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19.ワールドクエスト? そんなことより私のお嬢様の方が大事でしょう!

 

『――ワールドクエスト《護衛任務》を発見しました』



 ========

 ワールドクエスト

 《護衛任務》

 第一幕

 難易度:☆1

 謎の人物の子供をグランセル王国の第3の町、シアントス辺境伯の屋敷へ送り届けよ。

 基礎報酬

 ・BSP10

 ・SKP20

 ========



 何か出てるけど今はどうだっていい。

 ハルからも心配しているのか電話がきているがそっちも後でいい。というかアーヤさんが無事を伝えるだろう。勢い余ったせいで今は別々だが、そこまで遠くはないはずだ。うるさいので通知機能を全部オフにしておく。


 そんなことより、倒れている女性は優しく赤子を抱きかかえていたのだ。安心しきって眠っているが、僕はその子を見た瞬間に全身が震えが上がった。まさにビビッときたのだ。




「あの、大丈夫ではなさそうですが何か食べますでしょうか?」

「……ありがとう優しい人の子。でも、もうそんなことをしても()たないのは自分が一番分かってるの」


「……」

「見知らぬ優しい人の子、どうかこの子を、その町の屋敷の主のもとまで連れて行ってくれないかしら?」


「……理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「そんなに話せる時間は無いわ。でも、彼は信用の置けるから、この子を、リリィを、どうか――【継承】」



 そう言って女性は事切れ、そのままモンスターと同じようにガラスが割れるように砕けた。そして光の粒子は赤子に吸い込まれていく。ここの人達は死ぬとこうなるのだろうか。何とも味気ない終わりだ。

 残された赤子を起こさないように抱きかかえ、僕は幾重にも思考を巡らせてから、結論を導き出した。




「私は貴方様を主人――お嬢様といたします。例え世界の果て、太陽の中、宇宙の片隅であろうとどこまでも付き従いましょう。よろしくお願いいたします。リリィお嬢様」


「うぁぃ!」



 お嬢様は先程の女性と同じ特徴的な瞳を、寝ぼけたままこちらに向けられた。


『リリィ(Lv.1)が【主従契約】を発動しました』

『――【純白(ブランシュ)】により抵抗しました』

『【純白(ブランシュ)】の指定人物を個体名リリィに決定しますか?』



「はい。……あとリリィ様ね」



『【純白(ブランシュ)】の指定人物を個体名リリィに決定しました』


 アナウンスさん融通がきかないな。

 よし、クレーム……じゃなかった、GMコールで訂正できないか試してみよう。


『はいはーい呼んだ?』

「アナウンスさんをリリィ様呼びに変えてくれませんかね?」


『そんな無茶な……ちょっと待って確認するから』



 確認待ちの間に腕の中にいるお嬢様の様子を見てみると、地面を指していらっしゃった。

 そこには、先程亡くなった女性の遺品らしき、鍵穴のついたロケットペンダントがあった。


「ぁやぅ……!」

「かしこまりました」


 親の形見だと理解していらっしゃるようだったのでお嬢様の首にかけて差し上げる。

 ……うん、布切れ一枚に包まれているだけなのでしっくりこないや。ちゃんとしたドレスを仕立てないと。

 とりあえずSKP(スキルポイント)15を使用して【裁縫】を取得した。次の町でお嬢様に相応しい赤子用ドレスを仕立てよう。



『お待たせー、今後そういう設定も実装することにしたらしいから先に適用しとくってさ』

「ありがとうございます」


『いいってことよー。また何かあったら俺っちを呼んでねー』


 そう言って例のごとく消えていった。

 主従契約とやらでお嬢様に万が一が起きても復活できるようになったみたいだし――まあそんな万が一なんて起こすつもりは微塵もないが、ともかくまずはお洋服問題を解決せねば!


 何かを忘れている気はするが、お嬢様が風邪でもひいたら嫌なので町へ向かって走っていく。


 日はまだ沈みきっていないので普通に門の列に並ぶ。今のうちにステータスの整理をしよう。幸いお嬢様もぐうすか眠っていらっしゃるし。




 ========

 プレイヤーネーム:ヒビキ(R)

 種族:純人族

 種族レベル:(51→)84/100

 ジョブ:メイド(1次)

 ジョブレベル:30/30

 └器用20%上昇

 満腹度:73/100


 〈パラメータ〉

 ・[]内は1LVごとまたは1BSPごと(BSP,SKP 除く)の上昇値

 ・《》内は基礎値+レベル上昇分+ボーナスステータスポイント分+スキル補正値+職業補正値+装備補正値の計算式

 HP:2358/(1500→)2360[+10]《(100+830+300-50)×2》

 MP:1490/(960→)1490[+5]《(30+415+300)×2》

 筋力:(520→)786[+1]《(10+83+300)×2》

 知力:(520→)786[+1]《(10+83+300)×2》

 防御力:(520→)786[+1]《(10+83+300)×2》

 精神力:(520→)786[+1]《(10+83+300)×2》

 器用:(624→)943[+1]《(10+83+300)×1.2×2》

 敏捷:(520→)786[+1]《(10+83+300)×2》

 幸運:(520→)786[+1]《(10+83+300)×2》

 BSP:(310→)475[+5]

