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マイヤ先生6

 


 トライナイトってこの国で1番有名な学校でしょ?その生徒が、初期の初期の魔法しか使えないもんなんだ。


 今ヒナキ達は16歳。

 大魔法使いだったサクラは、同じ16歳にして、魔王を封印し世界を救った。

 回復魔法でいうなら、瀕死状態の仲間を死の淵から救い出したり、魔物に襲われ傷付いた村人達複数人を、一気に癒した事もある。


 前世の自分と比べてしまうのもアレだけど……魔法の実力が低いね。まぁでも、まだ学校が始まったばかりだし、これからなのかな?

 ヒナキーー私も、全然使えなかったしね。

 平和な世界になったから、学校が始まって、本格的に授業で習っていく!って感じなのかな?前世は魔物が荒れまくってたから、実践で学んで行く!って感じだったもんね。


「肩を貸します。一緒に教室に行きましょう」

 治りきっていない私の足を心配して、そう声をかけてくれる。

  同じ魔法クラスのクラスメイトには全く期待しないって思ってたけど、アルの存在を忘れてた!アルは私にとって魔法クラスの唯一のオアシス!!


「本当にありがとう…!このご恩は必ず返すね!」

「あはは。気にしなくていーよ」


 なんて優しいんだろう…。

 セルフィとは大違い。奴もちょっとくらい、アルの優しさを見習ったらいいのに!

 


 *****


 5時限目ーーー。


 昼食はもう諦めて、急いで授業に間に合うように教室に戻ったら、ギリギリセーフ!

 アルに支えられて戻って来たんだけど、それを見た女子生徒の何人かが、凄い顔で私を睨んで来たんだよねー。

 分かるよ。アルは可愛い顔してて、皆に優しいし、モテるよねー。そんなアルが、私みたいな貧乏人と寄り添って教室に戻って来たら、ムカつくよねー。

 落とし穴に落として困らせてた奴が、平気な顔して戻って来たらムカつくよねー。

 実際は、まだ痛いし、お昼ご飯抜きになったからお腹凄い空いてるし、踏んだり蹴ったりなんだけどね!ムカつくから絶対に弱みは見せてあげないけど!


「ーーであるからして、魔法はーー」

 女の先生が、教科書を片手に、魔法について生徒達に熱心にお話してる。

 炎の魔法の発生源と、因果関係と、発令の為の魔法陣と、それに伴う魔力の消費云々ーーー


(駄目だ。全く分からん)


 前世の記憶を取り戻し、魔法の知識があるから、大丈夫だと思ってたのに、今世の魔法、全く分からん。え、何?発生源?因果関係?魔法陣?何それ?そんな事いちいち考えながら魔法使ってるの?難しく無い?


 授業に全くついていけず、かといってノートを取る気もせず、私は教科書片手に、先生の話を???を浮かべながら聞き入った。


「ちょっと、ヒナキさん」

「?はい」


 肩までの黒髪を、オールバックで1つにまとめ、真っ赤な口紅、赤い眼鏡をかけたグラマラスな体をしたこの女の人は、魔法クラスの教師の1人で、《マイヤ》先生。

 ギロっと、かけている眼鏡を正しながら睨み付けてくるマイヤ先生に、私は声をかけられた。


「貴女、ちゃんとノートをとっているの?」

「とっていませんね」


 炎の魔法についての勉強をしているのはかろうじて分かるんだけど、発生源やら因果関係やらが、魔法使いに必要なのかが謎。

 正直、理解不能。

 だけど、黒板に書いてる内容が、教科書に載ってるのと全く内容だって言うのは、分かる。


「貴女ね……ただでさえ出来損ないなのですから、ノートくらいきちんと書いたらどうなの?」


 そう言えば、前までは私、ノートきちんととってましたね。魔法の基礎知識0の私は、黒板に書かれた内容が、教科書と全く同じ内容だとも分からず、何とか学ぼうとして。でも、今は黒板に書いてる内容が教科書と同じって事は理解出来るしーーー必要?見返したければ、教師書を見れば良いだけだし、書き足したければ、教科書に書けば良いし。

 ノートを書くのに集中するより、先生の授業内容を聞く方が優先じゃない?

 現に、私以外の他の生徒達だって、誰もノートはとっていない。


「大丈夫です。必要無いので」

「何を言ってるの?!貴女、このクラスで1番の劣等生な自覚あるの?!」


 断ったら、凄い剣幕で怒られてしまった…。

 他のクラスメイト達は、そんな私を見て馬鹿にするようにクスクス笑ってますね。


「すみません。でも、教科書と同じ内容を、わざわざノートに取る意味を見い出せないので。今度からは教科書で確認するから、大丈夫です」


 入学してから1ヶ月。

 座学の授業で得られたものは、今の所何一つ無い。魔法に関する基本的な知識が無いから、授業を受けてもさっぱりだったし、マイヤ先生は、分からないからと質問に行っても、何も教えてくれなかった。

 記憶を思い出して初めて授業を受けたけど、そもそもが、基礎的な魔法が分からないヒナキに、ただ教科書通りの文字をノートに書け。なんて…。


「あら、黒板に書いてるのが教科書と同じ内容だと気付いたのね」

「ふふ。やっと理解されましたのね」

「1人で頑張ってノート書いてて、マジ面白かったよな」

 マイヤ先生は面白く無さそうに言い、その言葉に同調するようなクラスメイトの野次が聞こえた。


 ほんと、皆、性格悪いなー。


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