……精神論だけが根拠じゃないよねー?」

「ハルから情報も頂いていますし、動きの読める相手に負けるほど馬鹿じゃありませんので」


「あの子が耐久に全振りしてる以上、全部の手札が開示されてるわけじゃないからねー。どんなであろうと、世界の敵の王、言うなればラスボスとか裏ボスとかそのレベルだからー、十分に気をつけてねー」

「言われずとも油断なんてしていませんよ」



 何やらかなり心配されているようだが、格上であろうと、丁寧に戦えば負けるとは思えない。グロウさんとの交戦ではかなり足でまといになってしまったが、明日の戦闘では汚名返上する。

 星の脈動(スタースキル)さえあれば、そう苦労することなく撃破できるはず。

 僕はそのままお嬢様とともにテントに入り、ログアウトして、明日の分の食い溜めをしてから眠りについた。



 ――――――

 ――――

 ――


 早朝から昼にかけて、最終調整として軽くウォーミングアップし、都の前へ戻ってきた。


「お嬢様、参りましょうか」

「そうですわね! やってやりますわ!!」



 ともに走り、途中攻撃してきた相手の幹部は引き受けてくれる方々に任せて、倒壊したスメラギ・トオル邸で瞑想している灰の王(スメラギ・トオル)に武器を構える。


「君らは戴冠を妨害すべきだった。この姿になった以上、もはや(ちん)の敵になる者など存在しない」


「ぷっ……お嬢様、お聞きになられました? あの人、調子に乗って自分のこと朕とか言ってますよ」

「っ……ちょっと、ヒビキ、今くらいは許してあげませんと!」



「……くだらん挑発だ。まとめて灰となれ。【灰の楽園】」


 とは言いつつ挑発に乗ってくれた。

 ハルから得た情報に無いスキルだ。地面が灰でできた砂浜のようになり、空から灰が降る。見たところここら辺だけだから他の戦場に影響は無さそうだ。



『【純白(ブランシュ)】により【灰の楽園】を弾きました』




 例えここが灰だらけになろうが、お嬢様と僕には関係の無いこと。灰にも染まらない純粋な色のまま、定められた運命に抗うため駆け出した。



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