表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/9

0点7

 


 まだ不愉快そうだったけど、ノートを取らない事には納得してくれたみたいで、マイヤ先生は魔法書片手に、授業を再開した。

 黒板には、ひとりでにチョークが、書き書きと、文字を書き進める。


 多分、魔道具の一種かな。勝手に、教科書の内容を黒板に記すようにインプットされているのだろう。マイヤ先生は、それに沿って、授業を進めていた。と。

 ほんと、説明してくれたら良いのに。


「ヒナキさん、これを答えてくれるかしら?」


 再度、またマイヤ先生に声をかけられる。

 その顔はニヤニヤしていて、また、私を馬鹿にする方法を思い付いたみたい。

 マイヤ先生の指す、これ。とは、炎の魔法を出す際の魔法陣についての問題ーー。私が魔法を使えない事を知ってて、わざと聞いてますよね?


「どうしたの?これはとても初歩的な問題よ?こんなものも答えられないのかしら?」


 きっと、私が答えられないって知ってて、馬鹿にする為に聞いてるんだよね?ーーー暇人か!こんな下らない真似するくらないなら、さっさと授業を進めればいいのに……。


「分かりません」

 早く授業を再開して欲しいし、素直に答える。


 現代版の魔法、良く分からん。何故なら、私は魔法を使う時に、そんな複雑で面倒な魔法陣なんて思い浮かべないから。感覚で使う。

 そもそもが、どんな魔法があるとか、こういった魔法を使われたら、この魔法を返す。とかの実践的な知識は山程あるけど、こんなチマチマした、因果関係やら消費量やら云々も知らん。


「あらあら。こんな事も分からないなんて、ヒナキさん、貴女、この学校に相応しく無いんじゃなくて?」


 それが言いたかっただけだろ、おまーーと、目上の人にお前は駄目か。



「ーーーマイヤ先生」

 どうでも良いから、早く授業進めてくれないかなーって思っていたら、後ろの席にいたセルフィが、不機嫌そうに口を開いた。


「こんな貧乏人放っておいて、早く授業を進めてくれませんか?」

「あっ。そ、そうですね!申し訳有りません、セルフィ様」


 トライナイトの教師も、王子様であるセルフィには弱いのか、マイヤ先生は謝罪すると、直ぐに授業を再開した。


 貧乏人って単語は気になるけど、訳分からんウザ絡みを止めてくれたのには感謝する。


「性悪王子、ありがとね」

 こそっと振り向き、小さな声でお礼を告げる。


「誰が性悪?言っとくけど、君の為じゃない」


 分かってます分かってます。私のせいで授業が中断されて、迷惑だっただけだよね。それでも、一応、人としてお礼は言っとかなきゃね。礼儀は大切に。助かったのは事実だし。


 王子様の一声は本当に偉大らしく、その後は特にウザ絡みされる事も泣く、授業は進む。

 相変わらず授業内容は殆ど分からないけど、昔の魔法とは、根本的に違ってるのは分かった。


(現魔法は、使いたい魔法の魔法陣を頭に思い描いて、呪文を唱える)

 

 これが1番違うポイント。

 私が死んで50年……50年でこんなに変わるもんなんだなーと、しみじみ思う。平和な世界の50年と、恐慌の世界の50年。まぁ、違うか。




 5時限目が終わり、今は6時限目。


「ーーと、大魔法使いサクラ様は、自分の命と引き換えに、魔王を封印したのですーー」

 6時限目の授業は、まさかの、(サクラ)の事。

 前世の私、サクラは、魔法史に載る程、有名で凄い大魔法使いとして名を残してるから、授業で習う題材になってる。


 自分で自分の事を学ぶ事になるなんて……何か変な感じ。


「サクラ様は、全ての属性の魔法を使う事が出来、攻撃魔法だけで無く、回復魔法も使え、ありとあらゆる魔法陣を覚えており、知性に満ち溢れ、慈愛に満ち溢れ、魔物と対峙する時ですら、いつも微笑みを絶やさなかったと言われています」


 覚えてねーし、誰だよそれ。

 何その人物像?誰?誰が私の事をそんな風に話したの?嘘も良い所だよ。てか、魔物退治してる時にいつも笑顔て、逆に怖くない?


 事実と違い過ぎる内容が史実に伝わっていて、身震いする。


「実はサクラ様は、我が王都ツヴァイの王子と恋仲であったとも言われていてーー」

「絶っっっ対に違います!!!」


 ガンッと、机を叩きながら、大きな声を出して否定する。


「……何してるの?早く座りなよ」

「……はい……」


 後ろの席のセルフィに言われ、静かに着席する。

 突然奇声を上げる変な女だと思われたに違いない。でも、我慢出来なかった。私は、前世も誰とも付き合った事無いの!全くのデタラメなの!


「さ。今日の授業はここまでよ。最後に、昨日した小テストの答案を返すわね」

 そう言って、答案用紙を返し始める。


 ああ。全く分からなくて、ほぼ白紙で出したやつね。

 昨日まで、教科書と黒板に書かれている内容が同じである事にも気付かなかった女だぞ。テストなんて解けるはずが無い。


 ピラリと、返ってきた答案用紙をめくると、案の定、赤い0の数字の下に、横棒が2つ。テストの点数は0点。

 分かってはいたけど、0点ってキツイな…。


 答案用紙の上から下を、眺めるように見る。

 多分、こういうのって、最初の方は簡単な問題で、最後になるほど、応用とか、高難易度の問題が出て来るものなんだろうけど……。

  一応、前世の記憶を取り戻して、ほんの少しは理解出来るようになった。ものの、やっぱり全く分からん。最初の方で挫折しそう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