 SKP:(80→212→)197[+(2×2)]


 〈スキル〉

 オリジナル:純白(ブランシュ)

 通常パッシブ:所作(7→)8・全能力上昇(2→)3・裁縫1

 通常アクティブ:修繕3・調理(4→)6・侮蔑の眼差し1

 魔法:生活魔法3

 ジョブ:清掃11


 〈装備〉

 頭{天破のホワイトブリム}

 耐久値:78/100

 ・HP-50


 胴{天破のエプロンドレス}

 耐久値:74/100

 ・BSP,SKP除く全パラメータ2倍


 足{天破のストラップシューズ}

 耐久値:63/100

 ・【天蹴】

 └常時空中を自由に歩ける。


 武器{天破のデッキブラシ}

 耐久値:100/100

 ・【天破砕(フラージュ)

 └武器の耐久値を10%消費して、攻撃対象の最大HP10%を削る。

 CT:0秒


 └セット効果:獲得SKP2倍



 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲


 オリジナルスキル

純白(ブランシュ)

 効果:常に自身と、あらかじめ指定した者以外からのデバフ、状態異常を受け付けない。

 デメリット:常に自身と、あらかじめ指定した者以外からのバフを受け付けない。指定者は変更不可。


 通常スキル(P)

【所作】レベル:(7→)8 習熟度11/40

 立ち振る舞いに補正がかかる。


【全能力上昇】レベル:(2→)3 習熟度:8/20

 BSP,SKPを除く全パラメータ+300


【裁縫】レベル:1 習熟度0/5

 裁縫関連の行動に補正がかかる。



 通常スキル(A)

【修繕】レベル:3 習熟度24/1000

 素材を消費して装備やアイテムの耐久値の回復や破損状態を直す。素材は物による。

 CT:1秒


【調理】レベル:(4→)6 習熟度3/30

 補正のかかった作業を行える。

 ・切る

 ・焼く

 ・蒸す

 ・炒める

 更にMP5を消費して保有しているレシピを完全自動で制作できる。

(レシピ)

 ・{無表情メイド特製♡愛情皆無な野菜炒め}

 ・{無表情メイド特製♡実家風肉じゃが}

 ・{無表情メイド特製♡片手間コンソメスープ}

 ・{無表情メイド特製♡片手間たまごスープ}




【侮蔑の眼差し】レベル:1 習熟度:1/10

 視認した対象に5秒間“沈黙”を付与する。

 CT:10分



 魔法スキル

【生活魔法】レベル:3 習熟度19/25

 ・〖種火〗

 種火を生み出す。

 消費MP:1

 ・〖放水〗

 水を放つ。

 消費MP:3

 ・〖そよ風〗

 そよ風を吹かす。

 消費MP:4


 ジョブスキル(P)

【清掃】レベル:11 習熟度23/55

 清掃の行動に補正がかかる。


 ========



 レベルがかなり上がったのと、【調理】のレシピは自分だけで作ったものでないとレシピに登録されないのが分かった。その証拠にカルボナーラがレシピに無い。そもそもレシピで自動制作する機会は少ないので良いんだけどね。


「次!」

「はい」

 

 番が回ってきたので生産組合のカードを提示する。


「そっちの赤子は君の子供かね?」



 む、そこまで考えていなかった。

 素直にお嬢様呼びしたいところだが、そうすると貴族関連の問題だとここのお偉いさんの耳に入りかねない。アメリアさんのことが貴族に伝わるのは問題ないが、お嬢様はマズイ。特にここの領主の性質も確かめていないうちに知られるのは最悪と言っても過言では無い。

 いきついた結論は――


「その通りでございます。お恥ずかしながら先日生まれたばかりでして、この町で働いている旦那にサプライズで顔を見せに参りました。馬車に乗せていただいた商人の方は別の用事があるとすぐそこで別れましたのでちゃんと安全も確保していましたよ?」


「そうか、それならよし。通れ」



 即興での口から出まかせなので荒はあるだろうが、不審がられたりはしなかったようで無事町の中に入れた。


 その後近くの人に裁縫道具や糸、布が置いてあるお店の場所を聞いて即購入。広場のベンチに腰をかけて型紙も無しでお嬢様用のお洋服を仕立てる。こういう細かい作業は得意だし、いつか使うかもと練習していたからそれほど時間もかからずに出来上がった。


 フリルが随所についた白いドレスである。

 お嬢様はまさに天使――いや、天使程度では表現出来ない可憐さと美しさであった。



「世界一大美幼女の称号はお嬢様のものですね」

「あやぅ……」


 着せ替えたというのにすやすや眠っている。可愛いすぎる。


「極楽です……」

「散々無視しといて、随分楽しそうだね? …………このキチメイド!!」



 なぜかいきなり背後からチョップを食らってしまった。破裂しそうなくらい頬を膨らませたハルと、走って疲れた様子の皆が背後にいた。



「皆さん……そういえば居ましたね」



「忘れてたの!?」



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