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援護射撃9

 


 自分の知識が正しいって思い込んでるし、そもそもが、私みたいな劣等生の言ってる事なんて信じるか!だよね。

 過去の自分の横着が招いた結果とはいえ、面倒くーーーいや、どうしようかなー。


「……マイヤ先生。ヒナキの言う通り、亀の魔物に弱点の属性は無い。は、正しいと思いますよ。サクラ様の残した史実の、炎の魔法が弱点。が、間違っているんです」


 困っていると、何故かセルフィが私の意見に同意してくれた。お。私の言ってる事を信じてくれるの?あのセルフィが?


「セ、セルフィ様?貴方までそんな事を言うなんてーーどうしてそう思われるのですか?」

 まさかのセルフィの援護射撃に、一気に動揺するマイヤ先生。

 私の意見には一切耳をかさなかったクセに、セルフィの言葉には反応するんかい!


「僕も、この問題の答えに、正解は無い。と書きました」

 ピラリと、自分の回答用紙を見せるセルフィ。最終問題以外は、全ての問いに赤く〇が描かれている。


 くそ。こいつ、安定で最後の問題以外全問正解かよ。味方してくれてるとはいえ、何か腹立つな!


「実はつい最近、国の方で、文献の通り炎の魔法を使い、亀の魔物の討伐を試みたのですが、全く効果が無く、史実が異なって伝わっていたのでは無いか。と、議論が行われまして。近々、大々的に発表するつもりだったんです」

「そ、そうなのですか…?!」


 お!良かった。ちゃんと訂正されそう!ラッキー!


「この大馬鹿貧乏娘が、どこでこの情報を知ったのかは知りませんが、大方、どこかで聞き耳でもたてて知ったんでしょう。後の嘘臭い情報は、適当に100%、デタラメを述べて、自分が優秀で物知りだとアピールしたかっただけの痛い女なんじゃないですか?」

「結構な言い分だな、おい」


 黙って聞いてたけど、酷く無い?誰が痛い女だ!こっちは本当の事しか言ってないっつーの!本当に力技でゴリ押ししたんだよ!横着したの!


「そうなのね……分かったわ。教えて頂いてありがとうございます、セルフィ様!国の最新の情報を知っているだなんて、流石、我が国の王子様です!」

 マイヤ先生が拍手でセルフィを讃えると、他の生徒達も、揃って、セルフィに拍手を送り、教室内にはパチパチパチと割れんばかりの拍手が鳴り響いた。


 いや、全っっ然納得出来ない!何でセルフィが褒め称えられるの?!最初に言ったのは私なのに!いや……でも、もういいや。全然納得出来ないけど、この場は上手く収まりそうだし。

 そんな事はもはや問題じゃない!私の目下の問題は、成績!勉強!

 実戦形式の問題は、実戦経験が山ほどある私にも解けそうって思ったけど、現代版魔法の基礎が無理!せめて誰か教えてくれる人がいないと無理!


 キーンコーンカーンコーン。

 授業の終わりを告げる音が鳴る。本日の授業は全て終了。

 私は席を立つと、教科書を持ってマイヤ先生の元に駆け足で向かった。


「マイヤ先生!あの、分からない所があってーー」

「私は忙しいの。貴重な私の時間は、優秀な生徒の為に使う必要があるのよ。身の程を弁えなさい」

 取り付く間もなく拒否され、足早に教室から出て行くマイヤ先生の背中をただ見送る。


 駄目か…。はぁ。どうしようかな…。先生が当てにならないとなると、独学でやるしか無いのか?独学で、がむしゃらに生きた結果が、前世なんだけどな。


 恐慌な時代だった50年前は、学校なんて、殆どの子供達が通えなくて、魔物に怯え、幼いながら、戦う事を選ばざる得なかった。

 私達は、小さな頃から剣を持ち、魔法を体に覚えさせ、生き残る為に、必死で戦った。


「あーどーしよー。このままじゃ赤点だし、最悪、卒業出来ないかも……」

 特待生でいる条件が、魔法と関係無い普通の教科で良かったけど、卒業となると、授業の成績が必須。


 ホワイト企業に就職して、家族を養う為には、良い学校を卒業するしか無い!職歴大事だもんね!何とかしないといけない!それは分かってるんだけどーー!


 1人、頭を抱えて、教壇前でうじうじしていると、冷たい表情を浮かべたセルフィと、ニコニコ笑顔のアルがいつの間にか近くに来ていて、2人からの視線を感じた。


「アル、性悪王ーーセルフィ」

「今、性悪王子って言いかけたね」

「え、痛たたた!痛い!ごめん!許して!」

 セルフィに白い髪をグイッと引っ張られた。


 気付けば、私達以外の生徒はもう教室にはいない。

 普段なら何人かは残ったりしてるのに、今日は皆早く帰ったんだな。


「てか、馬鹿だね君は。問題文の指摘なんてしたら、マイヤ先生に目を付けられるって分からないの?ただでさえ嫌われてるのに」


 そう言えばこいつも、問題文が間違えてるって気付いてたはずなのに、何も訂正しなかったな。


 セルフィから解放された髪の毛に優しく触れつつ、頭皮を確認する。

 大丈夫かな?抜けてない?


「もう少しすれば国から正式に通達されるんだから、放っておけば良かったんだよ。国からなら、先生の面子も保たれて、波風立てなくて済んだのに」


 そんな事言われても、私は国からの通達なんて知らないし。セルフィは、私が盗み聞きしたから知ってるって思ってるんだろうけど。



 

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