都脱出戦・表
ヒビキから連絡が来たハルは、即座にレオとトネリ王女に要点だけを伝えて、連絡通りスメラギ・トオルに注意して都の外へ走り出した。
王女の護衛にレオと太郎をつけて先行してもらい、追ってくる灰の勢力にはハルの盾で足止めしつつカナタの魔法で間引きつつ退く。それだけのこと――彼女が現れるまでは。
「さっきぶり。王女さんは“答え”出た?」
脱出経路を塞ぐように、刀に手を置いた少女が。
「……ええ。独りよがりの力なんて要らない。私は、誰かを傷つけた上でしか味わえない幸福なんて要らない。生まれた世界が違ったとしても、大切な人が傍にいる、小さな幸せひとつあれば十分よ」
「姫さん……」
「そ。だってさ、王様。君以外の王族は頑固だね」
「それは嫌味と受けとっても?」
フラフラと、灰の軍勢をかきわけて、一人の顔色の悪い男が歩いてくる。
「トオル様……いや、人類の反逆者とでも呼んだ方がいいかな?」
「レオも当たりが強いですね。これでも凡人の君をかなりよくしてやったと思っていたのですが」
そう言ってスメラギ・トオルはレオに――否、レオの腰にあるついぞ抜けなかった神刀に手を伸ばす。
「“神刀に選ばれし希望の勇士”、実に皮肉ですよね。選ばれたのは君ではないし、希望をもたらすことなんて不可能なのですから」
シュッと神刀は彼に呼応するかのように手元へ舞い戻った。本来の持ち主の手に。
「【神刀解放】」
ゆるりと刀を抜き、黄金の髪色になったと同時に、スメラギ・トオルは自身の首に刃を当てた。
「さようなら、弱いトオル。そして、自由を奪ったこの世界を壊すとしようか。新たなワタシ――【戴冠】【灰の王】」
圧倒的な力の奔流が周囲を渦巻き、灰となってすべてを吹き飛ばした。病弱なスメラギ・トオルの全てが灰と化し、王は空中でレオだけを見つめていた。
「ハルさん、だったね。ヒビキに伝えておいてくれるかな。あとは任せたって」
「……死ぬつもり?」
「まさか。――予言が本当なら死にはしないさ」
「?」
「とりあえず守るのは得意そうだし、よろしくね」
そう言って目配せをして、太郎、トネリ王女、カナタは走り出した。
ハルは盾を構え――レオを同じ方向に吹き飛ばした。
「なっ――」
「私は残機が残ってるから時間稼ぎに最適、それにタンクが先に仲間を死なせるとか、ナンセンスなんだなー! ほら、しっしっ! プロゲーマーの底力なめんなー?」
それと、とハルは指をつき出してダンボールの鎧の中で笑った。
「ヒビキから聞いたよ。こいつを二人で倒すんでしょ? 情報収集は任せんしゃい!」
「…………すまない。必ず約束は果たそう!」
駆け出すレオを確認し、ハルは全ての盾をダンボールに纏った。
「さあ来い! 【挑発】!」
完全無敵の棒立ち鎧に技を打ち込ませ、無視しようとしたら盾を飛ばして殴る嫌がらせ耐久戦が幕を開けたのだった――――
■◆■◆■
一方その頃、ヒビキ達からグロウ戦を引き継いだシアースは自身のターンで冷や汗をかきながら展開を考えていた。
「防御硬い上回復札持ち、しかも攻撃を食らったらワンパンたぁ、おもしれぇ!」
彼のスキルによるカードゲームは、ステータスを参照したカードゲームのプレイヤーと、ターン制でHPを削り合うものである。
詳細は彼のステータス画面の半分を埋め尽くすほどであるが、彼の敵は自身のスキルしか使えず、シアースはオリジナルスキルの【相棒図鑑】をプラスで好きなモンスターを召喚し、それらを倒さないと彼本人には攻撃できないようになっている。【相棒図鑑】は過去倒したモンスターを貯蔵するものであるが、それ以外にもこのカードゲーム上では合成することで魔法や罠カードにすることもできる。
そして、当然彼が任されたのは片腕。
最低でも片腕は、デッキが尽きるまでに削りきらなければならない。
「魔法カード“砂上の楼閣”を発動! 次自ターンまで相手のスキルカードはコストマイナス1する代わりに命中しない! つづけて――」
かくして、都に残ったタンクとカードゲーマーは、果てしない持久戦を始めたのだった。




