第98話 レナとリコンの試合に決着がつく
ローガーは、レナとリコンの戦いを観戦している。
二人の打ち合いは続いていた。ただ、少しずつ、リコンは疲れ始め、動きが悪くなってきた気がする。レナは最小限の動きでリコンの攻撃を捌き、リコンの隙ができるのを待っている様だ。リコンの不用意な薙ぎ払いの攻撃に合わせ、レナが盾を前に出し、リコンに突っ込んできた。リコンは、その盾攻撃に対応できず、吹っ飛ばされた。さらにレナが追い打ちをかける為、追っていく。リコンは一瞬、意識が飛んでいた様だ。少し反応が遅れ、立ち上がろうとするが、リコンの喉元にはレナの剣があった。
勝負ありだ。
観客から、歓声が上がる。見ている大半は、リコンの強さを知っていて、レナの事は何も知らなかった。「まさか勝つとは」という感想の様だ。
本来、リコンは魔法を使う事に長けている様で、身体魔法のみなら、レナの方が上だ。攻撃魔法等、全ての魔法がありなら、リコンが優勢になるんじゃないかなと思う。
実力が拮抗した、戦いだった。
レナはリコンに手を差し出し、リコンはその手を握って立ち上がる。ただ、両者の表情は、違う。レナは、勝ててホッとした様な表情に対して、リコンは悔しそうな表情だった。
今日の試合はこれだけではない。少し間を置いて、コンラートとピケの試合が始まる。
レナとリコンが自分の元にやってきた。二人を労う。
「リコン、残念だったな。でも、魔法の制限がなかったら、レナでも勝つのは難しかったと思うぞ。」
「すみません・・・ローガー様にいい所は見せられませんでした。・・・ごめんなさい。」
リコンの頭に手を乗せた。
「次、頑張ればいい。」
「はい。」
次はレナに声をかける。レナは、頭を撫でられているリコンを見て、ショックな様子だった。
「レナ、よくやった。誇らしく思う。」
「はっ。」
「ちょっと手を出してくれないか。」
「はい。」
レナの手の上に袋を置く。
「お金ではさそうですね。」
「開けてみてくれ。」
レナは、そう言って袋を開けると、嬉しそうな顔をした。
「ローガー様!」
「うん。そのブローチ、ようやく出来たんだ。君には、肩身の狭い思いをさせたからね。勲章じゃないけど、その代わりって事で。」
「あ・・・ありがとうございます。」
レナは、涙をぬぐいながら、宝石が象られたブローチを眺めていた。
「レナ、次の試合も頑張って。」
レナの頭に手を伸ばすと、嬉しそうに頭を下げた。
コンラートとピケの試合が終わると、次はレナがピケと戦い、リコンはコンラートと戦う。今日は、まだまだ試合が続く。




