試合を観戦する日本人
レナとリコンの試合を佐久間一翔と鈴木寛一が見ていた。
「寛一さん、あの子、動きいいですね。」
「リコンの攻撃をあれだけ受け流せるのは、技術もあるんだろうな。」
「盾って、なーんか、上手い事使えなくて。腕につけたら邪魔になるし。」
「そりゃそうだろ。日本で盾なんて使った事あったか。」
「いえ・・・」
「だろ?あの子なんて、多分小さい頃から、あのスタイルでやってんだろうな。」
「あー。」
寛一は、集中して試合を見ている一翔を横目で見た。
こいつとは、もう10年以上この世界におり、戦いに明け暮れた日々を送っていた。日本で自衛隊をしていたという肩書は伊達ではなく、サバイバルに長けていて、頼りになる奴だ。俺は、実家が刀鍛冶をしており、後を継ぐため、修行をしていたが、ある日、遊びに行った町ごと、この世界に飛ばされた。その時、たまたま逃げた先が同じだった一翔と逃げまくって、他種族連合軍に保護されて、今に至る。良くここまで生き延びたと思う。
「寛一君、動きが早すぎて、良く分からんが、どっちが優勢なんだ?」
最近、この世界に来た、佐藤巌さんが、聞いて来た。
「喜平さん、今はまだ膠着してますけど、少しずつ差が出てきますよ。」
この人は、同じ村の人から喜平という屋号で呼ばれており、自分達にもその様に呼んでくれと自己紹介の時に言われた。最近来た日本人の人達は、戦いに向かないが、農業のエキスパートであり、そちらに尽力してくれている。自分達の軍勢は、内政に向いている人材が少なく、有難い話しだ。しかも、喜平さんは、実家の農業は兼業で、本業は酒蔵の杜氏をしていたという。この世界でも上手い酒を造りたいと日夜、研究をしていた。ここには、報告がてら来た様で、少し前まで、活動家軍の秘密の農地に居たとの事。そこでは、日本の作物を育てており、その農地が頑張ってくれているおかげで、馴染みの米や野菜が食えている。
「それにしても、信じられん動きをしているなぁ。」
「ええ、魔法があるとないとでは、動きも力強さも全然、違いますから。」
自分も一翔も手術を受けてから各段に能力は向上した。しかも、元々、魔力を持たない日本人は、何故か、他が中々真似できない、特殊な魔法の使い手が多い。自分の魔法は刀の具現化。様は、自分専用の刀を魔力で作る事が出来る。趣味で居合もやっていたので、自分に合っていると思った。それに研ぐ手間もかからないのが、なお良い。一翔はさらに特殊で自分のコピーを数体作れるという魔法だった。コピーの自分をおとりに出来るなど、色々と使い勝手が良いと言っていた。
喜平さんと話しをしていると、一翔が「差が付き始めたな」とつぶやいた。
試合に目を戻すと、確かに差が出始めている様だった。




