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正統派女装メイドが“Original Trajectory Online”で理想のお嬢様を育成するようです!  作者: 御神酒
『今は亡き忘却の島』

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71.最適解が導くは

 


「――はっ!」

「おー、シエラおばさんも大変だったんですわね」


「……? 何か分かったのか?」


 使用した雲をストレージに入れておいてから、シエラさんの母親――ハツハ騎士団長の名前を借りて少女に擬態していた、シアスル王国の女王、アリアさんに、今見た情報を共有した。


「はあ……」


 流石に娘が無理して離れ離れになったと知ったら堪えるものがあるか。


「――流石は我が娘よ! であれば、残った我々が成すべきことも一つのみよな。ハツハ!」

「はっ」


「灰を、英雄どもと薙ぎ、故郷の安寧を取り戻す」

「どこまででも、着いて参ります」



 おー、一国の王だけあって強かだ。

 僕はひとつ気になったことを聞いてみた。


「ちなみに今国民の方々はどこに? それから先程の記憶がどれほど前なのかも教えていただけると助かります」

「そーですわ。シエラおばさんの頑張りは――」



「無駄になってない、というよりそんなことさせないわ。今は灰の侵攻が進んでいる西方向から遠ざけて東に拠点をおかせている。貴様らと出会ったあの村より少し南に逸れたところにな」

「はい。そしてその記憶は今からおよそ三年前です」


 そう言いながら、ハツハ騎士団長さんは顔に手を当て、その野暮ったい変装を解いた。深緑の髪をひとつに結っている、キリッとした真面目な女性といった印象である。


「……」

「どうしたの、ヒビキ?」


 気がかりだったことがある。

 ――それは、シエラさんがこのイベントに入場できなかったこと。

 彼女の記憶を見て、なにやらミッションもクリアしているが、これは必須ではないにしろ、本筋からは遠くない。

 シエラさんを親に会わせたくないとか、この記憶を隠しておきたいならプレイヤーにも見せようとしないだろう。それなら、もっと別の要因があるはずだ。

 鍵となるのは、ここが過去の世界だということ。

 ――とするなら、参加可能だった時に一番ややこしくなるのは、この時代のシエラさん本人がここに来ることだ。


「ヒビキー?」

「お嬢様、後ほどで」


 今不確定な予想を言っては、アリアさんに余計な期待をさせてしまうかもしれない。かと言ってお嬢様に隠し事は絶対に許されざる愚行なので、二人の時にお話するように伝えた。



「……わかりましたわー」


 こちらの意図を視線だけでなんとなく悟ったのか、笑顔で了承していただけた。



「報告しても?」

「ハツハ、あのふたりは気にせず進めよ」



「は。ここからはこの国の革命陣営に潜入し、得た情報です。連中を牛耳る親玉は、この国の第一王子、スメラギ・トオルの遣わしたユキと名乗る人物の傀儡でした。そして、やつらは灰の手先です」

「ほう」

「そこまでは革命どうこうはともかく、そこの繋がりはこちらも把握済みです」

「……」


「そしてここからが本題です。灰側の目的、それは――()()()の戴冠です」

「灰の王じゃと?」

「スメラギ・トオルを灰陣営の親玉にする、ということでしょうか?」

「……じー」



「はい。一度この都を襲撃、奪還させた後、この国の戴冠式に希望を覆すという悪趣味な計画を立てていました」

「確かに悪趣味じゃな」

「…………なるほど、それはおそらく()の計画ですね」


 やっとわかった。

 この都に来た時に僕らをユキさんのいるあの場所へ向かわせた理由を。



「「?」」


 アリアさんとハツハ騎士団長は首を傾げている。

 説明しようとしたとこに、案の定とばかりに、おんぶ中のお嬢様が僕の頭をポスポスと叩いて西の空を指さされた。


「――灰、来ましたわ」

「どうやら、向こうは情報が抜かれるかスパイを探すために私含めた危険をあの料亭に送ってハツハさんのことを確認、計画を修正したようです」


「なんじゃと……!」

「っ、向こうが上手だったか!」



 僕は急いでハルに全員の都の外までの護衛を任せる連絡を行い、()()()のもともとの計画を進めるための報告と、救援要請をシオレさんに送信しておいた。


「お二人は一般人を避難させながら一緒に都の外へ移動してください」

「貴様、陛下に逃げろと?」

「よい、ハツハ。何か狙いがあるのだろう?」


「はい。ヤツらは戴冠が目的――その後は王の誕生で勢力が強化されるはずです。指揮する者が増えるのですから当然です」

「ならば今すぐその芽を潰すべきでは?」


 ハツハ騎士団長さんは食い下がるが、ここは譲れない。こちらの目的もあるし、正直ここからスメラギ・トオル邸まで向かい、ユキさんレベルの幹部を相手して、となると時間的にも猶予がかなりある。戦闘中に戦力を強化される方が危険だ。


「敵は戴冠のためにすべてを尽くすはずです。であれば、その後は手薄になるはず。できるだけ向こうの駒になる、怪物化を避けて戦力を整えるべきです。こちらの被害の数がそのまま脅威に繋がるのですから」

「……なるほど」

「ま、こうしている時間も惜しいというわけじゃな。ゆくぞ、ハツハ!」


「御意!」



 僕とお嬢様は、住民の救助に向かった正義の味方を見届け、装備を変更する。お嬢様にも僕の反転色装備と同じ様なデザインのドレスに着替えていただき、それぞれ武器をとった。

 僕はデッキブラシを、お嬢様は姦しい剣を。



「では、廃品回収の慈善事業と参りましょうか」

「あの風車欲しいですわ!」


「解体してストレージに入れましょう。それと木材と石材、金属類も片っ端から頂戴いたしましょう」

「おー!」


 向かってくる灰の空にも臆することなく、二人で駆け出す。


 

「…………火事場泥棒」


 なんだか影の中から声が聞こえたような気もしたが、ストーカーのことを気にしている暇は無い。

 略奪……げふんげふん。廃品回収のお仕事は締切が短いのだから急ぎでやらないと。



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